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『悪役令嬢になりたいのに、全部善行扱いされてしまうんですが!?』  作者: ゆう
《悪役令嬢ムーブ、全敗》 ――すべてが善行に変換される地獄の学園生活

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第1章 第9話――怒鳴り込みに行っただけなのに、悩み相談会の主催者にされましたわ!?

第9話では、主人公が“陰口を聞いて怒鳴り込みに行く”という

悪役令嬢らしいチャンスを完全に潰し、

まさかの 悩み相談会化 という地獄展開になりました。


・怒鳴り込み → 優しさ扱い

・名言ぽい言葉 → 深すぎると感動

・令嬢達が号泣して尊敬

・殿下の好感度爆増


と、ここまで悪役になれない主人公はもはや伝説。

第1章 第9話――怒鳴り込みに行っただけなのに、悩み相談会の主催者にされましたわ!?


 ミリアとの距離がさらに縮まり、

 アレクシス殿下にも妙に尊敬され、

 舞踏会では外交官からスカウトされ……


(ちょっと最近……私、悪役令嬢としてまったく機能してませんわよね!?)


 私は焦っていた。

 悪役令嬢どころか、

 なんか“人格者”みたいな扱いを受けている。


(こうなったら……多少強めのムーブで“嫌われポイント”を稼ぎませんと!)


 そんなことを考えながら廊下を歩いていた時――

 聞こえてきたのは、数人の令嬢の声。


「ねぇ……聞いた?」

「ローゼンクロイツ様って、なんか完璧すぎて怖いわよね……」

「表情も冷たいし……本当に良い人なの?」

「私、あの人ちょっと苦手……」


(……ん?)


 陰口だ。


(よ、よし……! 来ましたわ!!

 悪役令嬢が怒鳴り込む、定番イベント!!)


 私は大きく息を吸い込み、

 ヒールを鳴らして堂々と部屋の扉を開けた。


バンッ!!!


 中にいた数名の令嬢が驚いて振り返る。


「ちょ、ちょっと!? エリザベート様!?」


 私はドレスを翻し、

 冷たい瞳で彼女達を射抜くように睨んだ。


(さあ……悪役令嬢の真骨頂!

 ここで怒鳴りつけて悪評を広げるのよ!!)


「あなた達――」


 圧を込めて言い放つ。


「さっきの話……聞こえておりますわよ?」


 令嬢たちが青ざめて震える。


(よし……このまま説教して、悪女ポイント獲得……!)


「冷たいとか、怖いとか……」


 私は、さらに身を乗り出して――


「――そんなに悩んでいるなら、正直に相談なさいな」


「……え?」


(え???)


 言った瞬間、自分で自分に驚いた。

 なぜか“説教”のはずが“相談に乗る”方向に舵切っていた。


(ちょっと待って!? 私の口、なんで今そう動いたの!?)


 しかし、令嬢たちはぽかんとした後――


「エリザベート様……!」

「わ、私たちの悩みに気づいてくださったんですの……?」

「いつも強く見えて、本当は優しい方……!」


(そんな解釈しないで!? 今のはただの“怒鳴り込みミス”ですわよ!?)


 さらに、全員が一斉に座り直し、

 私のほうへ向き直った。


「実は……最近自信がなくて……」

「私、礼法の練習で失敗ばかりで……」

「周囲から浮いてしまって……」


 次々と悩みを吐露し始める令嬢達。


(なんで!? なんで“悩み相談会”が始まっているの!?

 怒鳴り込みイベントだったでしょう!?)


「エリザベート様……どうすれば、もっと強くなれますか……?」


(いやいやいや! 私に聞かないで!?

 私こそ弱ってる側なんですけど!?)


 混乱しつつも、私は気取った顔を崩せない。


(お、落ち着きなさいエリザベート。

 悪役令嬢は常に冷静……!)


「そ、そうですわね……」

 私は深呼吸してから言った。


「強さというのは――

 自分が何を選ぶか、何を守るかで決まりますわ」


(え!? なんか今めちゃくちゃ名言言ってません!?

 違う違う! 私そんなこと考えてませんわよ!?)


「エリザベート様……!」

「素敵……!」

「強さとは選択……深い……!」


(深くない! 深くないですわよ!!)


 そこに追い討ちのように扉が開いた。


「エリザベート様、ここにいると聞いて――」


 クラリスとアイリーンが入ってきて、状況を見て固まった。


「……あの、これは?」


令嬢A「エリザベート様が私達の悩みを聞いてくださっているのです!」

令嬢B「おかげで気持ちが軽くなりました!」

令嬢C「まるで聖女のような包容力……!」


(聖女は無理がありすぎますわよーーーー!!!)


 さらに最悪の存在が顔を出す。


「エリザベート?」


(殿下あああああ!!)


 アレクシス殿下が部屋を見渡し、小さく息をついた。


「また皆の相談に乗っていたのか……。

 本当に……素晴らしい女性だ」


違いますのよ

違いますのよ殿下

違いますのよォォォォ!!!


 しかし殿下は感動したように微笑んだ。


「エリザベート。

 また君の“強さ”に学ばせてもらった」


(なんで!? 怒鳴り込みが相談会になるとか……意味が分かりませんわ!!)


 その日の学園の掲示板には、こう書かれていた。


「昼下がりの相談会:エリザベート様による“心の導き”」


(勝手にイベント化しないで!!

 私は怒鳴り込みに行っただけなんですのに!!)


 私はついに頭を抱えた。


(悪役令嬢になる道……もう見えませんわ……!!)


お読みいただきありがとうございました!


第9話は、

「悪役ムーブが全部善行になる」が

ついに “相談会イベント化” という段階にまで達しました。


次回は 第10話:自作自演のいじめ現場 → 全部バレる&殿下が全力で擁護

という、物語が一気に第2章に繋がる重要イベントです。

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