VSジャイアントラット
遂に始まったアル達のジャイアントラット戦。
その立ち上がりは――速かった。
三人、一直線に飛び出しラットに仕掛ける。リアが弓を撃ち真ん中のラットの動きを止めるとアルとカイルが残りの二体をすぐさま受け止め仕留める。リアも初日の経験が生き、矢が刺さって動きを止めたラットにすぐに第二の矢を放つ。
開幕速攻、まずは予定通り、と三人は視線を合わせて頷くとまずカイルがジャイアントラットの正面に位置取り攻撃を誘う。
「おらおら、こっちだ‥‥ぞッ!」
盾を剣の柄で打ち付ける。注意を引いたジャイアントラットの攻撃を素早く交わす。
アル達はそのカイルとジャイアントラットを回り込むように走っていた。そして完全に後ろに回り込むとリアに周囲のラットへの警戒を頼み。カイルに夢中になってチロチロと揺れているその尻尾に槍と突き刺した。その瞬間――
「ギギィァー!!?」
効いている。心の中で湧き上がる喜びを抑えつけ暴れる尻尾へさらに攻撃を加えていく。
アルとカイルに前後からチクチクと攻撃されどっちすかずでその場でじたばた暴れるジャイアントラット。
「アル!カイル!ラットがきたわ!」
「俺が引きつける、カイルはリアを!」
アルはそう叫ぶとジャイアントラットの暴れる尻尾へ槍を突き刺す、堪らず奇声を上げ、ギロリと振り返りアルを睨め付ける。それを確認したカイルは弓を撃ちながら逃げるリアの援護に回る。
リアの前に割って入りラットを受け止める、カイル。
その後ろから――ヒュガガッ―正確なエイムで確実にラットを撃ち抜いていくリア。
粗方のラットを倒し、弓が刺さって弱っているラットを処理しようとしたその時――
――ドガァァン――
あまりの音に振り返ると、壁にぶつかり倒れるアルとそこに迫るジャイアントラット。2人の血の気が引く。
「アルッ!いやぁぁ‥‥やめてぇぇッ」
「オイッ!待てよリアッ!?‥‥‥クソガァ!!」
矢をめちゃくちゃに打ちながら走っていくリアに舌打ちをしカイルは直ぐに残りのラットを処理して後を追う。
虚な目をしたアルを抱えて泣きべそをかくリア。何とか追いついたカイルは二人を狙うジャイアントラットの腕を受け止める――だが弱点の尻尾を散々攻撃され怒り狂ったジャイアントラットの一撃は重く、
さらに――「クソッ‥‥こんのッ!――ッざけんじゃねぇぞ!?」畳みかけるように激しく左右の腕を振る。
「リアッ!泣いてる場合じゃねぇぞ!?早くアルを叩き起こせ!聞いてんのか!?」
返事を返さずただアルを抱えて泣きじゃくるリア。
重なる負の連続に焦り苛立つ。倒れたまま動かないアル。リタイアになってないのなら死ぬまでの怪我は負ってねぇはずだ。ならなぜ起き上がってこねぇ!?リアもリアであーなったら使い物になんねぇ。なぜだ!何でこうなる!?俺達はこんなとこで終わっていい訳ねぇだろうが!奴隷から成り上がって見下してきた奴らを這いつくばらせて、美味い飯を食って、それから‥
それから‥‥‥
なぁ。アル、リアはちょっと甘ちゃんだが、お前は俺と同じだろ?時々見せるあの目、最底辺を知っても尚諦めてない奴の目、誰にも譲れない物を持つ目。必ず立ち上がるはずだ。だから待ってやる。貸ひとつだ。
さっさと起きろ!!
―――ガンッ‥ガンッ‥‥ギギィッ!――ッ!ぐぅ!?‥なんっ!?――アル!アルッ‥‥起きてよぉ‥――
声が聞こえる。カイルの苦しそうな声。
リアの泣きながら自分を呼ぶ声。
ギィギィと鳴くジャイアントラットの声。
ジャイアントラット。そうだ。俺は突然、鞭のようにしならせた尻尾で‥‥。
漸くハッキリとしてきた目で周りを見回す。泣き喚くリアの頭にそっと手を乗せ――大丈夫だ。と声をかけ。立ち上がり――目の前のボロボロの男を見る。
―――随分とお寝坊さんじゃねぇか?アルさんよぉ!
目は覚めたのかぁえぇ!?
――あぁ、すまなかった。
そう言ってカイルに並ぶアル。
「貸ひとつだ。」 「あぁ、分かってる。」
二人はお互いボロボロになった身体を引きずりジャイアントラットへ向かい――一歩を踏み出した。
反撃が始まる。




