クレアとカトレア
十一階層の探索を始めて三日目、遂に十二階への入り口に辿り着いたアル達は、十二階層の転移結晶を付けてギルドに戻って来た。
いつもの様にメンバーに報酬を分配してから、アルはメンバー達に休暇を伝えた。
十一階層を潜る前、本格的なパーティーでの活動が始まるため予定をあらかじめ伝えておいたのだ。
十一階層を突破するか、五日経つかで一度休暇を入れる事になっていた。今回の休暇は二日間を予定している。本格的にパーティーを結成してから初の休暇という事でそれぞれ何かとあるだろうと思い連休中にした。
メンバーに休暇を伝えたアル、それとジンは直ぐに帰って行った。カトレアもそれにならい帰ろうとするがクレアに呼び止められる。
「あ、あの!よ、良ければ休暇のどちらかで、お出かけしませんかっ!」
顔を真っ赤にして、ぷるぷる震えながらカトレアを見つめるクレア。その様子に幼い子供や小動物の様な何かを感じ、思わず吹き出してしまう。
「えぇ、いいわよ?じゃあ、明日は自分の予定を消化して、その次の日にしましょう?」
「は、はい!よろしくお願いしましゅ!っ!?」
相変わらず意気込んだり、緊張すると噛んでしまうクレア。微笑ましいものを見た様子で挨拶をしてカトレアはギルドを後にした。
それから、自分達の予定を片付け、二人で出かける日がやって来た。
カトレアが待ち合わせをしている場所に着くと、すでにクレアが待っており、パタパタと走って近づいてくる。
「今日はよろしくお願いします!」
元気に挨拶をする彼女は普段の装いとは違いふわりとした黄色のワンピース姿だ。
「ふふっ、よろしくねクレア。噛まずに挨拶できて偉いじゃない!服もとても似合ってて可愛いわ!」
「カトレアさんもとても素敵です!」
褒められて嬉しくなったクレアは私もと感想を!と、カトレアの服装をみる。元貴族令嬢という事でどんな服なのかな?と想像していたのだ。
ドレスでも着てるのかなと思っていたクレアはカトレアの服を見て驚いたがそれでも着こなしは完璧でさすがと言わざるを得ない。自然と素敵という言葉もれていた。
本日のカトレアは、パンツスタイルだった。シンプルな黒のパンツに白いシャツ。だが着る物が着ればかっこいい女性と言った感じに着こなしている。
奴隷になった際に貴族らしいものは失ったしまったし、今のメンバーとの探索生活を気に入っているカトレアは、もう貴族らしさにはさほどこだわりはなかった。
お互いを褒め合い、カトレアは今日の予定をクレアに尋ねる。
しかし、クレアはそんなことは何も考えていなかった。新しくできた仲間、いままでのパーティーでは色々あって馴染めなかったが、今のパーティーはとても好きになったクレア。そんなメンバーで唯一女性のカトレアともっと仲良くなりたいと誘った為、何をするかなど考えていない。
―――えっと、実は何も考えなくて…
もじもじするクレアを見て、
―――それじゃおしゃれなカフェにでも行ってお話ししましょ?
と声をかける。ぶんぶんの頭を振ってうなずくクレアを連れ、大通りを歩き見つけた店に入る。
それから二人は今のパーティーについて語り合った。
二人の共通点はまだ、同じパーティーに所属していることぐらい、お互いのことをまだあまり知らないので自然と話はそちらに向いていく。
それから、お互い今のパーティーが気に入っていること、どうしても入ったのか、などお互いのいきさつなんかも話していく。互いに辛い経験をして来たこともあり、話は内容に似合わずはずんだ。
すっかり意気投合した二人は、服屋で、洋服を見たり、雑貨によったりしながら、普通の女の子の様に楽しく休日を過ごした。
その日の別れ際カトレアは、ふと立ち止まりクレアに言った。
「私ね、今のパーティーを凄く気に入っているの。貴族として両親と過ごした時間も好きだったけど、今が凄く充実してる。その中にはクレアのことも入ってるのよ?だからこれからも、よろしくね?」
そんなカトレアの言葉を聞いてクレアは思わず泣き出してしまった。
「はい゛、わだしもここに入って、まいにぢがとてもたのしぐで、だから、だから。これからもよろしくお願いじまずぅ!」
泣きだしてしまったクレアをカトレアはよしよしと撫でた。




