超える者
アル達は慎重にコボルトキングと立ち回っていた。手下のコボルトジェネラルを早々に倒しほぼ理想の形に持ち込んではいたがそこからの突破口を見出せないでいた。
勿論手札はある。この日の為にカトレアと作戦を立てスキルも増やして準備を整えて来た。
だがその切り時のタイミングが見つからない。以前自分が崩れたことでパーティーメンバーを危険晒してしまったアル。それに今回はあの時と違い死ねば終わり。絡みつくプレッシャーに嫌な汗が染み出る。
―――ここで攻めて勝ちきれなかったら。
後衛のカトレアにはアルの《加速》の様なスキルは無い、狙われてしまえば‥‥どうする!?
攻めあぐねているアルを見ていたカトレア。カトレアは、アルがこのコボルトキングと戦う為に用意して来たスキルを使わないことが気になっていた。
《浸透打》相手の外装に関係なく内側に衝撃を伝えてダメージを与えるスキル。鎧を装備しているという情報を確認し、カトレアの《ボルケーノ》以外の今回の切り札としていたモノ。
予定ではアルが《浸透打》を打ち込むか、カトレアが《ボルケーノ》を打つかで流れを変えて攻め切る予定であった。しかし、アルは浸透打を使わない。使えるタイミングは何回かあったはず。そしてアルがキングから距離を取らない事で《ボルケーノ》も使えない。
―――何かを気にしている?
だが理由がわからない。確かにコボルトキングの振り回す大剣は危険だ。でもアルの性格なら、隙を見つけたら攻めに転じるはず。カトレアは、絶望的な状況から自分を救ってくれたアルのことを心から信頼していた。彼と一緒ならどこまでも行ける。不安は何も無い。今の自分達なら間違いなくヤレる。
彼が、アルが悩んでいる事は分からないがでも、アルが困っているなら、この状況を変える助けを望んでいるなら‥‥
自分にやれる事は―――、一つだけ。
「アル!!」
カトレアは、アルがコボルトキングの攻撃を大きく避けたタイミングで叫んだ。
すかさずファイアウォールを展開。アルとキングの間に壁が出来る。
―――離れてっ!
行くわよ!ボルケーノっ‥‥ボルケーノ!ボルケーノ!ボルケーノっ!!! ―――
グルルルルゥゥ!!?
凄まじい業火に焼かれるコボルトキング。唖然としたアルはカトレアの方を見るが、
「貴方を信じてるわ…後はお願い。」
―――ドサッ。
マナの枯渇だろうか。膝をすとんと落としたカトレア満足そうにアルを見てそう言った。
その時アルの中を猛烈な感情が駆け巡る。あの時と同じ。仲間が自分のために命を賭けている。それも今回は致死のダメージは無効化できないのに。動けなくなった自分が狙われればどうなるか分かっている筈だ。
依然カトレアは言っていた。やっと自分を見てくれる仲間ができた。信頼出来る仲間ができたと。
死んだら終わり、女である身なのに。男で先に探索者になった癖に怯えて手を出す事が出来なかった自分なんかを信じて‥
俺は忘れたていたのか!?カイルに守られた事を。自分を心配して泣きべそをかくリアの事を。
スキルを得て肉体も成長して、けれど肝心なモノは何も変わっていない!
仲間に馬鹿にされ、父親に売られたカトレアが自分を信じてついて来てくれているのにこのざまだ。
腑抜けるのも大概にしろ!俺は何の為に塔を登ってる!
「ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!《ストライク》!《浸透打》アアッ!」
ボルケーノの嵐をくらって溶けた鎧を纏って立ち尽くすコボルトキングに、ストライクで威力を上げた浸透打を打ち込むアル。コボルトキングの様子などお構いなしに続け様に浸透打の連撃を叩き込んでいく。
やがてビクビクンッと身体を震わせて膝を折るコボルトキング。
その様子を見てアルはカトレアを振り返る。
「信じていたわ、アル。やっぱり貴方は私の最高のパートナーよ‥‥やっちゃいなさい!」
―――任せてくれ
アルは勢いよく膝をついたコボルトキングの首に向け剣を振りかぶり、《デュアルッ
打ち下ろし半ばまで断ち切る。そして返す刃で―――
ファングッ!》完全な首を落とした。
コボルトキングを倒し燃え尽きた様に立つアル。そんな彼を見て‥‥
やっぱり、貴方は私のヒーローだわ。
カトレアは優しく微笑んだ。




