ヴォルフ・ガング
アル達はジャイアントラットに挑む為五階層に来ていた。今は五階層の小部屋の前で最後の確認を行なっていた。
「作戦は今伝えた通りで行く。不測の事態が起きたら無理をせずに直ぐに撤退をする。いいか?」
「ええ、問題ないわ!任せて頂戴!」
――よし、いくぞ。
確認を終えたアル達はジャイアントラットのいる大部屋の中に入っていく。
「後ろは任せる。《加速》ッ!」
勢いよく飛び出したアルはスキルを使い、すぐさまラット達に追いつくと切り捨てていく。
その後ろで、カトレアは魔法のタイミングを見計う。
アルが取り巻きのラット達を切り伏せたのを確認して、カトレアは思いっきり魔法を放つ。
「アル!行くわよ!《ボルケーノ》!!」
―――ゴォォォ――
唸りを上げるカトレアの魔法が一直線にジャイアントラットへ向かい着弾する。かなり大きな悲鳴を上げて仰反るジャイアントラット。その後ろに回り込んだアルは弱点の尻尾に向けスキルを使う。
「《デュアルファング》ッ!‥‥もう‥一回!《デュアルファング》!!」
――ギィギィィィッ!?
同じところに続け様に放たれたアルのスキルによってジャイアントラットの尻尾が切り落とされる。ジタバタと悲鳴を上げて転げ回るジャイアントラットから一旦離れるアル。そこは取り巻きのラット達が現れる。
――‥‥《ファイアアロー》!《ファイアアロー》!
すかさずカトレアの魔法が飛ぶ。現れたラットは直ぐにカトレアの魔法を受けて消えていく。
漸く起き上がったジャイアントラットは、前回同様怒りで手足を振り回すが‥‥
「《加速》ッ!」――今のアルを捉えることはできなかった。
そして――
「これで終わりですわ!《ボルケーノ》ッ!!」
カトレアの魔法が炸裂。ジャイアントラットは光になって消えた。
「やりましたわ!私がジャイアントラットを倒せるなんて!」
喜ぶカトレア。それも当然だろう。キャンプで倒せなかったジャイアントラットをあっさり倒してしまったのだから。アルもまた今回の結果にはかなり満足していた。カトレアの魔法が強力なのは、分かっていたがここまでとは。そして新しいスキルも上手く使うことができた。この調子ならこの先も塔を進んでいけるだろう。
二人はドロップ品を回収してギルドへ戻った。
ギルドに戻りジャイアントラットの素材を売ることを受付に伝える。前回は初のジャイアントラットの素材ということでルシアンに献上したが、今回はギルドに卸して構わないとのことだった。
ルシアンも前回は、キャンプでジャイアントラットを倒した奴隷の主人ということ、その証拠。つまり周りの貴族たちへの見栄と、これまでアルに使った費用の回収と言う名目もあったが、これからジャイアントラットなど、当たり前に倒せるなら毎回大量の素材を自分で預かる必要もない。
なので今回二人で倒すことが出来たならそれは、売ってしまって構わないとのことだ。もちろん換金したお金はルシアンに渡すのだが、そのあとでアル達にある程度分配されることになるだろう。
それからアル達は、今回手に入れたスキルオーブの鑑定を行なった。鑑定料はジャイアントラットの素材を売った分から差し引いてもらう。
今回手に入れたオーブは《索敵》《投擲》だった。スキルの中身を確信したアルは受付へ向かう。
カトレアとのパーティー申請を行う為だ。
これからはソロで無く、カトレアと塔へ潜ることになる。どのみち組むつもりではあったが塔で訓練などをしていた為タイミングを逃していた。
「パーティー名は何になさいますか?」
受付にそう聞かれてアルは考えていた名前を書いた。
それは、天まで喰らう孤高の狼。そして、その飢えた狼達の歩く道がこのパーティーの軌跡である。
――ヴォルフ・ガング。




