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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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1-4.メロスがいた星とは

翌日から、メロスのリレーの練習が始まった。


登校時間より30分ほど早く学校へ来て、グラウンドの端で練習する。


「重力が重いっていうなら、筋トレとかも効果あると思うよ」


学も参加してくれている。リュウは部活の朝練があるから今はいない。


「そうだな。腹筋と背筋と、あと足を鍛えるといいかもな」

「はい!」


練習していると、グラウンドの中央で朝練をやっているサッカー部の面々が見えた。リュウがゴールを決めるところが目に入る。


「リュウ君、かっこいいですね⋯」


メロスが目をキラキラさせていた。


「リュウは高校、サッカーの推薦入学狙ってるから、今すごく頑張ってるんだよ」

「そうなんですね」


リュウの姿に鼓舞されたのか、メロスも頑張って練習していた。



   ✦✦✦


昼休み、給食を食べながら、朝の状況を共有する。


「ああ、いいんじゃん? ごめんな、俺参加出来なくて」

「部活あるんだろ。いいよ全然」

「リュウ君、すごくかっこよかったです!」

「だろー?」


リュウは手放しで持て囃されて、満更でもなさそうだ。


「メロスも頑張ってたもんな」

「僕もちょっとでも速くなりたいです」

「メロスがいたところは体育祭とかないの? っていうか、そもそもメロスの星ってどんなとこ?」


俺は星なんて太陽系の星しか知らないけど、こんな、自分たちと見た目ほとんど変わらない宇宙人がいるなんて、あり得ないと思っていた。


「どんな星、そうですね⋯。なんというか、ファンタジーものの漫画とかでありそうな、雲の上の世界みたいな感じでしょうか」


実際の雲の中は濃い霧のような状態なので、あくまでイメージの、ということらしい。


「雲の上? 地面がふわふわしてんの?」

「そうです。トランポリンみたいな、ふわふわした弾力性のある地面がずっと続いているところが多いです」

「じゃあ、走るの苦手って言ってたのも、そもそも今まであんまり走ることがなかったとか?」

「そうなんです。家の中では走らないですし、外だとぴょんぴょん跳んで行く方が速いので」


みんなトランポリンみたいな地面を、ぴょんぴょん跳んで進んでいくのか。想像すると面白い光景だな。


「体育とかはあったので、走ったことが全くないわけではないんですけど」

「へえ〜」


初日から色々情報過多だったので、まだメロスのいた星のことや、どうして地球に来たのかなどは聞けていなかった。いい機会なので訊いてみることにする。


「にしても、なんで地球に来たんだ? 留学みたいな感じ?」

「いえ、その、ちょっと緊急事態が起きてしまって」

「緊急事態?」

「僕がいたセリヌヴァカラ星が、ブラックホールに呑み込まれそうになって、避難指示が出たんです」

「――は?」


ブラックホール?


なんか突然スケールがデカすぎる話が出てきてついていけない。けど、それってかなりヤバいことなのでは?


学年首席ならついていけてるのだろうかとチラッと学を見ると、ぽかんと口を開けてフリーズしていた。


「え、そ、それは⋯、大丈夫?」


大丈夫じゃないだろ絶対!


「大丈夫です」

「大丈夫なの!?」

「はい。僕は避難しようとして、じいやと2人で自家用宇宙船でセリヌヴァカラ星を出たんですけど、何日かしてから、ブラックホールからは回避出来たと連絡が来ました」

「そうなんだ⋯。良かったね」

「はい。両親は残っていたので心配していたんですけど、無事なのでもう安心です」


相変わらず突っ込みたいところがいっぱいあるけど、とりあえずみんな無事なようで良かった。


「前も言ってたけど、じゃあその、じいやって人と2人で地球に来たの?」

「はい。じいやは僕の家の執事です」

「執事? メロスは金持ちのボンボンなのか?」

「うーんと、家に帰ればそうかもですけど、今はこれでも避難民なので。星を出た時はとにかく逃げるのに必死で、身の回りのものはほとんど置いてきてしまいましたし」

「そうか⋯」


ブラックホールが迫ってきてるなんて、ちょっとヤバすぎて想像出来ないけど、必死で逃げてきたんだもんな。


「けどその、良かったの? 自分たちだけ逃げるって、ちょっと気が引けない?」


学は、慎重に言葉を選ぶようにしながら問う。まあ確かに、例えば日本が沈没すると言われて、自分だけ海外に逃げるようなものなので、気が引けるというのもわからなくはない。


「そうですね。でも、逃げられる人は逃げろって感じでしたし、実際、僕の周りの自家用宇宙船持ってる人たちは、みんな外に避難してました」

「そんなみんな宇宙船持ってるの!?」


自家用車並みに普及してるんだろうか。


「そこまでじゃないですよ。多分、1割くらいだと思います」


それでもだいぶ多い⋯。


「そうだったんだ。ごめんね、大変だったのに、変なこと聞いて」

「全然ですよ。学くんは優しい人ですね」


学は軽く肩を竦める。


メロスの話を整理すると、こうだった。


ブラックホールが近づいているとのことで、避難指示が出たセリヌヴァカラ星。メロスは執事のじいやと2人で自家用宇宙船に乗り脱出。両親は役人らしく、それこそ住民の避難とか、そういった対応をするため残った。


何日かして、無事にブラックホールの危険からは回避出来たと連絡がある。しかし、すでにワープポイントを通った後だったため、帰ることが出来ず、じいやさんの知り合いがいるという日本に来て、救助を待つことにした、らしい。


「知り合いがいんの!? 日本に!?」


そろそろ驚くことも尽きたかと思ったが、まだネタがあったらしい。


「はい。なんか日本の偉い人と知り合いみたいで、それでここに来ることになりました」

「誰だろう。うちの校長とかかな」

「いや、そんなレベルじゃないよきっと。総理大臣とか官僚とか、多分そんなんだよ」

「僕もそこまでは教えてもらえなくて」


けど、これでメロスが日本語が流暢なことや、なぜか漫画文化に詳しいことへの説明がついた。


キリが良いところでちょうど予鈴が鳴る。なんか、濃い昼休みだったな。


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