番外編 同窓会 後編
光の円盤は、ゆっくりと中学校の校庭の方へ向かって降りていった。
まさか、そんな。
久々の全力疾走と、期待と逸る気持ちとで心臓がバクバクする。
光が落ちていった中学校のすぐ近くの空き地へ行くと、半円型の銀色の塊が地面に突き刺さっていた。
「うぅ⋯、着陸失敗しました⋯」
スーッと扉が開いて、中から人影が出てくる。
暗い中でも辛うじて見える金髪。
「――メロス⋯?」
「!? 誰かいるんですか?」
焦った声が聞こえる。やっぱり宇宙人だということがバレるとまずいのかもしれない。
しかし、向こうも俺たちが誰だか気付いたのか、すぐに、ぱぁっと表情を輝かせた。
「え? え? 芳樹くん? リュウ君と、学くん?」
「メロス⋯、なんで⋯?」
「わー! すごいです! なんで僕が来たのわかったんですか!?」
キャーキャーと嬉しそうに抱きついてくるメロスにされるがままになりながら、俺たちはまだ呆然と顔を見合わせていた。
✦✦✦
「で、なんで突然戻ってきたんだ?」
ようやく少し落ち着いて、俺たちは事情を尋ねる。まさかまたブラックホールの危機が迫ってきたのだろうか。
しかし、返ってきた答えは非常に平和なものだった。
「同窓会があると聞いたので」
メロスはそう言って、ポケットから折りたたんだ紙切れを取り出す。同窓会の案内ハガキだった。しっかり参加のところに丸がつけてある。
「え、メロスのとこにも送ったの?」
「送れるわけないじゃん。何言ってんの」
リュウのボケに、学が珍しく真面目にキレていた。まだ驚きから抜けきれていないのかもしれない。
しかし、こうしてメロスがハガキを持っているということは、誰かが用意したのだろう。
「佐々木さんかな⋯」
学が呟く。佐々木というのは、中3の時のもう1人のクラス委員だ。
送れるかどうかは別として、懐かしさからハガキだけ作ったのを、例のじいやさんの知り合いの偉い人が送ったのかもしれない。
「さすがに返事は送れなかったので。同窓会はいつですか? 明日? 明後日?」
よほど楽しみにしていたのか、メロスは目をキラキラさせている。
うぅ、この状態の彼にこの事実を伝えるのは非常に心苦しい。
「⋯今日、だよ」
それでも言わないわけにはいかないので渋々伝えると、サーッとメロスの顔から表情が消えていった。
「⋯今日?」
「さっき、終わった」
「⋯⋯」
メロスは、ふら〜っと倒れるように地面に手をつく。
「ガーン⋯」
セルフでオノマトペを付けながら。
なんだか可哀想になってきた。
「二次会、まだやってるかな⋯?」
「うーん、さすがにもう解散してるんじゃない?」
「だよな」
皆にも会わせてやりたかったが。せめてあと1時間早ければ。
「うぅ、いいんです。終わってしまったものは仕方ありません」
「まあそう気を落とすなって。俺に会えたんだから十分だろ?」
「リュウ君⋯。そうですね。そう思うことにします」
「なんかムカつくな」
「わあ! やめてください〜」
リュウはメロスの頭を掴んで髪をわしゃわしゃした。あ、なんかこのやりとり懐かしいな。
「ん〜でも本当に、3人に会えたのがすごく嬉しいです」
「俺も。正直もう会えないと思ってたから」
「どうしてですか? また来るって言ったじゃないですか」
「いやまあ、そうなんだけど」
遥か遠い宇宙にいるのに、まさかそんな、本当に会えるなんて思わなかったし。
「メロス、もしかして1人で来たの?」
「そうです」
「自分で宇宙船操縦出来んのか!?」
「免許をとったんですよ」
宇宙船にも免許があるようだ。
「なので、これからは1人で地球に来られるので、次に同窓会をやる時は、必ず間に合うように来ます」
「おう。それがいいよ」
「とりあえず今日は、俺んちで4人で飲もうぜ」
「いいんですか? やったぁ!」
それから俺たちは、コンビニで酒とつまみを買って、リュウの家で朝まで4人で語り明かした。
卒業から10年が経っていたけれど、その時間は一瞬で飛び越えて、青春していたあの頃と変わらない、楽しい時間が流れていた。
END.




