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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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番外編 そうだ 宇宙、行こう

「メロスが乗ってきた宇宙船って、今どこにあるんだ?」


4人で遊んでいた時に、そう言えば、という感じでリュウが問いかけた。


「家にありますよ」


なんでもないことのようにメロスが言う。


「動くのか?」

「もちろんです」

「リュウ、お前何考えてる?」


嫌な予感がして眉を顰めると、リュウはニヤッと笑った。


「本物の宇宙船なんて、もしかしたら一生見れないかもしれないだろ?」

「⋯まあ」


見るだけだろうか。今動くかどうかを聞いていなかったか?


「ってことでメロス、出来たら見せてもらえないか?」

「いいですよ」


あっさり許可が出た。しかも、


「せっかくなので、ちょっと動かしてみますか?」

「え⋯」

「いいのか!?」

「多分これはじいやに頼んでも許してもらえないと思うので、こっそりですよ?」

「え、メロスが動かすの?」


それまで静観していた学が口を挟んでくる。さすがにまずいと思ったのだろう。


「将来自分で操縦したいと思っていたので、だいたいわかります」

「すごいな⋯」

「さすがに完全に宇宙空間に出るのは無理ですが、ちょっと大気圏を出てすぐに戻って来るくらいなら」


なんか話がどんどん大きくなっている。


「僕の星でやったら法律違反なので逮捕されちゃいますが、ここは日本。つまり無法地帯。今なら見つかってもじいやに怒られるくらいで済みます」

「おお!」

「いや、やめようよ。ちょっと見るだけにしよう?」


日本で勝手に宇宙船を飛ばしていいかどうかは知らないが、さすがに無法地帯なわけではないと思う。それに何より危なそうだ。


「なんだよ芳樹、ビビってんのか?」

「ビビるだろ、そりゃ」

「大丈夫ですよ。僕は何度も乗っているので」

「そりゃちゃんと大人が操縦してる時にだろ」

「僕はパス」


俺が渋っていると、学もそう言ってきた。


「なんだよ、学も来ないのか?」

「だって危なそうだし。2人もやめなよ」

「こんなチャンス2度とないぞ?」

「そうですよ。宇宙船は4人乗りですよ?」


メロスまで煽ってくる。この子はこんなに悪い子だったのだろうか。俺らと一緒にいたせいだったらどうしよう。


「今ならまだじいやはバイト中なので、行くなら今のうちです」

「よし。善は急げだ」

「あ、ちょっと2人共!」


メロスの家に向かう2人を見て、学がどうする?と俺に訊いてくる。


「うーん。あいつらだけにするのも心配だし」

「そうだね⋯」


小さく溜息を吐いて、俺たちは2人の後を追った。



   ✦✦✦


メロスの家の裏へ行くと、そこには半円型の銀色の宇宙船が鎮座していた。


「すげー」


俺たち3人は、呆然とそれを見つめる。


「入口はこっちです」


メロスは家の中から鍵を持って来ると、それを差し込んで入口を開ける。


中に入ると、そこはまさにSF映画のような、想像していた宇宙船内部がそのままあり、テンションが上がった。


メロスは操縦席に座ると、更に別の鍵を取り出し差し込む。すると、トゥルルルっと音がして、周りのボタンが一斉に光った。


「おお!」


操縦席の正面には、大きな画面がある。何か書かれているようだ。


「パスワードを入力する必要があるみたいですね⋯」


メロスは腕を組んで少し考えた後、画面を操作した。


「じいやが使いそうなパスワード⋯。僕の誕生日でしょうか」


入力すると、赤いランプが光り警告音が鳴った。


「エラー、じゃあ父上の誕生日⋯、これも違いますね⋯」


メロスは次々に色々な数字を試していく。しかし、どれもエラーのようだ。


「じいやの初恋の人の誕生日⋯、うーん、これでもない」

「なんでそんなの知ってんだよ⋯」


10回ほど試したところで、今までより長く警告音が鳴った。


「あ⋯、」

「どうした?」

「ロックがかかってしまいました⋯」

「おぅ⋯」


まあ仕方がない。むしろ2、3回間違えたところでロックがかからなかったことに驚きだ。


光っていたボタンが消え、電源が落ちるような音がする。もう1度メロスが鍵を差し直すが、うんともすんとも言わなかった。


「ダメか?」

「ダメみたいです」


リュウとメロスは残念そうに溜息を吐く。けど俺は、どこかホッとしていた。この中が見れただけでも満足だ。


「まあしょうがねぇか」


リュウもすぐに気持ちを切り替え、物珍しそうに宇宙船の中を眺める。しかしその時、メロスがあっと声を上げた。


「まずいです! じいやが帰ってきました!」

「マジで!?」


俺たちは慌てて宇宙船を下りる。とりあえず裏庭に隠れようと言うメロスに従い、庭の草陰に身を隠す。が⋯


「坊ちゃま、そこで何を?」

「う⋯」


あえなく見つかってしまった。


じいやさんは静かにこっちに近づいてくる。俺たちが何をしようとしていたか、すでにわかっている様子だ。


「鍵を」

「⋯はい」


いつも優しいじいやさんが、冷たい声でそれだけ言う。やはり怒っているようだ。


「坊ちゃま、少しお話がありますので中へ入りましょう」

「⋯はい」

「皆様は申し訳ありませんが、こちらでお帰りください」


そう言って、すぐに俺たちに背を向ける。メロスも落ち込んだ様子で後をついて行く。しかし、


「待ってください!」


突然リュウが声を上げ、2人は立ち止まった。


「俺が無理に頼んだんです! 宇宙船を見せろって。だからメロスは悪くありません!」

「リュウ君⋯」


メロスをかばうリュウに、俺も学も驚いた。


「リュウ君、違いますよ。動かそうと言ったのは僕です」

「けど、最初に見せてほしいっつったのは俺だ」


2人の言うことはどちらも事実。だが、


「2人だけが悪いわけじゃないよな」

「そうだね。止められなかった僕らも同罪」


俺たちは、4人で頭を下げた。


「すみませんでした」


このままメロスだけが怒られるのは俺も納得がいかない。その気持ちは、リュウも学も同じだった。


「坊ちゃまは、本当に良いご友人をお持ちですね」


じいやさんが静かに呟く声に、俺たちは恐る恐る顔を上げる。そこには、もう怒ってはいないのか、穏やかに微笑むじいやさんがいた。


「坊ちゃま、あの宇宙船は安全なものではありますが、操作を誤れば命を落とすこともあります」

「はい」

「大事なご友人を危険な目に合わせるのは嫌でしょう?」

「嫌です」


俺たちが反省していることが伝わったのか、じいやさんはそれ以上怒ることはなく、静かに頷いた。



   ✦✦✦


その後は、もういつも通りの雰囲気で、じいやさんが作ったケーキをごちそうになることになった。


「結局、あのパスワードはなんだったんですか?」


メロスがじいやさんに宇宙船を動かすパスワードを訊いている。怒られたばっかりなのに鬼メンタルだな。


「坊ちゃまの誕生日ですよ」


あっさり教えるじいやさんもじいやさんだ。にしても、メロスの誕生日は確かエラーだったはず。


「1度だけ入れてもダメなのです」


あのパスワードは、最初にメロスの誕生日を入力した後、メロスのお父さんの誕生日やら、その他いくつかの数字を入力後、最後にまたメロスの誕生日を入れると解除されるらしい。


しかも、入れた数字が合っていても間違っていても、表示はずっとエラーとなるように設定されているそうだ。


「それは、当てずっぽうでどうにかなるものじゃないね」

「おぅ⋯」


1度入力してエラーが表示されたものを、再度入力しようとは普通は思わない。


そして、パスワードが解除されると、宇宙船を動かすための鍵を差し込む鍵穴が開く仕組みになっているらしい。


「え!? 他にも鍵があったんですか?」

「はい。そちらの保管場所は坊ちゃまでもお教え出来ません」

「どうりで、宇宙船の鍵なのにあまりにも堂々と置いてあると思ってました⋯」


まず解除不可のパスワードに加え、万が一解除出来たとしても、結局そこでもう1つ鍵が必要という二重のロックがかかっていたようだ。


「皆様をお乗せしたい気持ちはありますが、あいにく燃料がギリギリでして。いつかまた、地球に来た時に坊ちゃまが乗せて差し上げてください」

「そうします」


いつか。


それが果たされる可能性は限りなく低いだろうが、それでも俺たちは、笑ってそう約束したのだった。


END.


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