番外編 枕投げ大会?
「これより、第1回枕投げ大会を開催します!」
わぁーと1人で盛り上がるメロスに付き合って、俺とリュウと学はおざなりに拍手をする。
冬休み。メロスの家。
修学旅行の時に約束したので、俺たちは4人で枕投げをすることになった、のだが。
「ではルールを説明します!」
張り切るメロスは、何やら大きめのろうそくのようなものを取り出した。インテリアというよりは、子ども向けのおもちゃのような感じだ。
それを4本、畳の上に立てる。
「これは電気ろうそくです。火を使わないので火事になりません。普通に吹き消しても消えますし、こうやって⋯」
メロスは電気がついているろうそくを、バシッと叩いて倒す。
「倒しても消えます」
今からするのは枕投げのはずだ。なぜろうそくが必要なのか⋯。
「これから、1人ずつ順番に怖い話をして、話が終わったらこうやって⋯」
メロスは枕をろうそくへ向けて投げた。倒れたろうそくの火が消える。
「枕を投げてろうそくを消してください」
「え、待って。俺が思ってた枕投げと違う」
思わず話を遮るようにそう言ってしまうと、リュウと学も頷いた。
「どう違うんですか?」
「どうって⋯。なんかもう全体的に違うけど。なんだっけ、こういうの。怖い話してろうそく消すのは、別に名前あったよな?」
「百物語ね」
「そうそう」
なんで枕投げと一緒になってるんだ?
「そうなんですか? 本場の枕投げはどんな?」
本場。
「ただ枕投げ合うだけだろ。ドッヂボールみたいな」
「そうなんですね。でもそれはダメです。うっかり障子とか破ったらじいやに怒られます」
「どうりで。客間みたいだから大丈夫なのかなって思ってた。床の間あるし」
花瓶とかはないけど、掛軸が掛かっている。当たって破れたりしたら大変だ。
「ま、いいんじゃね? メロスはこれやりたかったんだろ。じゃあやろうぜ」
「いいんですか?」
「おう」
リュウがニッと笑いかけると、メロスは嬉しそうに頷いた。
まあ別に、俺たちは枕投げにそこまでこだわりがあったわけじゃないしな。
「けど、そういう感じなら修学旅行でも出来たかもね」
「まあ。でもほら、ろうそくはなかったし」
「これどうしたんだ? おもちゃ?」
「じいやにクリスマスプレゼントで買ってもらいました!」
「へえ⋯」
もしかして、今日のために買ってもらったのかな。
俺は少し遠い目になった。
いいんだけどさ、メロスは楽しそうだし。箱に書いてある対象年齢3〜5才の文字は見なかったことにする。
「けど、怖い話とか、急に言われても思いつかねえな」
「無ければ恋バナでもいいですよ」
かくして、真冬なのに更に寒くなるような怖い話大会をすることになった。
✦✦✦
俺の投げた枕がろうそくにヒットし、倒れて火が消える。
これ、本来どうやって遊ぶものなんだろう。正しい使い方を3才児に教えてもらいたい。
学、リュウ、俺の順番で怖い話をし、残すはメロスのみだ。
「次は僕の番ですね」
メロスは、では、と前置きをして、ろうそくの前に正座する。
「この前、じいやにクリスマスプレゼントとして、体重計をあげたんです」
「体重計?」
「そうです。体脂肪まで測れる優秀なやつです」
「そういうのって、結構高いんじゃないのか?」
「値段はわかりません。商店街の福引で当たったので」
「ああ、なるほど」
その体重計がどうかしたのだろうか。
俺たちは固唾を呑んで見守る。
「この前、ちょっと出来心で僕もその体重計を使ったら⋯、恐ろしいことがわかったんです」
「⋯⋯」
なんかちょっと、オチが読めたかも。
「体重が⋯、5キロも太ってたんです!」
「やっぱそういう話か!」
そんなことだろうと思ったよ。
「これ見てください! セリヌヴァカラ星での重さの単位から変換するのに計算したんです」
メロスは、わーんと半泣きで計算式を書いた紙を広げる。
「これは由々しき事態です! 身長は伸びてないのに体重だけ増えるなんて! 地球の食べ物が美味しすぎるせいです!」
「それは良いことだと思うけど。筋トレとかやってたし、筋肉がついたんじゃなくて?」
「付いたか? あんま変わってなくね? 相変わらずぷにぷにだぞ」
「きゃー! リュウ君のエッチ!」
「ねえこれさ⋯」
リュウがメロスのお腹を揉んだりしてじゃれ始めたのを無視して、学が計算式の書かれた紙をペラペラと振る。
「計算間違ってるよ」
「え!? どこですか?」
「ここ」
学に教わって計算をし直すこと数分。メロスの表情がぱぁっと明るくなった。
「増えてない! 良かった〜」
「単純な計算ミスじゃん」
「なんだよ。人騒がせな奴だな」
「えへへ。安心したらお腹が空いてきました。買い置きのお菓子があるので取ってきますね」
メロスはそう言って、部屋を出てキッチンの方へ向かっていった。
俺はチラッと時計を見る。午後10時5分。
「あいつ、こんな時間に菓子食うから太るんだろ」
「計算ミスで済まなくなるのも、時間の問題かな〜」
俺たちは3人で顔を見合わせて、小さく吹き出した。
END.




