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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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22/31

番外編 始まりはここから

街中にサイレンの音が響き、人々の怒号や悲鳴があちこちから聞こえてくる。


『坊ちゃま! 早くこちらへ』

『父上と母上は?』

『お2人は住人の皆様の避難誘導に行かれております。心配はいりませんよ』


執事のじいやに手を引かれ、僕は自家用宇宙船に乗り込んだ。旅行目的では何度も乗っているが、こんな緊迫した空気の中では初めてだ。


すぐに宇宙船は空に飛び立つ。小さな窓から外を見ると、他にも何機も空に飛び立つ宇宙船が見えた。


宇宙空間に出ると、ブラックホールが迫っている方向とは反対方向に向かっていく。


『すぐにワープポイントに入ります。しっかりつかまっていてください』


操縦するじいやにそう言われ、僕は再度シートベルトを確認し、手すりにつかまる。


ワープポイントを抜けると、ようやく安全なところに来たのか、じいやがほっと息を吐いた。


『もう大丈夫ですよ』

『うん』


それから、宇宙船の中で2日ほど過ごした。今までの宇宙旅行ではワープポイントを通るほど遠くへ行ったことはなく、初めての場所ではあったけれど、両親のこともあり、とても楽しむ気分にはなれなかった。


無事にブラックホール圏内から脱出したという連絡が来たのは、そんな時だ。


『じゃあ、父上と母上も無事?』

『はい』

『よかった〜』

『ただ、1つ問題が』

『?』


じいやによると、通ってきたワープポイントが消滅してしまい、普通にセリヌヴァカラ星に帰るには、何ヶ月もかかってしまうとのことだ。


燃料も食料も、せいぜい1週間分しか積んでいない。この小さな宇宙船で、そんな長旅は不可能だった。


真っ青になる僕に、じいやは安心させるよう微笑む。


『ここからだと地球が近いので、そこへ参りましょう』

『地球? 地球というのは、ニッポンがある星?』

『さようでございます』


ニッポンの話はじいやに何度も聞いたことがある。知り合いがいると言っていた。日本語もじいやから教わった。


『わあ! 行きたいです!』

『かしこまりました。では、』


練習のために、ここからは日本語で話しましょうと言われる。


「日本語、ですね。⋯了解です」

「ふふふ。大丈夫ですよ。坊ちゃまには、日本の中学校に行っていただきます」


中学校。漫画で読んだことがあるから知っている。


いつまで地球にいることになるのか。もしかしたら何年もいることになるかもしれないので、普通の地球人と同じ生活をして、周りに溶け込む方がいいだろうということだった。


「学校⋯。大丈夫でしょうか。友達とか出来ますかね?」

「坊ちゃまなら大丈夫ですよ」

「お昼ご飯を1人で食べたり、体育で誰もペアを組んでくれなかったりしたら⋯。なんて言うんでしたっけ、そういうの。グッチ⋯、のっち?」

「ぼっち、ですかね」

「そう、それです」


じいやは「ふむ」と考え込む仕草をする。


「もし万が一ご友人が出来なかったとしても、日本ではお一人様も歓迎されていますので、そう悲観することはございません。一人焼肉や一人キャンプなどを楽しまれている方も大勢いらっしゃいます」

「そうなんですね。一人流しそうめんは?」

「自分で流して自分で取るのは瞬間移動の技術が必要かもしれませんが、流しそうめんが食べられる店舗もございますので、そういった店に行かれればよろしいかと」

「わぁ! それなら安心です」


不安要素が消えたので、俄然ワクワクしてきた。


それからまた2日ほどで、地球が見えてくる。


「わあ〜! すごいです! 青いですね」

「坊ちゃま、着陸の準備をしますので、シートベルトをお締めください」

「はい!」


僕はシートに座って、窓の外の地球を眺める。


どんな人たちと出会えるのか、期待に胸が高鳴った。


END.


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