3-5.卒業式
そしていよいよ卒業式の日になった。
「練習もあったので、緊張感がないですね」
「でも、今日は在校生もいるよ」
卒業式の練習は在校生とは別々だった。普通は予行演習とかがあると思うんだけど、うちはそういうのはやらない。体育祭のリレーや合唱祭の順番決めといい、つくづくぶっつけ本番が好きな学校だなと思う。
無事に卒業式も終わり、最後のHRになった。
「通知表配るぞー」
「先生、なんでこのタイミングなんだよ」
「通知表は最後に渡すものだろう」
なんで最後に見たくないものを渡されるんだと思わなくもないが、まあ高校も決まってるし、気分的に今までより重要度は低い。
通知表を配り終わった後、担任は最後に大事な話をするぞ、と言った。
一体なんだと僅かに緊張する俺たちだったが。
「メロスのことは国家機密だからな。卒業しても周りにしゃべらないように」
「それかよ」
「言われなくても、宇宙人と同じクラスだったなんて高校で言ったりしないし」
そんな話をしたら、変人扱いされるだけだ。
今日で本当に最後なので、もう少し何かあるかと思ったが、なんだかんだいつも通りのHRで締めくくられた。
「じゃあ解散。有名になる予定の奴は、後で先生にサインを渡しに来るように」
「なんだよそれ〜」
担任がいなくなると、みんなそれぞれ写真を撮ったり、思い思いに過ごし始めた。
「メロスは帰る? じいやさん来てるのか?」
「はい。帰る前に先生にサインを渡しに行きます」
相変わらず素直だった。
「有名になる予定なんだね」
「もうすでに大分レアキャラだしな」
職員室に寄った後、校庭に出ると、そこでもあちこちで写真を撮っている集団がいた。
「なんか、濃い1年だったな」
感慨深げにリュウが呟く。
最後の1年、4月に3年生になった時は今までの繰り返しだと思ったけれど、メロスがやって来たことで大分変わった気がする。
「よし。走るか」
「なぜ⋯」
「青春っぽいかと」
「僕も走ります」
「メロス、タイム測ろうぜ」
初めてリレーの練習で100メートルを走った時は、25秒かかっていたのだ。今はどれくらい速くなったのか。
「いくぞー! よーい、ドン!」
リュウと俺とメロスの3人で、100メートルを走る。ストップウォッチを持った学が、タイムを見て感心するような声を上げた。
「すごいよメロス、14秒6」
「おお!」
中学生男子の平均レベルだ。
「はあ、はあ、やりました〜」
芝生の上に仰向けに倒れ込むメロス。俺たちも隣に寝転がった。
きれいな青空が、俺たちを見下ろしていた。




