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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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3-4.サプライズ

「芳樹、もうちょっと上」

「この辺?」

「うん」


卒業式前日。俺たちは、教室の飾り付けに精を出していた。


「こんなもんか。後は? ケーキとか」

「家庭科室の冷蔵庫借りて、入れさせてもらってる」

「じゃあOKだな」


卒業式前にみんなでパーティー、っていうのはまあ、もしかしたら割とあることなのかもしれないけど、今日はそれだけじゃない。


実は今日、メロスの誕生日なのだ。


「ほんとよく気付いたよな、芳樹」

「まあ、たまたま」


先日の遅いバレンタインでメロスの家に行った時に、カレンダーの今日のところに赤丸が付けてあるのを見つけた俺は、みんなと別れた後、じいやさんがバイトをしているという執事喫茶の前まで行ってみた。


この辺で執事喫茶なんて1つしかないし、ちょうどバイトが終わったところだったのか、運良くじいやさんに会うことが出来た。


俺には何の関係もない赤丸の可能性もあったけど、なんとなく引っかかってしまったのだ。無関係ならそれはそれで構わない。どっちにしても、じいやさんには美味しいケーキのお礼も言いたかったし。


カレンダーの赤丸のことを訊くと、その日はメロスの誕生日なのだと教えてくれた。


「誕生日のことなんて、俺この1年考えもしなかったぜ」

「まあ、俺ら自分たちの誕生日も別に祝ってないし」

「僕は一応考えたけど、でもメロスの星じゃ太陽暦じゃないから、聞いてもわかんないと思ってたよ」

「さすが学先生。んな深いとこまで考えてねーよ」


本人に聞いてしまうとサプライズにならない。メロスもまさか、俺たちが誕生日を知ってるなんて思わないはずだ。


「メロスは?」

「今足止めしてもらってる女子たちに連絡したから、そろそろ戻って来るよ」


いつもの感じで俺たち3人で祝っても良かったんだけど、せっかくなのでクラス全員を巻き込んで、派手にパーティーをすることにした。もうこれで卒業だし、先生に教室を使う許可ももらったし。


「来るよ」


入口で見張り担当をしていた子が、教室内に声をかける。俺たちは配置に付き、クラッカーを構えた。


「ふう。やっと終わりました。あれ⋯?」


メロスが教室に入って来た瞬間、俺たちは一斉にクラッカーを鳴らした。


「わああ!」


あちこちから弾け飛ぶパーン!という音と紙テープに、メロスは大声を上げる。

目を白黒させて唖然としているメロスに、俺たちは、せーの!と声を揃えた。


「誕生日おめでとう!」


みんなからおめでとうと声をかけられ、メロスは、えええ!?とうろたえるばかりだ。ここまで驚いている人は初めて見るかもしれない。


「び、びっくりしました⋯。なんで知ってるんですか?」

「俺たちの情報網舐めんなよ?」


じいやさんに聞いただけなんだけどな。


「みんな⋯。嬉しいです。ありがとうございます!」


満面の笑みを浮かべる瞳には、僅かに涙の雫が浮いている。


「ケーキ持ってきたよ〜」

「でか!」


30人で食べるから、と特注で作ってもらった大きなバースデーケーキ。全員で少しずつお金を出して注文した。先生にもそこそこ出してもらっている。


「すごい! おっきいですね!」


メロスも目をキラキラさせている。蝋燭に火をつけ、全員でハッピーバースデーの歌を歌った後、メロスが蝋燭の火を吹き消した。


「はいこれ、誕生日プレゼント」

「わあ! ありがとうございます!」


俺とリュウと学は、3人で一緒にプレゼントを購入した。中身はペンケースだ。


ケーキを切り分けている間、ふとメロスが外された蝋燭に目をやった。


「そういえば、どうして蝋燭が6本なんですか?」

「ああ、さすがに15本は多いかと思って」


ケーキが大きいので刺せないわけではないが、穴だらけになってしまうのもどうかと思い、大きい蝋燭1本と小さい蝋燭5本にしてもらった。


「15⋯?」


それでも首を傾げているメロスに、俺たちはあっと顔を見合わせる。


もしかして、年齢の数え方違う⋯?


「あ、のさ⋯、メロスって、今何歳⋯?」


恐る恐る訊くと、予想もしない答えが返ってきた。


「誕生日は今日で40回目です」

「40!?」


クラスのほぼ全員の声が揃う。同じ学年だから当たり前のように同じ歳だと思っていた。


「そっか。やっぱり太陽暦じゃないから」


学が1人で納得したように頷いている。


「40⋯、そんな⋯」

「大丈夫ですか?」


一部のクラスメイト、主に女子がかなりショックを受けているようで、床に手をつき項垂れる勢いだ。


「そっとしといてやりな」

「?」


リュウがぽんとメロスの肩に手を置いた。うん、気持ちはわかる。俺らが思う40歳とは違うことはわかってはいるんだけど、それでもな。


「じゃあ、地球に来てからも、何回も誕生日があったの?」

「ありました。でも、別に毎回はお祝いしないんですよ。僕の星でもケーキを食べてお祝いしたりしますけど、そういうのは10回に1回の節目の時とかです」


なるほど。じゃあ40回目の今日は派手にお祝いしても違和感はないんだな。じいやさんも、だからこそカレンダーに印を付けていたのかもしれない。


「なるほど、みんなは今15歳なんですね。じゃあ僕も、地球にいる間は今日を誕生日にします。で、来年の今日16歳になります」

「そうだな。じゃあまた来年も、一緒にお祝いしよう」

「はい!」


俺がそう言うと、リュウと学も笑って頷いた。


サプライズパーティーをしてやるつもりが、まさかのサプライズ返しだったけれど、それでもすごく楽しい1日になったのだった。


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