3-3.合格発表
今までの人生で、今日ほど緊張した日はなかった気がする。
「よし。行くぞ」
「はい」
高校入試の合格発表。俺はメロスと一緒に合否を見に来ていた。
誰かと一緒に来て、片方だけダメだった、なんてこともあるので、最初は一緒に来るのはやめようかとも思ったのだけれど、メロスに1人で行くのは不安だと言われたので、一緒に来ることにした。
仮にどっちかが不合格だったとしても恨みっこなしだ。それに、俺はやっぱり最後まで、一緒に合格を信じたい。
時間になり、掲示板に合格者の受験番号が貼り出される。すぐにあちこちから様々な感情を含んだ声が発せられる中、俺は祈るような気持ちで自分の番号を探した。
「――あ!」
あった! そう思った瞬間、隣から勢いよく抱きつかれた。
「芳樹くん! ありました! ありましたよ!」
「ぅぅうん。俺もあったよ」
「違いますよ、芳樹くんの番号の話です」
「は?」
こいつは、自分のじゃなくて俺の方を見てたのか。
「自分の探せよ」
「う〜、怖くて見れません。芳樹くん探してください」
「ったく⋯」
俺は再び掲示板に目をやる。
頼む、合格しててくれ⋯
「あ! あるじゃん!」
「えっ!? どこですか!?」
「ほら」
メロスの番号のところを指さすと、無事に見つけられたのか、ぱっと満面の笑みを浮かべた。
「ありました! わあ〜よかった〜!」
メロスは俺に抱きついてぴょんぴょん飛び跳ねる。
邪魔になってしまうので少し離れた場所へ移動し、改めて合格の喜びを噛み締めた。
「やったな!」
「はい!」
一足先にリュウと学も合格していたので、俺たち4人は、これで晴れて全員第一志望の高校へ行けることになった。
書類を受け取ってから、報告のため学校へ向かう。途中で親にも電話で報告をした。
「芳樹くん」
「ん?」
「ありがとうございます」
「え?」
駅に向かう道すがら、唐突にメロスにお礼を言われた。
「僕、地球に来て本当によかったです」
「なんだよ急に」
「ずっと言おうと思ってました。芳樹くんと⋯、みんなと友達になれて、本当によかったです」
「⋯⋯」
俺は立ち止まった。数歩先で、メロスも立ち止まり振り返る。
どうして急に、このタイミングでそんなことを言うのか。
喉の奥が渇いて、声がかすれそうになった。
まさか、もしかして――
「メロス、まさか⋯?」
メロスは、まるで俺の言わんとしていることがわかるかのように微笑んだ。
「――帰るの、か?」
「え? どこにですか?」
「だからその、メロスの星に」
「帰りませんよ?」
「――え?」
ん?
「あれ? しばらく帰れないって、前に話しましたよね?」
「言ってたけど」
じゃあなんで急にこんな話したんだ?
「ちゃんとお礼を言いたかっただけですよ」
「ほんとにそれだけ?」
「はい」
「⋯なんだよもう。マジで帰っちゃうのかと思ったじゃん。驚かせんな!」
「なんで僕は怒られてるんですかね?」
そんなの、無駄に驚かせたからに決まっている。
俺は脱力してその場にしゃがみ込んだ。
「ずっと、ちゃんと言いたいと思ってたんです。リュウ君と学くんにも言いたいです」
「それはいいけど、タイミングと言い方考えて言えよ?」
「タイミング⋯。卒業式の後に順番に呼び出せばいいですか?」
「告白か!」
それはそれで面白そうだけど。
復活したので立ち上がり、再び歩き始める。
「2人とも学校にいるだろうし、それじゃあさっさと行くか」
「はい!」
学校に戻った後、メロスがリュウと学にもお礼を言うと、2人はやっぱり俺と同じような反応をして、すごく驚いた後に驚かすなと怒っていた。
怒られたメロスはちょっと不本意そうだったが、それでもどこか嬉しそうにしていた。




