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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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3-2.それぞれのバレンタイン

「先輩、これ、受け取ってください!」


緊張気味に差し出される紙袋。可愛くラッピングされた中身が袋の口から覗いている。

これは、どう見ても本命。本命のバレンタインチョコレートだ。


俺にではなく、メロスへの。


「えっと⋯」


廊下で、偶然メロスがチョコを渡されている場面に出くわしてしまった俺は、物陰に隠れて様子をうかがう。


果たして、メロスはどう返答するつもりなのか。


「なぜ僕に? というか、学校にお菓子を持ってきていいんですか?」

「うわーん!」


明らかに責める内容の返事に、女の子は泣きながら走って行ってしまった。


俺はその様子に、こらえきれずに噴き出した。


「! 芳樹くん、いたんですか?」

「うん。邪魔しちゃ悪いかと思って見てたんだけど、ぷっ」


そっか、知らないか、バレンタイン。

漫画とかでもよくあるから、知ってるかと思ってた。


「ナイスな返しだな」


教室に戻ってその話をすると、リュウはうんうんと頷いた。


「なるほど、そう言われれば漫画で読みました。今日がそのバレンタインなんですね」


メロスも合点がいったようだ。


「やっぱり、女の子が男の子にチョコを渡すのが多いんですか?」

「んー、最近はそうでもないかもよ? 男子から渡したりもするし、美味しそうなチョコがお店にいっぱい並ぶから、自分用に買う人も多いって、テレビで言ってた」

「お世話になってる人にあげたりとかね」

「なるほど」

「俺にくれてもいいぜ」

「リュウ君チョコ好きなんですか?」


リュウはすでにいくつかチョコをもらっているようだった。サッカー部の元エースなので、ファンの女の子も多いのだ。


「いいですよ。明日持ってきます」

「いいんだ⋯」


リュウが頷くと、メロスはなんでもないことのように言った。


「いつもお世話になってるので。芳樹くんと学くんはチョコ好きですか?」

「好きだけど」

「学はチョコケーキめっちゃ好きだよな」

「うん」


俺たちにもくれる流れなのかな? それは普通に嬉しい。


「それなら、今度の休みに僕の家に来ますか? じいやの作ったケーキはすごく美味しいんです」

「そうなの?」

「はい! 持ってくるのは難しいので、是非」


次の休みとなると、もうバレンタインからけっこうズレてしまうので、いっそ受験が終わった3月の頭にしようということになった。



   ✦✦✦


高校入試も無事に終わった3月。

俺たちはメロスの家にやって来ていた。


「どうぞ、こちらへ」

「お邪魔します」


じいやさんが玄関で出迎えてくれる。

リビングに通されたところで、メロスもリビングに入って来る。


「じいや、後は僕がやるのでいいですよ」

「左様でございますか? では、私はこれで失礼いたします」


じいやさんはそそくさと出て行く。すぐに玄関のドアが開閉する音が聞こえた。


「じいやさん、なんか用事あったの?」


なんだか急いでいた様子だったので、心配になってメロスに訪ねる。


「今日はバイトが入っているそうです」

「ああ、例のスキマバイト」

「何のバイトやってるの?」

「今日は執事喫茶です」

「執事喫茶!?」


そういうのも募集してるんだな。


「執事喫茶ってあれか? おかえりなさいませ、ご主人様ってやつか?」

「執事喫茶は、お嬢様が多いらしいですよ」

「へえ〜」


入ったことがないのでどんなのか想像つかないけど。俺たち中学生でも入れるんだろうか⋯。


「すげーな。まさか本物の執事がやってるとはみんな思わないんじゃね?」

「でも、メロスの執事なんでしょ? いいの? 女の子たちに取られちゃっても」

「うー、背に腹は代えられません⋯」


それは、お金のためならじいやさんを差し出すのもやむを得ないという意味だろうか⋯。


「あ、このケーキマジで美味い」

「ほんとだ」


美味しいから是非食べに来てと言われた、じいやさんお手製のチョコレートケーキは、本当にすごく美味しかった。


「メロスはホワイトデーのお返しは用意したの?」

「しました!」

「なんだかんだ結構もらってたもんな」


最初の女の子だけ、受け取ってもらえなくて不憫だったな。


「何個もらったんだ?」

「10個です。1年生と2年生がほとんどですね」

「あぁ⋯」


なんかわかるかも。

一緒にいると、ちょっと抜けてて天然なのがわかるんだけど、本性を知らない他学年の子たちには、金髪美少年のイメージしかない。ちょっと足が遅い程度の短所なら、それを補って余りある希少価値なのだろう。


「リュウ君もいっぱい貰ってましたよね。お返し用意したんですか?」

「いや。俺はお返しは渡さないって最初から言ってあるから」

「どんだけ俺様なんだよ⋯」

「だって面倒じゃん。わざわざ他の学年までお返し配りに行くとかさ」

「配る⋯。自慢? 多いこと前提の動詞だよそれ」


学が突っ込むと、リュウは、事実なんだからしょうがないだろと肩を竦めた。


「多少は用意はしてくから、偶然会ったりしたら渡すけどな。けど、変に期待させたりしても悪いし、ああいうのって、俺に渡したことも周りにバレたくないって思ってる子だっているじゃん。でも俺、そんな難しい配慮求められても無理だし」


だから最初から、お返しは期待しないで欲しい。それでも受け取って欲しいと言われたものだけ受け取ることにしているそうだ。


「リュウ君、大人ですね」

「だろ?」

「大人なの? やっぱりただの自慢じゃない?」

「うるせーよ。学は彼女持ちのくせになんで僻んでんだよ」

「え!? 学くん彼女いるんですか?」

「うん。いるよ」


学の彼女の存在を唯一知らなかったメロスは、すごい食いつきだ。


「学くん、聞いてないですよ。どこに? どこにいるんですか!?」

「地球にいるよ」

「地球のどこにいるんですか!?」

「ぷっ」


学の謎な返しにも全く動じないメロスに、俺とリュウは小さく噴き出したのだった。


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