2-7.バナナはおやつに入りますか?
「俺は、大事なことを忘れていた⋯」
合唱祭も無事に終わった翌週の月曜日。リュウが悲痛な顔で呟いた。
「え、なに⋯?」
大事なこと? もしかして、受験の申込み期限がもう過ぎていたとか? いや、そんなことはないはずだが。
「体育祭が終わって、合唱祭も終わって、後はもう受験だけだと思ってたのに⋯」
「のに?」
「まだ修学旅行があるじゃないか!」
「大事なことってそれかよ」
びっくりした。っていうか普通、修学旅行の存在を忘れるだろうか。
「修学旅行、ですか?」
メロスが目をキラキラさせている。
「旅行ということは、お泊まり?」
「おうよ!」
「リュウ君とお泊まり、キャー♡」
「キャー♡」
「⋯相変わらずだなお前ら」
俺は教室に貼られているカレンダーを見つめた。修学旅行は今月末だ。
「行き先はもう決まってるんですか?」
「決まってるよ。1泊2日だから、そんなに遠くは行かないんだよな」
受験が近いので仕方ない。時期をずらせばいいのにと思わなくもないが、色々と事情があるんだろう。
その時、俺たちの話を聞いていた担任が口を挟んできた。
「お前たち、ちゃんと準備しとけよ」
「先生! おやつはいくらまでですか?」
「300円だ」
「安! そんなんじゃ2個くらいしか買えないじゃん」
「先生!」
メロスもビシッと手を挙げる。
「なんだ?」
「バナナはおやつに入りますか?」
「誰だメロスに変なこと教えたやつは」
いつの間にか、先生もすっかりメロスと呼ぶようになっていた。
「こんなん変なことのうちに入んねーよ」
「それはもっと変なことを教えているという自白と捉えていいな?」
予鈴が鳴ったので、先生はおやつの金額に決まりはないので、自分で量を考えて持ってくることと、バナナがおやつかどうかも自分で考えるように言って、教室を出て行った。
「俺は、バナナは朝食で食べる派だぜ」
「僕はバナナはあんまり好きじゃないので、どっちでもいいです」
「じゃあ何で聞いたんだよ⋯」
テンションの高い2人に付き合ってどっと疲れた俺は、溜息を吐いて机に突っ伏した。




