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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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2-6.波乱の合唱祭

「メロスがいない⋯」


いよいよやってきた合唱祭当日。

開会式まであと10分と迫っていたが、メロスの姿が見当たらず、俺たちは焦っていた。


「もしかして、普通に学校の方に行っちゃったんじゃない?」

「あり得るな」


合唱祭は、町内の音楽ホールを借りて行われる。メロスにも事前にちゃんと伝えてはあったのだが。


その時、スマホにメロスから着信が入った。


「もしもし」

『芳樹くん! どこにいるんですか? 学校誰もいません!』

「メロス、今日は学校じゃなくて音楽ホールだって言っただろ」

『え⋯、あー!』

「やっぱ忘れてたか」


まあでも、学校にいるならなんとか間に合うか⋯?


『今からすぐに向かいます!』

「待て! 道わかるか?」

『道⋯、道?』

「あーもう! ちょっと待ってろ」


近くにいた担任に、メロスが今学校にいることを伝え、迎えに行けないか相談する。


「先生、タクシーとかで迎えに行けないの?」

「うーん、1人だけ特別扱いするのもなあ」


あいつを特別扱いしないでどうするんだ。宇宙人だぞ?


「ったく、もういい。俺が迎えに行く」


自転車で来ているので、他の人が行くよりは早い。


「学! お前にかかってるからな! 1番だけは引くなよ」

「そう言われると引きそうなんだけどな〜」

「絶対だからな!」


合唱祭の歌う順番は、開会式の最後に各クラスの代表が集まって、くじ引きで決めるのだ。1番になってしまったら、確実に間に合わない。


俺はメロスに電話して、ある程度道順がわかりやすいところまで出てきて待っているよう告げると、自転車をこぎ出した。



   ✦✦✦


「芳樹くん!」


学校の近くのコンビニの前で、メロスと合流する。


「はあ。ったく、お前は」

「すみません⋯」

「とにかく、すぐに戻るぞ」

「はい!」


いい返事をしたメロスは、しかし自転車の後ろに乗ろうとしたので、俺は慌てて止めた。


「自転車の2人乗りは交通違反だからダメ」

「そうなんですか?」

「そうだよ」

「じゃあ芳樹くん、何のために来たんですか?」

「お前が道わかんないって言うからだよ!」


荷物だけはカゴに乗せてやると、俺は再びペダルをこぎ出した。


「よし! 走れ! メロス!」

「わー! 待ってください〜」


そろそろ開会式が終わる頃だろうか。急がないと、2番でもギリギリになってしまう。


「はあ、はあ、はあ⋯。もうだめです⋯」

「大丈夫か〜?」


少し走ったところで、メロスはふらふらと膝に手をつく。


まあ、大した距離走れないのは、最初からわかってはいたんだけど。


「これ、僕が自転車に乗って、芳樹くんが走った方が速いですよ⋯」

「お前な⋯。メロスって自転車乗れるの?」

「気合いで」

「おい」


乗れないんじゃないか。


その時、学からスマホにメッセージが届いた。


「学⋯、よし、4番だ」

「歌う順番ですか?」

「うん。4番なら走らなくても間に合うよ。良かった〜」


自転車を押して、俺もメロスと歩いて会場へ向かう。


「すみませんでした」

「まあ、人間なんだから間違えることもあるよ。次は気をつけような」

「はい」


会場に戻ると、リュウと学が入口で待っていてくれた。


「リュウくーん! 学くーん!」

「メロース!」


メロスが2人の名前を呼びながら走って行く。始まる前から波乱の合唱祭だった。



   ✦✦✦


無事に間に合った俺たち。結局クラス対抗の結果は2位に終わった。


「楽しかったですね~」


メロスが満足そうに笑う。これで長かった朝練の日々も、本当に終わりだ。


「ところでメロス、お前自転車乗れないんだって?」

「え?」


メロスがチラッと俺を見る。え、待って、こいつチクったな、みたいな目やめて。


「自転車は乗れた方がいいと思うぞ」

「⋯そうですね。そのうち練習します。今日は用事があるので失礼しますね」


そそくさと帰ろうとするメロスだが、リュウに首根っこを掴まれてあえなく失敗していた。


「なに逃げようとしてんだよ」

「別に逃げてませんよ。わー! ギブギブ! 首が絞まります!」

「お前がちゃんと歩けば絞まんないから」

「きゃー! 芳樹くーん! 学くーん! た〜す〜け〜て〜」


相変わらずの2人に学と一緒に苦笑して、俺たちはリュウたちの後を追った。


紺とオレンジのコントラストが鮮やかな空には、キラリと1番星が輝いていた。


END.


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