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何気ない日常を彩る美少年  作者: さくら優


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2-3.森の音楽会

「いーち、にー、」

「うー⋯」


歌の練習は、まず腹筋と背筋から始める。運動が苦手なメロスにとっては、これだけでもキツイようで。


「はあ、はあ、もうだめです⋯」

「おーい、まだ10回もやってないぞ〜」

「はぁ、地球の、重力が⋯重い⋯」

「久々に聞いたなそのフレーズ」


ふらふらと起き上がり、乱れた髪を直しながら、メロスは唇を尖らせる。


「だいたい、なんで歌の練習に筋トレが必要なんですか?」

「安定した声を出すには、腹筋を鍛えないと」

「うぅ⋯」


それでも、筋トレはリレーの練習の時にもやってたので、多少は回数をこなせるようになってきていた。


「ちゃんと上達してるんだし、無理しない程度で続ければいいよ」

「はい!」


昼休みに給食を食べながら朝練の報告会をすると、学がそう言って励ましていた。これももうお馴染みの光景だ。


「メロスは今まで、あんまり音楽聴いたりしなかったの?」

「そうですね、僕の星にはCDとかはなかったので、日常的に聞くという人はほとんどいなかったです」

「そうなんだ?」

「はい。楽器の種類もそれほど多くはなくて、人工的なものは少なかったですし」

「えっ?」


この辺りの話を聞いたことはなかったので、俺たちは興味津々で続きを促した。


「自然のものを使うってこと?」

「そうです。中が空洞になってる木の枝とか、貝とか」

「ほら貝みたいな感じか⋯」

「あと、叩くときれいな音がするキノコのような植物が群生しているところがいくつかあって、そういうところで演奏会が開かれたりしてました」

「すご。おとぎ話みたい」


人工物ではないので、気候によって音が変わったり、ドレミの音階が全部揃うわけでもない。なので、演奏されるのは有名な曲とかではなく、ほとんどが即興なのだそうだ。


そのため、プロの演奏家のような仕事をする人は、本当にごく僅かしかいないらしい。


「そうだよな、その場で即興で曲作って聞かせるんだもんな」

「はい。僕が今まで聞いた中で1番すごかったのは、鳥の調教師の方の演奏会ですね」

「鳥? もしかして、鳥の鳴き声で音楽作るの?」

「まさにそうです」

「やば⋯」


それは確かに凄そうだ。大元のメロディを演奏する人に合わせて、調教師が数種類の鳥の鳴き声を操るらしい。


歌うインコの動画とか、そういうのは俺も見たことあるけど、メロスの話を聞いていると、そういうレベルではなさそうだった。


俺たちが圧倒されていると、メロスが、でも、と声を弾ませた。


「地球の音楽もすごいです! 毎日いろんなところから音楽が聞こえてきて、気分が上がったりリラックス出来たり。楽器も、この前、吉田さんがピアノを弾いているのを見て驚きました!」


吉田というのはうちのクラスの女子。合唱祭でピアノ伴奏をやってくれることになっている子だ。

合唱曲の伴奏は、当然だが簡単なものもあれば難しいものもある。伴奏が出来る人がいなくて選曲が絞られるクラスもあるが、うちは彼女が「なんでも任せて!」と心強い返事をくれた。


「手がすごいスピードで動いていて、目が離せなくなりました」

「ヤバイよな。俺も途中で指が絡まるんじゃないかって思ったよ」

「絡まったら大変ですね。痛そう⋯」

「大丈夫だよ。絡まったりしないから」


想像して青ざめるメロスに、学が若干呆れながら返していた。


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