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夢わたり  作者: 猫乃 鈴
10/34

第三章・3

―3―


「おい、常磐はどうした」


 席に常磐の姿がないのを見て、東田が西山に訊いた。


「常磐なら病院に行ったわよ。ついでに例の夢占いでもしてくればって言ったんだけど」

「夢くらいできゃあきゃあ言いやがって。女子じゃあるまいし」


 東田は笑った。東田もまさか常磐が今、本当に夢占いをしているとは思ってもみない。


「昨日の女子高生から、常磐に礼を言いたいって電話があったんだけどな」

「あら、もったいない」

「じゃ、俺はちょっと前の被害者に会ってくるわ」

「分かったわ」


 東田は署を出ようとして、


「おっと、便所便所」


 一階の奥のトイレへと寄る。

 東田がトイレに入ると、あまり使われないそのトイレの個室三つが並んだうち、真ん中のドアが閉まっていた。

 誰か入っているのか。

 東田は用を済ませると手を洗い、もう一度個室の方へと目をやる。人の気配がしてこない。よく見ると鍵はかかっていないことに気がついた。


「……なんだよ。空いてるじゃねえか」


 東田は閉まっている個室のドアを押した。ギイイと錆びた蝶番が音をたてながら、ゆっくりとドアは開いた。


「なんだ?」


そこにはダンボールの小さな箱が一つ。蓋を閉められた洋式便座の上に置かれていた。




◆◆◆◆◆◆


「それで?」


 鈴は箱を置く手真似も交えながら話す、常磐の動きが止まってしまったのを見て言った。


「箱を置いて署を出て行きました」

「それだけ?」


 霧藤が期待はずれというような顔をする。


「すみません……」

「その夢が、前の夢とどう同じだと」

「それは、あの心臓が苦しくなるような……」

「異常な興奮状態が?」


 鈴が言った言葉に、常磐は顔をしかめる。


「興奮なんてしていません」

「それは失礼」


 さらりと返す鈴。

 常磐は少しムッとした。どうみてもただの子供じゃないか。

 そこに携帯電話の着信音がした。


「あ、ちょっとすみません」


 常磐はスーツの胸ポケットを探りながら、電話に出るため座敷の外に出ていった。


「どう思う?」


 常磐が出て行くと、霧藤は鈴に訊いた。


「どうも何も。ただの夢だ。普段気にしていることが、夢に出てきただけのこと」


 鈴はだるそうに欠伸をした。


「やっぱり、そうなのかな」


 そこに常磐が戻って来た。その顔が青ざめているのに霧藤は気づく。


「どうしました?」

「今……」


 常磐は言った。


「今、爆発があったって連絡が。霞野署一階の男子トイレで……」



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