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転生!底辺ドワーフの下剋上~小さな英雄の建国記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第24話 一騎打ち

「コウとか言ったか? 俺がまさかドワーフ如きの名前を覚える事になるとはな……。だが、しかし、それもこの場で貴様を殺してすぐに忘れさせてもらう。力比べと殺し合いでは全く違う事を教えてやるよ!」


 鉱山責任者ダンの部下の男はそう言うとコウの前に一歩出て、非常に刃の薄い湾曲した片刃の刀身が特徴的な剣を抜くと構えた。


 確かシャムシールという剣だ。


 コウは大言壮語するこの男を相手に油断する事無く、手にしている戦斧を後方に下げて一閃する構えを取る。


「教える前に死んでも知らないですよ?」


「力比べに勝ったくらいで、調子に乗るな!」


 男は激高してコウに斬りかかった。


 そのタイミングに合わせてコウは戦斧を先程と同じように横殴りに一閃させる。


「かかったな!」


 男は激高したのは演技であり、コウにその大きくて重そうな戦斧を振らせる事が狙いだったのか後方に飛び退った。


 そして、コウの戦斧が通過するタイミングに合わせて踏み込んで再度、斬りかかる。


 これが、最初からの狙いだったのだろう。


「──胴体だけ踏み込んでも僕には届きませんよ?」


 コウはそう言うと、戦斧を余裕をもって引っ込めた。


「は?」


 男の視線はコウから地面に向き、そのまま突っ伏す形で倒れ、視界は暗転する。


 そう、コウの戦斧による一閃は、男の誘うような浅い踏み込みでも十分間合いの範囲だったのだ。


 そして、男も気づかない程、綺麗に腰を真っ二つにして胴体と下半身をおさらばさせていたのである。


 その証拠に、男の下半身だけは、一歩踏み込んだ状態で立ったままで、止まっていた。


「ば、馬鹿な……!」


 鉱山の責任者ダンは、一番の腕利きの部下がわずか一振りで殺された事に唖然とする。


「……次は誰がこうなりますか? そこの鉱山責任者の方でもいいですよ?」


 コウはわざと煽るように言う。


 もちろん、時間稼ぎの為だ。


 誰もが一騎打ちをしようとして思っているわけではない。


 コウとしてはこの領兵の数で一気に襲われたら、こちらもひとたまりもないのだ。


 だから、敢えて煽り、次の対戦者を求める素振りを見せる事で、一騎打ちでの対決を続けるように仕向けたのである。


「わ、私は剣を扱うタイプではない! だ、誰か奴に勝ったら、小金貨五枚を出すぞ!(約五十万円くらい)」


 鉱山責任者のダンはこの少年のような姿の緑髪のハーフドワーフに怖気づくと、他の領兵達に具体的な額の賞金を付けて募集した。


「……小金貨五枚……か……。確かに欲しい、欲しいが、あんな斬られたのもわからずに死ぬような切れ味鋭い戦斧の一振りを交わせる自信がない……」


「俺、借金があるから、それを払ってもお釣りがくる額だから挑戦したいが……、どうしようか……」


「あれ? よく考えたら一騎打ちする必要なんてあるのか?」


 領兵達が賞金額に悩む中、その中の一人がもっともな事を口にした。


 うっ……、バレたー!


 コウは内心で悲鳴を上げる。


 もう少し時間を稼ぎたかったし、なにより、初めて人を殺したショックも少なからずある。


 自分も転生前は人間だったから、いくら仲間のドワーフを助けるためとはいえ、罪悪感を持たないわけがないのだ。


 だから、緊張のあまり呼吸が浅くなっていたのだが、バレた事でそれに気づいた。


 慌てるな、ここが勝負どころだ。みんなの命が掛かっている。次の手を打とう。


 コウはそう考えて深呼吸をすると、


「さあ、次は誰が僕と勝負するんですか!? 前に出て来てください! ならば隊長さんでもいいですよ! それとも僕のような半端なドワーフ相手にビビって逃げますか!?」


 と領兵の真意を突いた言葉をかき消すように大声で挑発した。


「何を!? ──おい! 俺の盾を持ってこい!」


 隊長は差別主義者である。


 コウの安い挑発が意外に効いたのか激高すると部下に盾を要求し、腰に差した剣を抜く。


 その様子を見てコウは時間稼ぎに成功したと一瞬喜ぶのであったが、隊長の剣と盾を一目見てその喜びも一瞬で萎えてしまった。


 それはコウも鍛冶屋で働いていた身であったからわかるのだが、装備品が一流のものであったのだ。


 この時代、一流の装備をしている兵と言ったら、身分のある金持ちか、スポンサーが付いている腕に自信がある強者である。


 スポンサーとは武器屋防具屋の類を生業とする商人達の事で、お偉いさんや腕のある有名人に提供する事で自分のところの商品を宣伝する事があるのだ。


 領兵隊の隊長レベルにあんな一流の装備を作るスポンサーが理由もなく付くわけがない。


 きっと、隊長は腕に覚えがあるタイプだ。


 そう確信したコウは次のカードを切る事にした。


 それは……、


「お願いします!」


 と誰に言うでもなく、大声で告げる。


 一瞬、敵である領兵達は隊長に対する言葉かと思う。


 だがすぐにそれが合図である事がわかった。


 それはなんと、ドワーフの集落の方から煙が上がったからである。


 これにはすぐ、


「ドワーフ共、自分の家に火を点けやがったぞ!?」


「俺達に略奪されるくらいなら、全部燃やす気だ!」


「隊長、急いでこいつを仕留めましょう! 急がないと全てが灰になっちまいます!」


 と領兵達は慌てふためき、隊長をせっついた。


 隊長もハッとして、コウを睨み、「やってくれたな、ドワーフ共!」と改めて激高するとコウに向けて剣を向ける。


 先程まで怯んでいたのが嘘のように、コウに勝負を挑む気だ。


「隊長の身で一騎打ちなどリスクしかないから避けていたが、時間もない。貴様を殺して他のドワーフ共は全員鉱山へ強制労働送りだ!」


 隊長はそう宣言すると、盾を構え、コウに向かってくるのであった。

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