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魔人バラクロア  作者: ASD(芦田直人)
エピローグ そして、火の山へ
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エピローグ(その1)

 やがてリテルは村に戻りました。

 気がつけば王国を揺るがす大騒動の、まさに渦中にあったリテルです。魔人のこと、バラクロアのこと、火の山での一連の顛末……場合によっては事の責任を問われ、あれやこれやと厳しい追及を受けても仕方のないところでしたが、不思議と誰かに何かを問われる事もありませんでしたし、そういったしかるべき席に呼び出されるという事もありませんでした。一つには、あのルッソが全てを自分に一任するように、と事後処理の一切を引き受けることで、そういった追及から彼女を守ってくれたというのもありますし、また一つには、あれだけ魔人を悪しざまに罵っていたホーヴェン王子が、何故か彼女が火の山に居合わせた事について意外なことに何も言及しなかったというのもありました。もっともそのせいもあって、肝心の王子はと言えば火の山に兵を送ったことで魔王復活のきっかけをつくり、あわや王国存亡の危機、という事態を招いてしまった張本人として、相当な非難に晒されることとなったりもして、それはそれで気の毒ではありました。

 そんな調子で国中から悪者扱いされたかに思えたホーヴェン王子ですが、結局彼がリテルの村の窮状を訴えたことで、ようやく本格的に救援の手が差し伸べられる事となりました。その窮状も元をただせば杜撰きわまりない当てずっぽうな開拓計画に原因があったわけで、王子がその担当部署を告発したことで、同じように貧窮にあえいでいた辺境の開拓地帯の村々にも同じように救済が行き渡ることとなったのです。そういった事もあって、辺境域に限っては意外と王子の人望も上向きになった事に関しては、当人も少しは満足したのかも知れませんでした。

 なので、リテルが村に帰り着いた頃にはすでに救援が行き届いたあととあって、村人達の間にもようやく笑顔らしきものが戻ってきたりもしていたのでした。魔物の軍勢が通過していったことで、そもそも村人達の安否も心配ではあったのですが、幸いにして皆無事で、リテルはほっと胸を撫で下ろしたのでした。それよりリテルの方こそそもそもは火の山につれられていったきり生死不明、多分に絶望的と見なされていたわけですから、実際に我が子と顔を合わせたときの両親の歓喜たるや、なかなか言葉では言い表せないくらいのものでした。

 もちろん、そもそもの発端は村人らが生け贄を差しだそうと思いついた事にあったわけですが、リテルはリテルで、あの火の山で今から思えば相当な好き勝手を、王国軍の兵隊たち相手に繰り広げていたのも事実なので、その辺りの差し引きも勘案して、彼女も敢えて誰かを責めたりということはしないでおこう、と思ったのです。

 それよりも……リテルがやはり一番気にかけていたのは、結局あの魔人がその後どうなったのか、という事でした。

 リテルが戻ってきてすぐは村中大わらわでしたし、元々見込みのなかった開拓地にこれ以上留まらなくてもよい、という主旨の通達が王宮から正式に出ていたので、村人らはそれぞれに、これから先の身の振り方を論じ合うなどしばしあれこれと慌ただしくしておりました。そんな諸々のほとぼりが多少冷めるのを見計らって、リテルは一人、あの火の山の洞穴へとこっそり足を運んでみたのでした。

 考えてみれば、あの洞穴についてはもはや勝手知ったる我が家のごとく充分に見知っていましたが、そこへ向かってこうやって自分の足で山を登っていくのは、これが二度目でした。

 当然……と言っていいのか分かりませんが、リテルの行方を炎が阻んだりということもなく、坂道にすっかり息が切れてしまった他は何の邪魔が入るでもなく無事洞穴の入り口までたどり着くことが出来ました。

「魔人さま……?」

 声をかけても、暗がりのずっと奥へと密やかにこだましていくばかりで、返事どころかただただ静寂ばかりがそこにはあるのでした。

 入り口から覗き込めば、洞穴の奥は昼なお暗く、リテルは何かしら灯りのたぐいを持ってくるべきだったと少し後悔しました。

 それでも中に足を踏み入れるべきか否か、しばしその場で迷っていると、ふいに背後から足音が響いてきたのです。ふり返ってみると、そこにいたのはあの賢者ルッソでした。

「……賢者さま!? どうしてここに?」

「やはり、気になってな。様子を見に来たのだ」

 ルッソはそう言いながらさっと手をかざし、その手にたいまつがわりの燐光を浮かび上がらせると、そのまま洞穴の奥へと進んでいきました。リテルも、置いて行かれてはまずいと慌ててあとに続きます。

 あれだけ毛嫌いしていたルッソの通過を許すとなれば、やはり魔人はそこにはいないという事になるのでしょうか。入り口の緩い下り傾斜を、リテルは足を滑らせないようにおそるおそる続いていきました。

 その斜面を下りて、ルッソは岩の広間に足を踏み入れました。手元の燐光を向こう側へ軽く放り投げると、それは丁度広間の中央の天井部分に留まって、室内全体を明るく照らし出すのでした。


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