表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔人バラクロア  作者: ASD(芦田直人)
第3章 魔人討伐
11/39

第3章(その2)

 もちろん、何度足を運んだところで、結果は同じでした。山は裾野付近の比較的傾斜がなだらかな辺りに申し訳程度にまばらな灌木が立ち並んでいる程度で、あとは岩だらけで遮蔽物も何もない、丸坊主の岩山でした。魔人が潜むと思しき洞穴まで、身を潜めて接近する事もほぼ不可能なありさまです。また万が一洞穴に踏み込まれたところで、元々生身の肉体を持ち合わせているわけでもない魔人を、いかようにして捕らえたり殺したりするのか、至難の業と言えたでしょう。そもそも魔人の操る炎は、出現地点もその威力も全く持って自由自在、それに行く手を阻まれてしまえば人間はなすすべもなく逃げまどうしかなかったのでした。しかも相手は屈強な兵士、魔人にしてもリテルが迷い込んできた時のような遠慮も不要と来ています。

 立ち向かう兵士達にしても、まさか魔人を剣で討ち取れるとは思ってもいませんでしたが……上官に突撃しろと命じられれば、従わないわけにもいきません。どうにかして極力岩陰に身を潜めるようにしつつ、忍び足で少しずつ山を登っていきますが、結局毎度炎の壁に阻まれて逃げ帰ってくるありさまでした。

「まさか王子殿下は、俺たちに焼け死ねとはいわないよな……?」

 日々突入作戦の失敗を繰り返す中で、兵士達の一人が、そんな風に漏らしたりもしたのでした。度重なる失敗に、王子や大尉といった上官の態度がピリピリと嫌な雰囲気になってゆくのを見るにつれ、いずれ王子辺りがやけをおこしてそのように命じる事もあるのではないか、というのはあながち有り得ない事でもないように思えてきたものです。

 もちろん、最初は呑気に構えていた王子も、火の山の炎の壁がどうしても突破できぬままにいたずらに村での滞在が長引いていくにつれて、苛立ちを隠しきれなくなってきていました。

「王子、ここはやはり、撤退するのがかしこいのでは。幸い魔人めは防戦一方でこちらへは手出しをしてきておらぬ事ですし」

「今はこちらが攻勢ゆえ、様子を見ているだけかも知れぬ。我らが引き揚げたあとになって、残された村が焼け野原にでもなってみろ。寝覚めが悪いどころの話では済まないぞ」

「それは、まぁ実際にそうなれば、確かにそうではありますが……」

「それに、忘れてはならぬぞ。魔人は実際に、年端も行かぬ少女を無惨にも焼き殺してしまっているのだ。その無念を我らが晴らさずして、一体誰がやり遂げるというのか」

 王子はもっともらしい熱弁を振るいましたが、大尉の心を強く打つことはありませんでした。その少女が元々は生贄として火の山に差し出されたのだ、というようなうわさ話を大尉は兵士達を通じて耳にしていましたし、火事騒ぎでうやむやになってしまったとはいえ村の子供が部隊の糧食をこっそり盗み出そうとしていたというような報告もあって、あまりこの地に長く留まるのは賢明ではないと彼は考えていたのです。

 と言って、手ぶらで敗退となれば大尉の進退とて多少なりとも問われないとも限りませんし、出来うることならなるべく人的にも物的にもあまり損害の出ない範囲内で、あくまでもホーヴェン王子当人の勇み足、大失態、というような話に落ち着くに越したことはないな、などとというのが彼なりの目論見でした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ