始動
人生というのはなかなか思うようにいきません。それでも生きることに価値はあるのか?私たちはもがき苦しみながら進んでいくしかありません。
昨日、私の友人の優斗が自殺した。
称揚医科大学は日本で最も偉大な大学とされていて、それらが生産する医薬品によって何百万の人間の命が救われているということも事実だ。だが、それとは裏腹に一般人には決して知られることのない秘密の研究があった。
それは、『死』という病気を支配する研究である。
人間を含めすべての生物は細胞と呼ばれる装置から作られている。
細胞は、遺伝子という核酸でできた設計図をもとに組み立てられる。
遺伝子の情報をもとにタンパク質という部品を作り、もしそれが壊れた場合は分解して再利用するのだ。遺伝子というのは紫外線や時間が経つにつれて劣化してしまい機能しなくなる。
とされていた。。
伝子を制御する順番を変える技術『ゲノムチェンジング』を行えば細胞は数万年単位で生存できるという可能性があるという論文が発表された。
だがこの称揚医科大学の研究は、非合法な人体実験、不明慮な試薬、データといったものを含んでいたためデマだと処理され一時はテレビのニュースなどで話題になったが数か月で人々の記憶からはかき消されてしまった。
この研究というのは恐ろしく、まず実験人体に故意にがん化を引き起こすウイルス『ベクター』を注入する。
そうすると3日後には人体のほぼすべての細胞はがん化の一歩手前のインターハイ状態になる。その状態を保つには人肉を一日に100g以上摂取しなければならない。それを怠ると体内は崩れ48時間以内に死亡してしまう。だが、人肉を摂取さえすればタンパク質の合成と分解のサイクルが加速するため細胞は『年』を取らない。
低能な人間を優秀な人間が食うことで人類は永遠の進化を成し遂げることができるのである。
優秀な人間だけ生き残れば、強盗や殺人といった低能が引き起こす下らない人災を減らすことができ理想郷『ディストピア』が形成できる。
この『ディストピア計画』は称揚医科大学が発端となり日本中の大学だけでなく世界中の大学、研究機関へと1000年の歳月をかけて浸透されていくこととなる。
2000年***************************************************************
『こんな研究嫌だ、ぐべーーーー』
俺の目の前には巨大な砕肉機がある。
俺は毎日下らない実験のためだけにこのボタンを押さなければならない。
罪を犯したもの、家出などをして行方不明になった者たちの多くはここに集められて人体実験の材料になる。
「ここからだせーーーーー!!、なんだこの鉄の臭い!紅い、、、うえーー」
称揚医科大学のシンボルマークは血液の主な成分である紅いヘモグロビンがモチーフとされている。
ヘモグロビンは、酸素という資源を運ぶために、核という細胞であるためにはどうしても必要だったものを捨てた『物質』である。
このように、称揚医科大学は社会の階級にかかわらずどんな人間(細胞)にも平等に医療(酸素)を分配するために身を犠牲にして働く研究員(赤血球)という信条を持っている。だが実際はその逆で、弱者から血肉を奪い取りそれを富裕層に分配するというものであった。
この世界というのは実に皮肉で虚しく理不尽である。
私は、世界中の人間が平等に医療を受けられる環境を構築するためにこの大学に入ったというのに。
その研究の第一歩を私の友人が進めてしまうなんて!!!