表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ホラー

染み

作者: 鞠目

 後悔しても過去は変わらない。だから、私は後悔しないことにしている。


 私の寝室の壁には染みがある。


 初めは煙草を押し付けたような小さな点だった。しかし、それが日を追うことに少しずつ大きくなり、半年ほどで人の顔のような形になった。染みは血が染み込んだような色をしている。


 染みは私にしか見えないらしい。前に家にやってきた友達には見えていなかった。霊感があると常日頃から言っていた元カノにも見えていなかった。

 元カノと別れたことと壁の染みは関係ない。考え方が合わなかった、ただそれだけだ。


 染みを隠すためにポスターを貼り、その下に荷物を置いた。私はポスターのおかげでしばらく染みのことを忘れることができた。気休めとわかっていても、何故か救われた気がした。


「おい、顔色が悪いぞ。首に変な痣もできてるし、何かあったのか?」

 連休明けに出社した時、同僚に驚きながら言われた。鏡を見ると、薄く首回りに痣ができていた。痣は人の手のような形だった。


 帰宅後、壁に貼ったポスターを剥がすと、思っていた通り染みがかなり大きくなっていた。染みは人の顔どころか見覚えのあるシルエットになっていた。表情は読み取れないが、かなり恨めしそうな顔をしていることは間違いない。


 首の痣が痛んだ。


 私は過去を後悔しないようにしている。あの時のあの決断は間違っていないと思っている。でも、もっと上手くやればよかったとは思う。返り血なんて浴びなければよかった。慣れないことはするもんじゃない。

 染みから逃れたいとは思う。だが、自分が犯したことへの罪悪感か行動に移ることができないでいる。


 私の寝室には染みがある。

 染みは恨めしそうに私を見ている。


 どうすることもできないので、私はとりあえず染みに微笑みかけてみた。


 首の痣が一層痛くなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 少しずつ染みが追い詰めていく様子にゾクゾクしました。 主人公が悪いやつみたいなので、染みの方を応援してしまいました。
[良い点] 昔テレビで、壁の中に遺体を隠して埋めた事件を見たことがあります。情景がリアルに浮かび上がって怖かったです。染み、人の顔に見えるとのことですが、性別は女性かなぁと、痴情のもつれを勝手に想像し…
[良い点] やっちまったんですかっ!? たった、一行で、 震え上がらせるストーリー展開っっ!!! まさにっっ!!!! といった、 鞠目様ホラーストーリーでした…汗汗汗m(_ _)m こわい…と言われた…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ