表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/80

15


深い藍色をした魔術の矢が私の額に飛んできた。

しかし、それを防いだのは私の身体の周りを飛ぶ天球儀だった。

未実装のため、耐久力が設定されていない天球儀は、防具としても非常に優秀だ。

近接攻撃は防げないけれど、魔術などの遠隔攻撃は止めてくれる。



「こっち、向けえええ!!」



アリスさんが盾を構えながら大きな声で叫ぶ。

タウントスキルが発動されて、私とアリスさんのヘイトが瞬時に入れ替わる。


危なかった。

ヒーラーである私が、真っ先に落ちる所だった。

それだけは避けなきゃいけないのに。



「ユンちゃん、説教は後だ! DPS上げて、一気に削るぞ!」



槍を振るいながら、ディナダンさんが声をかけてくる。

お、怒られるようなことをした覚えはないのに。

先のことを考えると、再び身体が震えた。

目にも涙が浮かんでくる。

さっきとは違う、正真正銘の恐怖から来る震え。

良かれと思ってやったのに、なんてことだ。


でも、よく考えれば回避型のタンクはパーティ戦には向かないのかもしれない。

タンクである私が動けば、当然ボスエネミーも動いてしまう。

そうなれば、アタッカーは狙った所に攻撃を当てられなくなる。

今回はディナダンさんやカリーさんが上手く立ち回ってくれたけど、そうならないパーティの方が多いだろう。


自分の顔が暗く落ち込んでいくのが分かる。

人に迷惑をかけるのは嫌いだ。

ましてや、それが友達であればなおさら。


けど、くよくよしているわけにもいかない。

あくまでこのクエストは私の物で、みんなはそれを手伝ってくれてるのだから。

ペチペチと頬を叩いて気持ちを取り戻し、まっすぐバフォメットの影を見つめる。

バフォメットの影からは攻撃が届かない、安全な位置。

自分へのヘイトが薄れていくことを感じながら、コーチをそばへ呼びつけた。


コーチと使い魔契約を結んだ時から、ずっと試してみたいスキルがあった。

一日に一度しか使うことのできない、龍種が持つ潜在能力を一時的に開放するスキル。

奥の手とも言っても過言ではない、とっておきだ。



「コーチ、行くよ!」



グルグルと体の周りを泳ぎ出すコーチ。

辺りがやけに涼しく感じる。

静かで、それでいて激しい魔力の奔流。

それを巻き起こしているのがコーチだ。



「――"始祖覚醒"!!」



渦巻く魔力がコーチへと流れ込む。

バフォメットの影のヘイトが再び私に向くのを感じる。

大技だからだろう。

一瞬にしてアリスさんのヘイトを上回った。


しかし、すぐには襲ってこられない。

萎縮のバッドステータスが入っているからだ。

そして、それを与えたのは他でもない、コーチだ。


首に巻き付ける程度しかなかったコーチの身体は、私が二人重なっても届かないほど大きくなっていた。

額から生える二本の角。

口から伸びる長いひげ。

真っ白な体と青い瞳、そして体に纏うキラキラとした水の魔力。

水龍程の大きさは無いけれど、それでもコーチは十分大きい。



「―――!!!!」



コーチの咆哮が辺りに響く。

その声で我に返ったのか、バフォメットの影は負けじと声を上げていた。



「ブモオオオオオォォォォッ!!!!」



怪獣大戦争みたいな様子になっている。

けれど、その間もディナダンさん達の攻撃は止まない。

槍を突き刺し、斧を叩きつけ、盾で殴り。

どんどんと立ち上る、赤いダメージエフェクト。

私はゆっくりと細剣を引き抜き、バフォメットの影を指し示す。



「コーチ、アクアブレス!!」



コーチは身体に纏っていた水の魔力を口へと集約する。

頭の上に感じる膨大な魔力は、収束されていく。

まだだ、まだいける。

アリスさんが、ディナダンさんが、カリーさんがバフォメットの影を足止めしてくれている。

もっとだ、もっと。

もっともっと大きく育てろ。



「――ファイア!!」



合図とともに一気に吐き出された水の魔力。

初めて目の当たりにした龍のブレスは、まるで光線の様にも見えた。

的確にバフォメットの影の頭部を穿ち、そしてHPゲージを全損させる。


バフォメットの影はまるで煙の様に消えていく。

それとほぼ同時に、コーチの身体も光に包まれた。

晴れる頃には、いつものコーチが顔を出す。

すっかり疲れて息も荒くなっていたけれど、その顔は何処か誇らしげに見えた。


コーチ、ありがとう。

よく頑張ったね。


ブックマークや評価ボタンをお願いします!

モチベーションを高めるために、ぜひ助けて下さい……_(:3 」∠)_


Twitter:@asn_naro

(https://twitter.com/asn_naro)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ