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「ちびちゃん、俺の友達たちがぬこ様の所へ向かって合流した。あの女の人も、ぬこ様も、街の人たちも無事だ」
「ほ、本当ですか!」
カリーさんからの報告は朗報だった。
そっか、センセーもお姉さんも無事なのか。
それに街の人達も。
安心した。
これで攻撃なんてしちゃってたら、仲直りどころの騒ぎじゃなくなる。
「それから、街の周りにも大勢のプレイヤーが集まってくれてるみたいだ。危害を加える自称魔女信徒たちを抑えてくれてる」
「お、おぉ、凄い……! カリーさん、お友達いっぱいいるんですね……!」
う、羨ましくなんてないやいっ。
それに、私だって友達は居るもん。
ログインしてすぐなのに、事情も詳しく聞かずに来てくれたディナダンさん。
それに、何故か知らないけどいつの間にか来てくれたリッチーさん。
カリーさんだって、もう立派なお友達だし。
……えへへ。
いつの間にか、ソロで遊ぶことの方が少なくなってきたかもしれない。
「それで、こっからどーすんだ?」
ディナダンさんが装備を整えながら聞いてくる。
リッチーさんも同じく、何やらいつものボロボロのローブではなく格好良い奴に着替えていた。
パーティによって変えるのは定石なのだろうか。
私は一張羅しか持ってないけど。
「探索が得意なやつが、魔女信徒について探ってくれてます。きっともうすぐ根城が分かるはずです」
「じゃ、それまで待機っていうことだよねー。どうする? ボクたちも信徒狩りに参加する?」
「それもそうだな。連絡があったらすぐに向かえば――」
「やっと見つけた」
ディナダンさんとリッチーさん、それにカリーさんの話を切ったのは、女性の声だった。
その声に、私は聞き覚えがある。
初めて聞いたのはオスレフトを散歩している時。
キティと口喧嘩をして身を引いた、見とれるほど綺麗な女の人。
アリスさんだ。
不穏な空気が辺りに流れる。
アリスさんの声が平静なのが、余計に怖い。
「まさかあなたがちびちゃんだったなんて。ギルメンから聞いてびっくりしちゃったわ。こんな所で集まって、何してるの?」
「あ、アリスさん……その……」
「なーに? 私に何か用?」
ニコニコと笑いながら私に近寄るアリスさん。
カリーさんは私を前に出て庇おうとしてくれるが、それをディナダンさんが引き留めている。
リッチーさんに至っては、キラキラした目で私とアリスさんを交互に見ている。
く、くそう。
何を言わなきゃいけないかくらい、ちゃんとわかってるよ。
「――ご、ごめんなさいっ!!」
必死に頭を下げる。
私はアリスさんを疑っていたのだ。
悪い事をした時は、ちゃんと謝らなきゃいけない。
恐る恐る顔を上げてみると、アリスさんはきょとんとした顔で首を傾げている。
まるでこの状況が理解できないと言わんばかりに。
「……え? なんでちびちゃんが謝るの?」
「そ、その、アリスさんを疑っちゃったから……」
「それは仕方ないでしょ。チャンネルの雰囲気が完全にそうだったもの。それとも、ちびちゃんがあの噂を流したの?」
「ち、違う! そんな事しない!」
「だよねー。あの性悪猫から聞いた話だと、ちびちゃんはとってもいい子だもん」
ニコニコと笑うアリスさん。
性悪猫とは、キトゥンのことだろうか。
いつ連絡を取っていたんだろう。
ログインしてる時はずっと一緒だったし、そんな素振りは一切見せなかったのに。
「なら、ちびちゃんが謝ることじゃないよ。誤解されるようなことをしてた私も悪いしね」
「で、でも」
「もー、しつこいなぁ」
笑顔と一緒に、少しだけ棘がある言葉を投げてくるアリスさん。
けれど、アリスさんから本当の怒りは見えてこない。
どうしてだろう。
敵対してるとばかり、私は思ってたけど。
「じゃぁ、一つだけ言う事を聞いて! それでチャラにしましょ!」
交換条件。
確かに、それが妥当かもしれない。
例え何を要求されても、私は納得できる。
怖いのは怖いけど。
息をのみ、アリスさんの顔をジッと見つめる。
逃げちゃいけない。
酷い疑いをかけていたんだから。
そして、ついにアリスさんが口を開いた。
「このイベント、私にも一枚かませてよ」
「……は、はい?」
「だから、私もパーティに入れてって言ってるの! 一緒にクエスト頑張ろう?」
口から漏れる素っ頓狂な言葉。
周りでは、カリーさんは同じように驚いているけれど、ディナダンさんとリッチーさんがお腹を抱えて笑っている。
そのディナダンさんたちを見て、アリスさんはむぅっと頬を膨らませた。
「ちょっと、なんで笑うの! キミたちばっかりちびちゃんと遊んでズルいじゃない! 私にもちびちゃんと遊ばせろ!」
「ダメだなんて一言も言ってないでしょーよ。ほら、ユンちゃんもちゃっちゃとパーティ申請送ってやんな」
「え、で、でも」
「なに? 私とは遊びたくないっていうの?」
「そ、そんなことないですっ! でも、酷いことしちゃったし」
「だから、それを水に流すために遊ぼうって話をしてるんじゃない」
「う、うぐ……」
グイッと近くによるアリスさんの顔。
美人のアップは心臓に悪い。
その圧にのまれて、気付いたらパーティ申請を送っていた。
その事に気付いたアリスさんは、満足そうに大きく頷く。
「ふふふっ、よろしい。お姉さんの言うことは素直に聞いておくものよ」
アリスさんは両手を私に伸ばし、ギュムッと抱きしめてくる。
頬に感じる、鎧の冷たい感覚。
そして、フワリと香る花の様な匂い。
いまだに理解は追いつかない。
けど、アリスさんはどうやら怒ってはいない様だ。
それならば、良しとするべきだろう。
……怒られなくて、本当に良かった。
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