7
そこからディナダンさんは有無も言わさず次々とアイテムを送ってくる。
私の低筋力でも持てて高い器用度を活かせる細剣や、初心者の装備よりも質の良い装備、さらには器用度の上がる指輪まで渡してくれた。
……これ、普通にお金貰うよりも高い物を貰ってる気がする。
「一緒にパーティを組む以上、それなりに戦えて貰わないとだからね。圧迫してたインベントリを整理できて、俺も嬉しいよ」
こんな事を言っているから、返すにも返しづらい。
道中もディナダンさんがターゲットを一手に引き受けてくれて、その隙に私がちまちまと攻撃をする。
鑑定も沢山使って、薬草が有れば採集する時間を取って貰った。
おかげさまで、片手剣や鑑定、採集のレベルが大分上がった。
ディナダンさんのイケメン力が高過ぎて、後ろから刺されないかだけが心配だ。
-------------------
名前:ユン
種族:幽世の少女
性別:女性
レベル:4
VIT(生命力):7
MND(精神力):17(+3)
STR(筋力):6
INT (知力):16(+15)
AGI (敏捷度):15(+6)
DEX(器用度):21(+31)
LUC(幸運度):18
職業:薬師
スキル:片手剣 Lv.7、調剤 Lv.4、採集 Lv.4、鑑定 LV.9
スキルポイント:1
所持金:20G
--------------------
右手:細剣+3
左手:
頭:
体:チュニック+3
腰:
脚:ショートパンツ+3
足:ショートブーツ+3
アクセサリー
ボロ布のケープ、皮の手袋+3、職人の指輪
--------------------
装備の分も含めると、随分と強くなってしまったものだ。
それでもディナダンさん曰く、レベルの上がり方は緩やからしい。
パーティを組んでいるディナダンさんに経験値を吸われてしまってるからだろう。
格差パーティである以上、それは仕方がない。
「どう?少しは育った?」
近くの大きな石に座ったディナダンさんが声をかけてくる。
この人は本当に、何をしてても絵になるな。
「は、はい。Lv.4まで育ちました」
「ごめんね、本当はもう少し上げられたら良かったんだけど」
「いえ、足を引っ張るわけにはいかないですので」
道中でディナダンさんから事情を聴いた。
どうやら初期地点には初心者プレイヤーが戦闘に慣れる為のフィールドが有るらしい。
けどネザーについたばかりのディナダンさんは、そのフィールドが分からないとの事だ。
結果、私達が訪れたのはディナダンさんが一人で戦える程度のフィールド。
とは言え、初心者にとってはかなり強い相手らしい。
それこそ、私なんかでは一発でHPが消し飛ぶ程には。
ここまでレベルを引き上げて貰っただけでありがたい物だ。
そもそも、私はきっとモンスターと戦う事が少ないだろうし。
「それにしても、やっぱり新しいフィールドはワクワクするなぁ。この遺跡みたいなダンジョンも見つけられるしね」
今しがた見つけたばかりのダンジョンを見つめるディナダンさん。
鑑定で調べてみると、そのダンジョンがシャルトスの廃神殿という名前だと分かった。
その入り口を見つめるディナダンさんの顔は、まるで少年の様だ。
私が新しいゲームや本を前にした時も、きっと今のディナダンさんの様な顔をしているに違いない。
そう考えると、なんだか少しだけ申し訳ない気持ちになってくる。
私がここに居なければ、きっとディナダンさんはこの遺跡に入っていくに決まっているから。
・・・・それなら。
「ディ、ディナダンさん。良かったら、二人でこのダンジョンに挑戦してみませんか……?」
そう口にする私を、ディナダンさんは目を見開いて見つめる。
そりゃそうだろう。
私はゲームを始めたばかりの初心者で、目の前に有るのは難しいフィールドにある未開のダンジョンなのだから。
挑戦する事自体が烏滸がましい。
けれど、初心者だからこその強みもある。
「いや、流石に厳しいと思うよ?きっと俺も、ユンちゃんを護りながら探索は出来ないと思うし」
「言った通り私はこのゲームを始めたばかりなんです。だから、今はまだデスペナも無いんです」
キャラクターが倒れた時に発生するデスペナルティ。
アルカナオンラインでは稼いだ経験値が減少してしまうけれど、始めたばかりの初心者プレイヤーは救済のために暫くの間はそのペナルティを免除される。
つまり、今の私はやられる事になんのデメリットも発生しない。
「まぁ、ついて行っても薬草を集めてポーションを作る位しか出来ないんですけど」
「……いや、確かにそれはありかもしれない。俺はいつもソロでやってるから、割と一人でも戦える。そこにユンちゃんのポーションが有れば、いつもよりはずっと楽かもしれない」
ディナダンさんは真面目な顔でそう言うと、インベントリを開く。
そこから取り出したのは大量の薬草といくつかの素材アイテム。
それを私に差し出すと、恥ずかしそうに笑いながら口を開いた。
「いやぁ、素材アイテムっていつか使うかもって思うと処分出来ないよね」
ディナダンさんは物が捨てられない人。
私、覚えた。
「とりあえず、これでポーションを作って貰っても良い?」
「お任せあれっ」
そこから黙々とポーションを作る作業に入る。
出来上がった大量のポーションは、調剤のレベルが上がるにつれてクオリティも上がっていった。
最高でDの物まで出来る様になったけれど、多分レベルが上がった以外の要素も有りそうだ。
ディナダンさんの渡してくれた薬草は、クオリティが高い物も多かったから。
そのポーションの大半をディナダンさんに渡して、準備完了。
いくつか私が持っているのは、手が離せない時に私がディナダンさんを回復出来る様にだ。
殴られれば一発で死ぬ私に、回復なんて必要無いしね。
「さて、それじゃー行きますか」
ディナダンさんは待っている間に固まってしまった身体をほぐしながら、遺跡の中へと足を踏み入れる。
置いて行かれない様に気を付けなければ。
勿論、敵の不意打ちにも注意しながら。
もしよろしければ、ブックマークや評価ボタンをお願いします!
モチベーションを高めるために、ぜひ助けて下さい……_(:3 」∠)_