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6


逃げても逃げても街のNPCたちは居なくならない。

行く先々で私たちを出迎えて、思い思いの行動をとってくる。

ある人はさっきの様に石を投げ、ある人は武器を手に取って襲ってくる。

その度に、カリーさんは傷ついた。

すべての攻撃から私を護ってくれている。



「か、カリーさん、もう――」


「タンクなめんなっ……! まだまだいける!」



止める私の言葉を聞かず、カリーさんは私を庇い続けた。

走りながらポーションを使って回復はするからHPは問題ない。

けど、心はどうだろう。

私は一方的に殴られたことが無い。

だからこそ、カリーさんの気持ちが分からない。


そんな私たちを助けてくれたのは、意外な人だった。

ネザーにある図書館の前に差し掛かった時、窓からある人物と目が合う。

図書館の受付に居る、NPCのお姉さん。

彼女は私と目が合うなり、そっと手招きをしてくれた。



「か、カリーさん、こっち!」



気付けば私はカリーさんの手を取って、図書館へと走っていた。

罠かもしれないとも考えた。

けど、街のどこへ行っても襲われる以上、罠だろうが何だろうが関係ない。

扉の前に有る階段を駆け上がり、図書館の中へと飛び込む。

それとほぼ同時に、お姉さんが扉に鍵をかけてくれた。



「大丈夫ですか?」



ネザーに来てから、ようやく普通に話せた気がする。

お姉さんの目からは他の住人とは違い、敵意が全く感じられない。



「街のみんなが色めき立ってます。大人数で押し寄せられれば、ここも長くはもたないでしょう」


「な、何があったんですか?」


「ネザーの周りに、魔女の狂信者を名乗る者が現れました。彼らは魔女の指示だと言いながら、道行く人々を襲っています」



思い出される本の内容。

シャルトスを良く思わない男が、シャルトスを貶めるために動いていた。

街の人達は騙されたのだろう。

そして、そこに私が来てしまった。

シャルトスの生まれ変わりともいえる、知恵の魔女が。



「で、でも、あなたは……」



お姉さんだって、その話を聞いているはず。

襲われたっておかしくはない。

身構えながらそう口にする私を、お姉さんはいつもの淡々とした雰囲気で答えてくれる。



「あなたとは何度もここでお会いしています。あなたがそんな事をするとは思えませんから」


「そうか、好感度……!」



NPCにはプレイヤーに対する好感度が、目に見えないパラメーターとして用意されてる事をカリーさんが教えてくれる。

確かに、私がネザーに居る間はここか廃墟にしか居なかった。

顔を合わせるたびに挨拶をしてくれるお姉さんには、いつも挨拶を返していた。

それが結果的に、好感度を上げることに繋がっていたようだ。


助かった。

ようやく肩の力が抜ける。

けれど、お姉さんは首を振る。



「この通路の先に裏口があります。そこから、どうか街の外へ」


「お、お姉さんは?」


「私は大丈夫です。いくら何でも、同じ住人を襲ったりはしないでしょう」


「でも――」


「では、一つだけ約束を」



私の頭を優しく撫でるお姉さん。

覗き込むように腰を曲げて、お姉さんは続く言葉を口にした。



「この騒動が治まったら、また遊びに来てください。あなたと会えるのを、また楽しみにしています」



お姉さんはいつもと何も変わらない。

いつも通り淡々と仕事をする、仕事の出来る女の人の様に見える。

けど、その顔が少し優しく見えたのは何故だろう。


どうしてこんなに泣きそうなのだろう。

カリーさんに手を引かれながら、私は裏口へと急ぐ。

耳元でコーチが優しく鳴いている。

励ましてくれているのだろう。

そして、センセーは――



「……せ、センセー?」



私たちの後ろを追いかけてきてはいなかった。

センセーが居るのは走る通路のずっと後ろ。

お姉さんのすぐ隣で、面倒くさそうにパタパタと尻尾を振っている。

小さくアゴが持ち上がるのが見える。

そして――



『――あたしが、なんとかしたげるから、いって』



私によく似た声が、頭の中でそう聞こえる。

舌足らずで、不愛想で、それでも自信に満ち溢れた強い声。

涙が頬を伝い、古ぼけた絨毯へと落ちた。



「――センセー!! お姉さんを護って!!」



私は大きな声でセンセーに叫ぶけれど、さっきの声は聞こえない。

代わりにセンセーの口元が持ち上がるのがハッキリ見えた。


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Twitter:@asn_naro

(https://twitter.com/asn_naro)

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― 新着の感想 ―
[一言] これ特殊クエスト踏んだ可能性があるな❗ そして、図書館のお姉さんは味方でよかった❗ あと、センセーカッコいいぞ❗
[一言] んー、正直ここまで酷いとGMコールを誰かがしそう、またはちびちゃんにさせるように勧めると思うんだが そしてGMコールされたら停止か垢バンかのペナルティいくよね 一個人を不当に蔑める行動をとっ…
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