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「あれ、もう帰って来たんですか?」
扉から顔を覗かせた私に、キティは真っ先に気付いた。
きっとキティも退屈で、ずっとお客さんを待っていたのだろう。
ふふふ、その願いを私がかなえてあげよう。
私、偉い。
「お、お客さん、連れて来たの。」
「どうも、こんにちはー」
アリスさんが明るい声色であいさつしながら、後ろからひょっこりと顔を出した。
その時のキティの顔を、私は一生忘れないだろう。
キティの顔はすぐさま笑顔に変わった。
けど、目だけは笑っていない。
それに、鈍感な私でも感じる敵意。
間に挟まれて、私の動きがカチンコチンに固まる。
「おや、いらっしゃいませ。何をしに来られたんですか?」
「ふふー、賢いあなたなら聞かなくても分かるでしょー?」
「さて、どうですかね。性悪の考えてる事は、私には理解できかねます」
一触即発。
キティとアリスさんは仲が悪いのだろうか。
どうでも良いけれど、私をはさんでやるのはやめて欲しい。
「またまた、五十歩百歩のくせに。あなたじゃ話にならないのだって分かるでしょ? ちびちゃんはどこ?」
えっ。
「私はちびちゃんに会いに来たの。どこに居るか教えてくれない? お店の奥?」
「え、えっと、わた――」
「特定のプレイヤーへ固執するのは良いことだとは言いかねます。お引き取り願えませんか?」
私の言葉を遮るように、キティが口を開く。
顔からは笑顔すら消えている。
怖い。
「もー、そんなに怖い顔しないでよ。別に固執なんてしてないし、ただ会いに来てみただけじゃない。分かった、今日の所は出直すよ」
アリスさんはニコニコと笑いながら手を振って踵を返した。
残っているのは気まずい静寂。
お客さんに対してはいつもニコニコとしているキティが、珍しい。
「ど、どうしたの? あの人、何か問題ある人だったの?」
「……ここまで来たら、話して置いた方が良さそうですね。あのプレイヤーはアリス。中規模ギルド"アリスの国"のギルドマスターで、姫騎士なんて通り名で呼ばれています。そして、ひそかにあなたへ対抗心を燃やしているプレイヤーです」
「た、対抗心? なんで私に?」
「チャンネルが原因でしょうね。今までアイドルプレイヤーと言えばあの性悪女一色と言っても過言ではありませんでした。しかし、あなたが台頭してきた」
あ、アイドルプレイヤーって……。
確かに一時期騒がせはしたけれど、今はシヴァさんやキティのお陰でそんなにワイワイしてないし。
「幸い、あなたの情報を一切調べずに来たみたいですね。CMでも流れてるというのに、顔を一切知らずここまでたどり着くのは流石と言わざるを得ません」
「た、たしかに、凄い人だね」
何の情報も無く、アリスさんはこのお店の場所を突き止めた。
さすがはギルドマスターで、アイドルプレイヤー。
独自の情報収集ルートがあるのかもしれない。
「はい、すっごくおバカな人です。調べる事を放棄しておいて、何が"ちびちゃんに会わせろ"ですか。どうせCMも、自分以外のプレイヤーが注目されるのが嫌で飛ばしてるんでしょうね」
そ、そっちだったかー……!
「とはいえ、厄介なことになりそうですね……。ユン、しばらくは注意してくださいね。すっごくおバカなアリスでも、影響力だけはトップクラスですから」
「そんな、大げさな……」
「前みたいに追い掛け回されても知りませんよ」
「……気を付けます」
「よろしい」
機嫌の悪いキティは、センセーよりもずっと怖い……。
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128名前:名無しの魔女好き
今日も今日とて低まっていくか。
129名前:名無しの魔女好き
触れて良いのか分からんけど、最近のちびちゃん首に蛇巻いてるよな。
新しい使い魔?
130名前:名無しの魔女好き
それは既に他のチャンネルで公開情報になってる。
リッチーさんやデスちゃんが言ってたけど、水龍らしいよ。
ちびちゃんの種族でしか発生しないレアクエストの達成報酬らしい。
名前はコーチ。
131名前:名無しの魔女好き
え、マジか。
ちびちゃん大丈夫なの?
また追い回されたりせん?
132名前:名無しの魔女好き
話した通りちびちゃんの種族でしか発生しないから、攻略組はノータッチらしい。
サモナーやテイマーのチャンネルで少し荒れそうになってたけど、早いうちに鎮静化されてた。
どうでも良いけど、センセーの次はコーチか。
ちびちゃんのネーミングセンスって割とかいめt……おっと、誰か来たようだ。
133名前:名無しの魔女好き
草。
鎮静化したっていうのも、どうせお前らの中の誰かだろ?
134名前:名無しの魔女好き
バレたか。
リッチーさんはそっちのチャンネルでも発言力があるから、上手い具合に乗っかってくれて助かったよ。
135名前:名無しの魔女好き
リッチーさんって、頭おかしいフリしてかなり有能だよな。
136名前:名無しの魔女好き
いや、有能なのは間違いないけど、ちゃんと頭もおかしいぞ。
この間、沸かした鍋に入って自分の出汁を取ろうとしてたぞ。
137名前:名無しの魔女好き
えぇ……。
138名前:名無しの魔女好き
需要、どこ……。
139名前:名無しの魔女好き
おいお前ら大変だ。
姫騎士のチャンネルでちびちゃんの話題が持ち上がってる。
140名前:名無しの魔女好き
どういうことだ。
141名前:名無しの魔女好き
姫騎士はCMの時からちびちゃんを良く思ってなかったけど、脅威にはならないだろうと放置してた。
けど、水龍と契約したことをきっかけに動き出したらしい。
オスレフトで姫騎士とちびちゃんが一緒に歩いてるのを見たって話も出てる。
142名前:名無しの魔女好き
姫騎士のチャンネルって、ギルドメンバーで固められた身内チャンネルだろ?
入り込めたのか?
143名前:名無しの魔女好き
なんとか。
だけど多分、この件で俺は吊るされる。
お前ら、後は頼んだ。
144名前:名無しの魔女好き
無茶しやがって……。
145名前:名無しの魔女好き
だ、だけどどうする?
俺たちは見守るだけで、何かしようとしたらちびちゃん怖がるよな?
146名前:名無しの魔女好き
あ、姐さんたちがいるし。
俺らは今まで通り、様子を見よう。
147名前:名無しの魔女好き
みんなで動いても、また混乱するだけだしな。
148名前:名無しの魔女好き
低まって行こう。
それが俺らに出来る最大の協力だ。
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