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2020.06.02 1話目
私のステータスに、新しいユニークスキルが登録された。
"水龍の加護"。
水の魔術の効果を増幅させるとともに、水龍を進化の系譜に持つモンスターから友好的な態度をとられるというものだ。
それは勿論、水龍の稚児も同じこと。
水龍の託してくれた稚児は、私の使い魔として契約された。
海の様に綺麗な色をした、小さな水龍。
名前はレヴィア、通称"コーチ"。
センセーもコーチを既に仲間だと認めているらしく、誇らしげに自分をアピールしている。
"いいか、私の方が上だからな"。
そう言っているのが何となくわかる。
コーチもコーチで、センセーの事を尊重してくれているのだろう、センセーの顔よりも上に頭を持ってこない様に気を付けているのが微笑ましい。
手早くコーチの名付けを済ませた私は、急いでリッチーさん達の所へ戻った。
神殿の時とは違って転移の魔法陣は往復で使えたから、そこまで苦労する事は無かった。
しかし、戻った先で見たのは地獄絵図だった。
そこら中に散らばる骸骨たち。
その中心で倒れる悪鬼の亡骸と、満身創痍で大の字になるデミグラスさん。
そして悪鬼の亡骸の上で踊り狂うリッチーさんだ。
「おやおや? ちびちゃん、思ったよりも早かったじゃない。ま、ボクたちの方が早かったみたいだけどーーー?」
あ、煽りよる。
これでも二人の事を思って、急いで駆けつけて来たのに。
むぅっと頬を膨らます私を見て、流石のリッチーさんも少しだけ腰が引けたらしい。
悪鬼の上からようやく降りて、倒れるデミグラスさんの影に隠れた。
いや、隠れられてはいないんだけど。
「……あれ、ちびちゃんなんか増えてね?」
デミグラスさんがようやく身体を起こして、コーチを見ながらそういった。
リッチーさんも、興味深そうにコーチを見つめている。
「あ、は、はい。水龍とお話をして、子供を頼むって」
「おいおい、龍種のテイムって出来たのか? いや、そりゃ出来るだろうけど」
「少なくとも、ボクが知ってる中ではちびちゃんが初だねー! やるじゃん!」
て、照れるからよせやい。
コーチを使い魔に出来たのは嬉しいけれど、この間と同じことが起きないかが心配だ。
また隠れなきゃいけないなんて、溜まったもんじゃない。
「ちびちゃんの考えてる事、なんとなーくわかったぞー?」
顎に指を当ててニタニタと笑うリッチーさん。
それを真似する様に、デミグラスさんも同じ格好で私を見てくる。
この人たち、本当に仲が良いな。
「ちびちゃんさえよければ、ボクたちがこの情報広めておこうかー?」
「えっ」
「多分これ、ちびちゃんの種族が関係してるイベントでしょ? きっと普通にプレイしてても同じようには出来ないから、この間のポーションみたいにはならないぜ?」
「大体、ちびちゃんは今やチャンネルでも人気者の部類だからな。困らせようって連中も少ないだろうよ」
どういうことだってばよ……。
でも、リッチーさん達が言うことが本当ならすっごく助かる。
普通にプレイしてても悪目立ちしないのであれば、この間みたいに隠れる必要はない訳だし。
「俺はまだしも、リッチーはチャンネルでも悪目立ちしてるからな。そんな情報、すぐにでも広まるだろ」
「任せて任せて、今回楽しませて貰ったお礼になんでもしちゃう。まぁその為には、色々と聞かせて貰わなきゃいけないけどね」
「……今なんでもって言ったな?」
「やめて!! ボクに乱暴するつもりでしょ!!」
骸骨のエッチな漫画って、需要あるのかな。
ちょっとだけ読んでみたい気もする。
そこから私達はネザーの図書館に戻って、色々な事を話した。
幽世の少女のこと、シャルトスのこと、ユニークスキルやコーチのことも。
うすうす感づいては居たけれど、私の進化はやっぱり普通ではないらしい。
リッチーさんも普通じゃない進化を狙って色々な所へ行っているみたいだけど、それでも見つからない程レアな物の様だ。
これでユニークスキルやレア種族に関しての情報はみんなに流れてしまうけれど、別に私も独り占めしたいわけじゃない。
むしろ知って貰った方が、みんながもっと楽しめるかもしれない。
もっと早くに伝えればよかっただろうか。
私から情報を聞いたお返しということで、リッチーさん達からも色々な事を教えて貰った。
大海の都市で頻発している、空飛ぶ幽霊船騒ぎとか、砂塵の都市ではそこを拠点に活動している鍛冶師が刀の製作に成功したとか。
チャンネルをあまり見ない私では知り得ない情報ばかりだった。
「何なら、今後もこうやって色々情報交換するか?」
デミグラスさんのその言葉を皮切りに、情報交換の機会まで手にする事が出来た。
更に言えば、フレンド登録までして貰えたのだ。
「また難しそうなダンジョンあったら誘ってよ? ボクたちはそれしか興味無いんだからさー!」
「お前と一緒にすんな」
「え、デスちゃん他にも趣味あるの?」
「……誘えよ!」
「ホラ、やっぱり!」
本当に、二人とも仲が良い。
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