その少女、成長中につき。
『――アルカナオンライン、絶賛サービス配信中』
完成したアルカナオンラインのCMは、凄くクオリティの高い物だった。
綺麗に編集されたイベントの様子にストーリー仕立ての映像が入った、RPG好きのゲーマーにとっては最高のできかもしれない。
かく言う私も、がらにもなく興奮してしまった。
CMで使われていたプレイヤーの映像は3つ。
ディナダンさんが槍を投げて紅組軍に大打撃を与えたシーン。
どこでどうやって撮ってたのか分からないけれど、まるで伝説の戦士みたいなカットで格好良かった。
次に、リッチーさんが沢山のアンデッドを召喚してシヴァさんと戦うシーン。
リッチーさんはスケルトンだし、いかにもアンデッド族の王様という雰囲気が凄くゾクゾクした。
そして最後に、氷の滑り台を滑る私の泣き顔のドアップだ。
悪意を感じる。
なんで。
私だって格好良かったシーンがいっぱいあっただろ。
セエレさんと戦ってた所とか。
CMがテレビで放送されたのは勿論なのだけれど、動画サイトの広告としても放送されている。
その結果、色々な層の人が見てくれている。
よりたくさんの人が私の情けない泣き顔をドアップで見ているのだ。
羞恥プレイにも程がある。
「結芽、そろそろ出なくて大丈夫?」
いつもよりのんびり朝のしたくをしていたせいか、心配したお母さんが声をかけてくれる。
もうそんな時間か。
今日も今日とてつまらない学校に行かなきゃいけない。
毎日アルカナだけして生きていけたらいいのに。
なんて、ダメ人間な考え方はしちゃいけないね。
がんばるぞ、おーっ。
スクールカーストという言葉がある。
教室の中という狭い空間の中で、子供たちが無意識の内に作り上げる物。
声の大きい人ほど力を持って、目立たない人はその受け皿になるしかない。
私は何処に位置するかと言ったら、間違いなく下位だ。
人と話すのが苦手で、運動が出来る訳でもなく、見た目も地味。
面白いくらい、カースト上位の人たちとは正反対。
カースト上位の人たちは自然と集まり、群れを作る。
でも、私達はそれが出来ない。
班行動の時は繋がり合うことも多いけれど、それだけだ。
別に友達になるわけではない。
だからこそ、私達はカースト下位なのだ。
例えば、そんな生徒がいきなり目立つことをしたらどうなるだろう。
クラスで上位の人たちを真似して騒いだり、突然目立つ行動をしたらどうなるだろう。
答えは明白。
スクールカーストにも居られなくなる。
上位の人たちからは疎まれて、下位の人たちからは近寄られない。
子供は大人と違って残酷だ。
周りの目なんて気にせず、自分たちがふるまいたい様にふるまう。
嫌いなものは嫌いと言うし、それを周りに強要したがる。
断れない人たちは、それに従うしかない。
教室の扉を開ける。
ざわざわと騒いでいたみんなが一斉に私を見る。
その目は様々な色をしていたが、一番強かったのは好奇の色だ。
最初は理解できなかった。
どうしてそうなっているのかも、わからなかった。
けれど、いつもと違うことは分かった。
普段は居ても居なくても変わらない扱いをされていたのに、突然注目を浴び始めた。
戸惑っていると、女の子が一人近づいてくる。
北条 三和さん。
クラスでも人気者の、いわゆるカースト上位の女の子。
キラキラとした見た目と明るい性格。
わがままで、我が強くて、いつも周りに女の子たちを従えている。
「ねぇ、これって山口さんだよね?」
ニヤニヤと笑う口元がいやらしい。
明らかに、私を馬鹿にしている。
そんな彼女が見せてきたのは、一枚のスクリーンショットだ。
アルカナオンラインの動画の最後で、氷の滑り台を滑っている私の泣き顔のドアップ。
ほんの数秒しか流れないそれを、北条さんはわざわざ切り取って保存しているのだ。
その日から、私の学校生活がガラリと変わった。
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