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追いついたキトゥンさんは、川の傍にある花を見つめていた。

白くてきれいなその花は、何の比喩でもなく木漏れ日を浴びてうっすらと光っている。

そして、その花弁に付いている物こそ、さっきシャルトスの瞳が教えてくれた妖精の粉だった。



「ユンさん、見て下さい! こんなアイテムは初めて見ました!」



無邪気な笑顔で嬉しそうに私を見るキトゥンさん。

な、なんだよう。

怒りづらいじゃないか。



「妖精の粉は、妖精によって祝福された花粉……ですか。ということは、この近くに妖精が居るんでしょうか。この花も気になります。ユンさんはどう思いますか?」


「ぱ、パーティを組んでる時に、勝手な行動をしちゃいけませんっ」



い、言ってやったぞ。

けれどキトゥンさんは素知らぬ顔。

気にする素振りなんて全く見せず、慎重に妖精の粉と白い花を採集していた。



「勝手なのはどっちですか?強引に連れて来ておいて」


「そ、そうだけど、でも……」


「ふふんっ、口で私に勝つには百年早いです。それよりユンさん、薬師だったら採集はありますよね? このお花を摘んでいきましょう」


「だ、だから勝手な行動は――」


「もしかしたら、薬の素材になるかもしれません」



私の注意を食い気味に封じるキトゥンさん。

その言葉に心が揺れる。


"フェアリーロータス"。


シャルトスの瞳が教えてくれた、その花の情報だ。

レアリティも高く、もしもこれが薬として使えるのであれば確かに欲しい。

魔女の知恵で検索する事も考えたけれど、こういうスキルは他の人に見られたらいけないと学んだ。

キトゥンさんなら良いとも思ったけれど。



「おい、キティ! 何やってるんだ! おいて行っちまうぞ!」



しびれを切らしたディナダンさんが、改めて声をかけてくる。

そんなディナダンさんにも、キトゥンさんはお構いなしだ。

眉を顰めて額に青筋を浮かべながら、ほんの少しだけ声を荒げる。



「誰がキティですか! 私とユンさんは、しばらくここで素材の採集をしています! 後で迎えに来てください!」



え、わ、私も……?

慌ててディナダンさんの方を向くと、何やら満足そうに笑っているように見えた。

シヴァさんも呆れてはいるけれど、怒ってはいなさそう。



「さぁ、ユンさん! 要領よく集めて行きましょう! 私の夢の為に!」



……こんなにキラキラした表情で言われたら断れない。

足元でセンセーが、大きなため息を吐き出した。






その辺りのフェアリーロータスを一部だけ採集したけれど、辺りに妖精らしい者の姿は見えなかった。

ごく稀にモンスターがフラフラと寄って来たけれど、センセーがそれを追い払ってくれる。

センセーが居てくれるから、私達は安心して採集に集中できるのだ。

張り切って続けようとした時、キトゥンさんがその手を止めた。



「これくらいにしておきましょうか」


「え、まだこんなにあるよ?」



辺りにはまだフェアリーロータスの花が咲いている。

むしろ採集した物は、全体の3割にも満たないだろう。

同じように手を止めて首を傾げる私に、キトゥンさんは人差し指を立てて得意げに話してくれた。



「妖精の粉が、妖精が祝福した花粉の事とは先ほど話しましたね。それに加えて、この花の名前はフェアリーロータス。先ほど鑑定をしてみた所、妖精が好む花らしいんです」


「珍しい花だもんね。でも、だったらたくさん持って帰った方が良いんじゃないの?」


「あなたは頭が良さそうなくせに考えなしですね」



雑談をしながら採集をしていたせいか、キトゥンさんは少し前から私に対して遠慮がなくなってきた。

少しだけ怖い反面、それ以上に嬉しい。

そんなキトゥンさんは、私から目線を外しながら、少しだけ顔を赤くして口を開く。



「ぜ、全部持って行ったら妖精が困るじゃないですか。私達はあくまで一部を与えてもらうんです。全部持って行くなんて、そんな礼儀知らずな事をしてはいけません」



あぁ、やっぱりそうだ。

キトゥンさんは頑固で、理屈屋で、一見怖い人に見える。

けど、本当はすごく優しい人なんだ。


私を助けに来てくれたこともそう。

売り上げのこともそう。

口では色々と理由を付けるけれど、自分のことと同じくらい私のことも考えて提案してくれている。


思わずクスリと笑ってしまう。

その様子が面白くなかったのか、キトゥンさんはムッと頬を膨らませながら私を見た。



「……何ですか」


「い、いや、なにも……」


「絶対に嘘です! ユンさんが何を考えていたかなんて、手に取るようにわかりますよ! どうせ私を"幼稚だ"と笑ったんでしょう!」


「そ、そんな事、思ってないよ!」


「信用できません! 謝ってください!」


そんな言い合いをしていると、足元のセンセーが急に立ち上がった。

センセーは基本、移動するとき以外は座っているか寝ているかのどちらかだ。

移動も、私から声をかけないとしようとしない。

珍しい。

何かあるのだろうか。

辺りを警戒していた時、センセーからとある呪文が掛けられる。


"アクアブリーズ"。


水の中でも呼吸ができるようになる呪文。

そして、ようやくその音に気が付いて、私は慌ててキトゥンさんにも同じ呪文をかける。



「ちょっと、聞いていますか! 私は本当におこ――」


「キトゥンさん!!」



思わず押し倒す様に、キトゥンさんに飛び掛かる。

遠くから近づいてくる大きな音と地響き。

センセーはいつの間にか私の服の中に入ってくれていた。


センセーをつぶさない様に気を付けながら、キトゥンさんの身体を抱きしめた時、それが私達の身体を飲み込んだ。


―――鉄砲水だ。


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