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2020.05.22 2話目
キトゥンさんが続けて口にしたのは、シヴァさんをここに呼ばないかという提案だった。
その方が私がキトゥンさんを信用できるだろうから、と。
そうしてわざわざネザーからシヴァさんを呼びつけ、何故だかディナダンさんも一緒に来て、合計5人での話し合いが始まった。
シヴァさん、ディナダンさん、それにトゥアレさん。
その3人を前にしても、キトゥンさんは物怖じせずに話し出す。
「現状に関して私の意見を言いますと、他に方法が無かったとはいえ、この選択はベストではない。いずれユンさんが外に出た時に混乱が起きるでしょう」
シヴァさんもそれを感じていたのだろう、眉間にしわを寄せてはいるが、黙ってキトゥンさんの言葉を聞いている。
ディナダンさんも同じだ。
違いがあるとすれば、シヴァさんの様に怒っては居ないという事くらい。
「そもそも、なぜユンさんが皆に探されているのでしょうか」
「変なファンが付いてるんだろ? シヴァから聞いたよ」
ディナダンさんが手を上げながら答える。
それにキトゥンさんは首を左右に振った。
「その件に関しては、既にとある方が動いてくれています。チャンネルでも、ユンさんを追い回す妙なファンは排斥される形になっていて、むしろ下手に手出しが出せない状況です。……まぁ、誰とは言いませんが」
ニコニコと微笑みながら、キトゥンさんはシヴァさんを見つめていた。
シヴァさんは顔を少し赤らめ、そっぽを向いている。
……え、シヴァさんが言ってたやらなきゃいけない事って、まさか。
やだ、イケメン。
「けれど、もう一つの問題があります。それは、ユンさんがイベントで使用したあのポーションです。回復力が従来のそれとはくらべものにもならないあのポーションを、トップランカーたちは求めています」
「あー、分かる。俺なんかもあのポーションがあればって思う事が多々あるしな」
「そうです。要するに、どこへ行っても手に入らないからこそユンさんが探されてしまうんです」
「―――なるほど、そうか」
シヴァさんがハッと何かに気付いたようにキトゥンさんを見る。
少し遅れて、トゥアレさんも気付いたようだ。
ディナダンさんは全く何がなんだか分かっていない様子。
良かった、私だけじゃなかった。
ディナダンさんと私は目を合わせて、同時に首を傾げる。
「ふふっ、その通りです。供給が無いから探されるのであれば、供給する場所を与えて上げれば良いじゃありませんか。あなた達の前には、それが可能な商人が居るのですから」
か細い胸をそらしながら、自信満々にキトゥンさんはそう言った。
つまり、私が探されている原因は私の作るポーションを皆が欲しがってるからで、それをキトゥンさんに売って貰えば良いと。
元々キトゥンさんは人に囲まれるのが苦ではない。
それに、お金も入って都合が良い。
一方私はポーションさえキトゥンさんに渡してしまえば、自由に外を歩き回れる。
好きなだけ素材を回収したり、図書館に行ったり、皆と遊びに行くことが出来る。
「悪い話ではないでしょう? 売り上げは5:5……と言いたい所ですが、7:3にしておきましょうか。勿論、ユンさんが7で、私が3です」
「まっ、待って、ください……!」
急に声を出し他せいで、少し大きくなってしまった。
しりすぼみになりながら、乗り出してしまった身体を背もたれに預け直す。
こういう会議みたいな時に発言するのは気が引ける。
けれど、此処は譲れない。
「う、売り上げは、半分で良いです」
「ゆ、ユンちゃん!?」
驚きの声を上げるトゥアレさん。
トゥアレさんも服を売っているから分かるのだろう。
どれだけ売っても、どれだけ良い物を作っても、半分は誰かに取られてしまうというつらさを。
「……正気ですか? あなたの手元に入るお金が減るんですよ?」
「それでも、良いです。キトゥンさんにはその分迷惑をかけちゃうから」
キトゥンさんの目が若干冷たい物になっているのが分かる。
私に呆れているのだ。
まるで世間を知らない馬鹿者を見るかのように。
怖くて思わず目をそらしてしまう。
なんでこの子は、こんなに自分の気持ちを相手に伝えられるんだろう。
怖いけど、格好良い。
「……7:3です。後からうだうだ言われたくも有りませんので。それに、迷惑なんて一切思いません。あなたのポーションがあれば、他の商品も目に付くことが増えるでしょうから」
「で、でも―――」
「7:3です。良いですね?」
食い気味で私の言葉を遮るキトゥンさん。
次何か言ったら、きっと本気で怒られる。
怖い。
すっごくおっかない。
けど、きっと―――
「話はまとまったな! そんじゃま、懇親会もかねてパーッとダンジョンでも行くか!」
暗くなってた雰囲気を壊す様に、ディナダンさんはそう言った。
いきなりすぎて驚いたし、キトゥンさんなんて目を白黒とさせている。
けど、ディナダンさんやシヴァさんと仲良くなれたのは一緒に遊んだから。
もしかしたらキトゥンさんも仲良くなって貰えるかもしれない。
『ディナダンからパーティ申請が届いています。承認しますか?』
システムメッセージさんの声が、すっごく懐かしく感じる。
怖がったって仕方がない。
私はYesのボタンに指を伸ばした。
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