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2020.05.22 1話目
そこからしばらくの間、私はトゥアレさんのお手伝いをしながら過ごしてた。
お手伝いと言っても、お仕事を手伝うことはできない。
トゥアレさんは放っておくと、ずっと服を作っている。
その息抜きに、紅茶という名のポーションを作ってあげる程度だ。
オスレフトに驚いたことは、色んな種類の薬草が売られている事だった。
薬草にも色々種類があるのは知っていたけど、ネザーと違って本当に沢山ある。
料理や調剤に使うそれらを、トゥアレさんは頼めば頼んだ以上に揃えてくれた。
その代わり、ハーブティーを淹れて欲しいと。
私も調剤のレベルを上げられるし、植物知識のレベルも上がる。
暇つぶしにもなって一石三鳥だ。
でも、いい加減うずうずとしている。
やりたい事は山ほどあるのに、それが出来ない。
オスレフトの街並みを見てみたいし、畑やおうちも買いたい。
図書館にだって行ってみたいし、自分で薬草の採集もしたい。
……何のためにゲームしてるんだろう。
イベントなんて出なければ良かった。
「どうもこんにちは、トゥアレさん。今日もお洋服作りですか?」
店先の方から声が聞こえる。
お友達だろうか?
それにしては声が幼い……と言っても、私と同じくらいに聞こえるけれど。
店の奥からこっそり顔を出して覗いてみると、女の子がそこに居た。
大きな杖を持って、黒いワンピースを着ている魔術師風の女の子だ。
肩口が広くて、細くて白い肩が見えてしまってる。
なんだか少しセクシーだ。
同い年くらいの癖に。
ぐぬぬっ……。
「やぁ、キトゥン。人気者はつらくてねー。キトゥンは今日も仕入れ?」
「話が早くて助かります。けど、今日はそれだけじゃないんです」
不意にキトゥンさんと目が合った。
ヤバイ、見られた。
すぐに顔を引っ込めたけれど、見つかっていないだろうか。
「それだけじゃないって、装備は新調したばかりじゃない」
「ふふっ、実は探している女の子が居まして。仕切りの向こうでこちらをのぞいていた彼女ですよ」
「……何のこと? ここはネザーじゃないんだから、怖い事言わないでちょうだい」
「トゥアレさんこそ、何の冗談ですか? それとも、トゥアレさんは私を騙せるほど嘘が上手くなったんですか?」
ば、バレている。
トゥアレさんも観念したようにこっちを見ているし、出て行くしかないみたいだ。
「全く……。ユンちゃん、ちゃんと奥に居ないと―――」
「あぁ、奥に居ても私はここに居るって分かっていましたよ。最近のトゥアレさんが買っている物があなたらしくありませんから」
キトゥンさんはニコニコと微笑みながらトゥアレさんを見つめて言う。
この人は、探偵か何かなのだろうか。
「どう考えても、薬師の誰かがこのお店に居るに違いないと思いました。このゲームにおいて、薬師は人口が多くありません。そして、最近姿を見せていない薬師はちびちゃんさんだけです」
トゥアレさんが買った物から、私が此処に居る事を推理してみせた。
こ、怖い。
「あぁ、申し遅れました。私はキトゥン。しがない商人です。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「ゆ、ユンです……」
完璧な笑顔。
柔らかい物腰。
でも、分かる。
キトゥンさんは怖い人だ。
お腹の中が真っ黒な、何を考えてるか分からない部類の人だ。
「それでですね、私は今日あなたにお願いがあってここへ来ました」
「お、お願い?」
「はい。先ほども申し上げた通り、私は商人です。トゥアレさんや他の生産職の方から訳ありの物を買い取り、広場に露店を開いて提供しています。委託販売と言った方が分かりやすいですかね」
話す言葉の一つひとつがどこか説明的というか、凄く分かりやすい。
なるほど、商人なんてスキルもあるんだろうか。
アルカナオンラインは本当に自由度が高い。
「……ははーん、キトゥンの考えが読めたぞ。ユンちゃんを使って荒稼ぎするつもりだな?」
トゥアレさんの言葉に身体が大きく跳ねる。
まさか、悪だくみ……!?
悪用されて、良い様に使われて、そのまま捨てられる……!?
キトゥンさんはニコニコと笑いながらトゥアレさんを見つめ、首を縦に振る。
や、やっぱり怖い人だった……!
センセー、助けて!
部屋の隅に居るセンセーに目を向けると、少し見つめ合ってから面倒くさそうにとこっちへ来てくれた。
けれど、それだけ。
寝てる場所を部屋の隅から私の足元に変えただけだ。
く、くそう……!
「と言っても、私にしかメリットがあるわけではありません。ちゃんとユンさんにもメリットがあります」
「め、めりっと……」
「はい。ユンさんがここに居る理由は、皆さんが躍起になってあなたを探していて、見つかると混乱が起きるからほとぼりが冷めるまで隠れている……と言ったところでしょう」
ご明察。
やっぱりキトゥンさん、見た目は子供だけど頭の中は大人顔負けだ。
きっと私なんて簡単に手玉に取られてしまうに違いない。
「……勘違いしないでいただきたいのですが、私はお金儲けする気で来てますけど、あなたを一方的に利用するつもりはありませんよ」
「へっ!?」
「むしろその逆、あなたを助けに来たんです」
……どういうこと?
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