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2020.05.21 1話目
それから少しの間、先生のお説教は続いた。
話を聞く限り、私はあのイベントでちょっとした有名人になってしまったらしい。
噂が広まるにつれてどんどんと尾びれや背びれ、何なら胸びれや足びれ迄着いた結果、ベテランがひしめく戦場で薬と魔法を駆使してMVPを掴み取った超大型ルーキーという事になってしまっていると。
そんなMVPの作ったポーションを買うために、少なくない数のプレイヤーが私を探しているらしい。
「ポーションが欲しいなら、全然作るのに」
そう言ったら、またシヴァさんに怒られた。
私がディナダンさんの様に、大勢の人に囲まれて平気なはずがないって。
怖くなって、明日以降アルカナオンラインをやらなくなるだろうって。
さすが、良く分かってらっしゃる。
チャンネルでは、私がネザーを拠点にしている事がばれている。
ネザーに来たプレイヤーの多くが、チビ魔女はどこだと探しているらしいからだ。
そこで、シヴァさんは私に拠点を移す様にアドバイスをくれた。
拠点を移して、暫く大人しくしていた方が良いと。
ネザーでやりたい事が無くなった訳じゃない。
上層の探索なんて、全くノータッチだ。
でも、これ以上ネザーにとどまれば、きっといつか誰かに見つかってもみくちゃにされる。
居られないのは残念だけど、他にも行きたい場所はたくさんある。
始めたばかりの初心者で良かった。
シヴァさんが勧めてくれたのは、ディナダンさんと同じ大樹の都市 オスレフト。
ここならポーションの素材も多く取れるし、私が退屈にならないだろうと。
今ならお店を開いているシヴァさんのお友達が、お店の中で匿ってくれるという。
相談したら、快く引き受けてくれたそうだ。
……なんだか深窓の令嬢になった気分だ。
いや、こんなちんちくりんな令嬢は皆嫌がるだろうけれど。
一緒に来てくれるのかを聞いたら、シヴァさんは首を横に振った。
最初は一緒に行くけれど、シヴァさんはやることがあるからネザーに残らなきゃいけないらしい。
残念。
でも、フレンドリストに登録してあるから、いつでも連絡は出来る。
ちょくちょく様子を見に来てくれるとも言っていた。
それなら、ちょっとだけ安心だ。
そうしてシヴァさんと一緒に訪れたのが、大樹の都市 オスレフト。
ネザーと違って木漏れ日が綺麗で、街の真ん中に大きな樹が立っている。
あの樹が"神樹 オスレフト"らしい。
きっと図書館とかに行けば街の歴史なんかで読めるんだろう。
今から楽しみである。
三角帽子の中にセンセーを隠して胸に抱き、代わりにケープのフードを目深に被った私を、シヴァさんは小さく笑った。
な、なんで笑うんだいっ。
変装しないと、見つかっちゃうだろがいっ。
口をとがらせてシヴァさんをにらみ上げると、シヴァさんはそっぽを向きながら私の頭に軽く手を置く。
おい、こっち見ろよ。
私はいつでもやってやるんだからな。
赤い屋根の綺麗な建物の前でシヴァさんが止まる。
看板に"ソリッソ"と書かれたその建物は、きっと被服屋さんなのだろう。
綺麗な洋服を着たマネキンがいくつか外に並んでいた。
シヴァさんは一度私を見てから、ソリッソの扉に手を懸けた。
カラカラとドアベルが店内に響く。
店内の雰囲気は、ハイブランドの洋服屋さんの様だった。
行ったことないから知らないけど。
「トゥアレ、居るか?」
シヴァさんが声をかけると、奥からバタバタと足音が聞こえてきた。
き、緊張する。
思わず三角帽子を抱く手に力が入り、センセーに爪を立てられた。
ご、ごめなさい……。
奥から顔を出したのは、綺麗なお姉さんだった。
種族はエルフだろうか。スラっと背が高くて、足が長くて、耳がとがってる。
おしゃれな格好も相まって、凄くモデルみたいだ。
「はいはい、居るよー。やっと来たね。ずっと待ってた」
「店を構えてすぐだっていうのに悪いね」
「いいよいいよ、気にしないで。大体、私から持ちかけた話でしょ?えっと、その子が?」
トゥアレさんが私に視線を向ける。
それだけで緊張するけど、シヴァさんが背中に手を添えてくれた。
そうだ。今から匿ってもらうんだから、挨拶はちゃんとしなきゃいけない。
「ゆ、ユンです。お邪魔しちゃって、ごめんなさい」
「良いの良いの。さっきも言った通り、私からシヴァにお願いしたんだから。それよりユンちゃん」
ニコニコと笑いながら、私の顔を覗き込むトゥアレさん。
笑顔は優しいのに、何故だか有無を言わさないすごみがある。
正直、怖い。
思わず後ずさりしてしまった私の肩に優しく両手を添えて、トゥアレさんは口を開く。
「もっと可愛い服に、お着換えしよっか」
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