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2020.05.20 3話目
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天球儀の使い方。
プレイヤーの周りを浮遊する天球儀は、プレイヤーの意志で操作する事が可能です。
魔術を使う際はプレイヤーの前へ移動させ、使用したい呪文を口にするか天球儀に向かって指で魔術に対応する文字を書く事で使用できます。
開発中の物であるため、テストプレイを兼ねてユン様にお送りさせていただきました。
当面の間は、破壊不可の装備として扱わせていただきます。
その仕様が変わる際は、追って連絡させていただきます。
使用上の問題点等が見つかりましたら、ご連絡いただけると幸いです。
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な、なるほど。
ちょっと興奮して勇み足過ぎた。
試しに魔法を使ってみても、何の問題も無い。
むしろ手に持たなきゃいけない短杖よりも、ずっと使い勝手が良い。
「い、いたーーーー!!」
突然聞こえる大声に、身体がびくりと大きく跳ねる。
な、なんだ……?
お化けならネザーには沢山居るよ?
それともツチノコとか、レアモンスターでも出たのか?
……町中に?
目を向けてみると、そこに居たのは斧を持った男の人だった。
背が高くて、がっしりとした体系の大男。
山で見たら熊かなにかと間違えそう。
余りの大声に、センセーも機嫌が悪そうにその人を見つめている。
「ねぇ、君がちびちゃんだよね!?」
「ち、ちびちゃん……?」
「そうそう! イベントで大活躍してた、水猫を連れた魔女!」
大活躍はしてないと思うけど……。
ていうか、なんなんだこの人……?
「ずっと探してたんだよ! あぁ、良かった! ゲームやめた訳じゃなかったんだね!」
「が、学校が、忙しくて……」
「学生なんだ! え、高校生? 大学生?」
ぐいぐいと距離を詰められる。
ま、待って、本当に、待って。
距離が近いし、何よりなんでそんな事を聞いてくるのかが分からない。
グルグルと目が回ってしまう。
熊の人が近づいてくるたびに後ずさって居たら、いつの間にか背中が壁にくっついていた。
逃げられない。
それでも熊の人が近づこうとした、その時だった。
「ンオァーッ……!」
センセーが、初めて鳴いた。
私を庇う様に私の前に立って、熊の人を制してくれている。
顔が見えないけど、尻尾は倍以上に膨らみ背中の毛も逆立っていて、怒っているのが一目でわかる。
「な、な、なんだよぬこ様! 俺は別に敵とかじゃないよ! ただちびちゃんと―――」
「私のツレに何か用?」
熊の人の後ろから声が聞こえる。
顔を覗かせると、シヴァさんが立っていた。
口元は確かに笑ってる。
けど、目元が一切笑っていない。
条件反射で、私は背筋がゾッとする。
ゲームの中では一切見ないけど、現実世界ではよく見る。
悪さをした男子を怒る、柴咲先生の顔だ。
「し、シヴァ姐さん……」
「……勘違いする奴が多くて困るよ。話題になってるプレイヤーの事をチャンネルで話す内に、そいつと仲良くなった気にでもなってるのかね」
言葉に怒りを乗せながら、ゆっくりと歩いてくるシヴァさん。
熊の人はさっきの私みたいに、たじたじと後ずさる。
まるでお母さんに怒られてる子供みたいだ。
「とっとと出て行きな。アンタなんて知らないし、友達でも何でもないからね。私も、この子も」
その言葉を聞いて、熊の人はバタバタと廃墟の建物から逃げていく。
その背中を見送りながら、シヴァさんとセンセーが二人で鼻を鳴らしていたのがなんだか可笑しい。
二人とも似ているのかもしれない。
大きな男の人を威圧するシヴァさんは、少女漫画に出てくる男の人みたいだった。
乙女ゲームの主人公か何かなのかな。
シヴァさん、実は男の人だったり―――
「あだぁっ!?」
ゴツンッと落とされるシヴァさんのゲンコツ。
ゲームの中だから痛くないはずなんだけど、何故か痛い気がしてしまう。
絶対にたんこぶが出来た。
「個人情報はネットで漏らさないって、情報の授業で習わんかったのか、このバカタレ」
「が、学校名いう訳じゃないし、良いかなって……」
「あの手の奴は、ほんのちょっとの情報からでも特定してくるんだよ。全く、たまたま顔見に来たから良かったものの」
「ご、ごめなさい……」
まさか、シヴァさんに本気で説教されるとは思わなかった。
学校でも叱られた事ないのに。
くそ、熊の人め。
大体、私は何も悪くないはずだ。
バーカ。
でも……。
「こ、怖かった、です。シヴァさんも、センセーも、ありがとう」
もう一度、二人とも鼻を鳴らしていた。
やっぱり似てる。
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