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2020.05.18 2話目


見つけるのが早かったお陰で、深くまで本陣に入り込まれる事は無かった。

けれど、シャドウさんは既に白組軍のプレイヤーに化けていた。

それを見抜けるのは、シャルトスの瞳のお陰だろう。

見た目こそヒューマンの女の人だけど、それと重なるように黒い影が見える。

あの時見たシャドウさんの本体だ。



「て、てやーーーっ!!」



地面を強く蹴って、シャドウさんに飛び掛かる。

けど私は間合いなんて全く分からない。

いくらシャルトスの瞳があっても、魔女の知恵があっても、踏み切りのタイミングなんて教えてくれない。

結果、シャドウさんの腰に飛びつく形になってしまった。

シャドウさんのお尻が大きくて助かった。

あんまり痛くない。



「え!? ちょ、なに!?」


「だ、駄目です! ここから先は、紅組さん立ち入り禁止です!」



必死にまとわりつく私を振り払おうと、シャドウさんは腰を振る。

グラグラ揺れる視界に目が回りそうになるけれど、必死にそれをこらえた。

此処で止めないと、皆の頑張りが無駄になってしまうから。



「ちょ、み、見たら分かるでしょ!? 私は白組の―――」


「私の目を侮らないで下さい! シャドウは人に化けられるって、私は知ってますから!」



そこまで話して、ようやくシャドウさんは観念したのだろう。

化けていた変身をとき、元の真っ黒な姿へと変わった。

同時に、するりと私の腕から抜けてしまう。

ベシャリと顔から地面に落ちる。

雨によってぬかるんだ地面のせいで、私の顔は泥塗れだ。

シャドウさんはその隙に私から距離を取った。

くそう、この人もいつかしばいてやる。



「誰かと思ったら、ネザーであったチビちゃんじゃん。はー、勿体ない事したなー。あの時に会わなければ、このまま旗まで行けたのに」


「ぐ、ぐぬぬ、味な真似を……」


「いや、私何もしてないから……」



泥だらけになりながら、ゆっくりと立ち上がって細剣を構える。

シャドーさんの戦い方が分からない以上、迂闊に近寄ることは出来ない。

センセーが居てくれて本当に良かった。

一人だと心細いから


突然、シャドウさんの周りに紫色の小さな球が浮かび上がる。


"シャドウブリット"。


火力は低いけれどリキャストまでが恐ろしく早い、影魔術の初級呪文。

少しだけ不安だったけれど、どうやらPvPでもシャルトスの瞳は攻撃予測線を教えてくれるようだ。

けれど、これはまずい。


大きな一撃は避ければ良い。けれど、小さな攻撃を積み重ねる様にされてしまうと、避けられない者も出てきてしまう。

それは私にとっての天敵だ。

元のHPが低すぎて、もしかしたら直ぐに落ちてしまうかもしれない。



「さっさと終わらせて、旗を取りに行かせてもらうよ!! シャドウブリット!!」



一斉に射出されるシャドウブリット。

センセーは器用にそれを避けているけれど、私はいかんせん的が大きすぎる。

避け切れない物がいくつも身体に当たり、徐々にHPが削られていく。



「逃げてばかりじゃ勝負にならないね!ホラホラ、かかってきなよ!」



ぐぬぬっ……。

そう言うなら、少しは攻撃の手を緩めてくれれば良いのに。

けれど、シャドウさんの言う通りだ。

削られていくHP。

このままでは何も出来ないままやられてしまう。


その時だった。

私の身体を薄い霧が包み込む。

視界を邪魔する事のない程度のその霧は、私のHPを徐々に回復していく。


"ミストポーション"。


私の作ったポーションをセンセーの魔術で霧状にして、霧に包まれた範囲を継続的に回復していく私とセンセーの合体技。

シャドウブリットは、確かに出の早い技だ。

しかし、どんな技にもリキャストタイムは存在する。

ミストポーションの継続回復は、確かに一度に回復する量は少ないけれど、リキャストタイムで攻撃が当たらない分でHPが削り切られる事は無さそうだ。



「……その猫、回復持ち? なら先にそっちから!」



シャドウさんが右手を上げると、そこに魔術で出来た一本の槍が現れる。


"シャドウランス"。


シャドウブリットよりもずっと威力が高い影魔術だ。

でも、先生なら避けられる。

こと避ける事に関して、センセーは無敵なのだ。



「"バインド"」



シヴァさんがよく使う拘束魔術だ。

足元から生える半実体化した鎖が、センセーの身体を縛り付ける。

センセーも油断していたのだろう、瞬く間にその身体をぐるぐると縛り付けられてしまった。

ヤバイ、これは流石に―――



「喰らいな、シャドウランス!!」


「せ、センセー!!!」



鎖に縛り付けられたセンセーの身体。

避ける事は叶わない。

気付いた時には、もう遅かった。

鋭く放たれたシャドウランスは、センセーを庇う私の身体を貫いていた。


反射的に動いてしまった。

私だって、HPは高くない。

使い魔を庇ってHP全ロストなんて、笑えない。

けど、センセーのHPは私よりもずっと少ない。


シャドウさんに背中を向けてセンセーの前に立つ私の顔を、センセーは目を見開いて見つめている。

驚いた表情のセンセーを見たのは初めてかもしれない。

いつもは寝てるか、面倒くさそうにしているかのどっちかだから。


HPの減少が止まる。

ギリギリ全ロストする事が無かったのは、センセーが撒いていたミストポーションのお陰だろう。

すかさず品質の高いアーフルのポーションを使って、HPを半分まで回復させる。



「ちょ、ちょっと、その子プレイヤーなの?」


「つ、使い魔です……!」


「なら、庇う必要無いじゃない! 使い魔はやられても、また召喚すれば元気な姿で来てくれるよ!?」



そんなこと言われたって、仕方ないでしょ。

無意識に体が動いちゃったんだから。

死ななきゃ安い。


足元のセンセーが、私の足を踏んでくる。

センセーはこの状況でもマイペースだ。

足なら終わったらいっぱい踏んで良いから。

今は戦いに集中しないと。

剣を強く握り、後ろを振り返る。

ここから反撃開始だ。


私の影がシャドウさんへと伸びていくのが見える。

え、何?

急に太陽が出てきたの?

でも雨は降ってるし。

他に何かが光ってるの?


ゆっくりと後ろを振り返ると、そこに居たのは私だった。

左右を反転させた、鏡写しの私。

……え、センセー?


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