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今回のイベントは簡単な旗取り合戦である。
紅白に分かれたそれぞれのプレイヤー達がお互いの陣地を目指して進軍し、先に旗を取られた方が負け。
分かりやすいけれど、なかなか難しいルール。
どちらも旗を取れなかった時の為か、それとも個人成績を計るためか、プレイヤーそれぞれのスコアも計算されてるみたい。
参加プレイヤーは自軍を見ただけでもかなり居る事が分かるので、その統率をどう取るかがカギになりそう。
ちなみに、私達は白組。
「皆、聞いて欲しい! 私はギルド ミレニオンのギルドマスター、レオノーラ! 今回のイベントは大規模の戦闘だ! 全体の指揮無くして勝利は有り得ない!」
参加者が集まる広場の中央で、一人の女性が叫んでる。
煌びやかな鎧は、きっと見た目以上の性能を秘めているのだろう。
周りに居る人たちもお揃いの鎧を着ていて、ピシッと背筋も伸びていて格好良い。
何処かの騎士団だと言われても疑わない。
「お、ミレニオンの奴らやってるなー。良いぞ、レオノーラ! お前が居れば白組の統率はバッチリだなー!」
囃し立てるディナダンさんの声に、周りのプレイヤー達もドッと湧く。
その様子に安心したのだろう、レオノーラさんは厳しかった表情を少しだけ和らげた。
その隙にミレニオンの事をシヴァさんが詳しく教えてくれる。
「大規模ギルド、ミレニオン。ギルドマスターのレオノーラを筆頭に、プレイヤースキルの高い連中が集まってる集団よ。主にフルレイドやダブルレイドのクエストを中心に活動していて、頭は固いけれど、それと同じくらい団結力も高いわね」
なるほど、大手の大規模ギルド。
大人数でのクエストが得意なら、この大人数でも指揮しきれるかもしれない。
プレイヤーやギルドの情勢は魔女の知恵では分からないから、凄くありがたい。
「どうか私に指揮を任せて欲しい!必ず皆を勝利に導くと約束しよう!」
騎士団たちはその言葉を合図に剣を高く掲げ、プレイヤー達はまるでそれを待って居たかのように歓声を上げる。
確かに、誰だってこの人数を率いるのは怖い。
それを大きなギルドのギルドマスターが引き受けてくれるというのだ。
ありがたい話である。
「参加してくれるパーティのリーダーは、一度中央に集まってくれ! 勿論、強制ではない! 皆でこのイベントを楽しもう!」
リーダーと言われた時、一瞬ヒヤッとした。
けれど、強制じゃないなら私は行かない。
そもそも、なんで私がリーダーなのかいまだに納得いってない。
けれど、二人ともリーダーを委譲しても受け取ってくれないのだ。
「行かないのか?」
「そう言うなら、リーダーを貰ってください……」
「へへーん、やなこった」
くそう、ディナダンさんめ。
まるでからかうみたいにベッと舌を出してくる。
そんな仕草も格好良く見えてしまうから、本当にズルい。
「私達のパーティは三人しか居ないからね。ミレニオンについて行っても大きな変化にはならないでしょう。それよりも遊撃手として自由に動いていた方が、きっとスコアは稼げるわ」
私の考えを、シヴァさんが代わりに全部話してくれた。
初心者である私に、きっと大規模な戦闘はまだ早い。
それならまだ経験のあるパーティ戦で貢献した方が、きっと白組の力になれる。
・・・・別に集まるのが怖いとか、みんなと行動するのが怖いとかじゃないよ。
本当だよ。
予め用意していたスクロールを地面に敷き、センセーを召喚する。
センセーはまだ眠っていた時間なのだろう、スクロールの中心に丸まった状態で現れた。
その様子を顎に手を当てて、興味深そうに見ているディナダンさん。
そういえば、センセーと会うのは初めてだったかもしれない。
「そいつは?」
「私の使い魔で、水猫のマロウです。私はセンセーって呼んでますけど」
センセーと一緒にする戦闘は、とても楽ちんだ。
ポーションを咥えて持って行ってくれたり、水魔術で援護してくれたり、色々やってくれる。
いちいち面倒くさそうな表情をしているのも可愛くて好き。
ふてぶてしいけど。
そこから私達は広場の隅の方に移動して、自分たちのスキルを見せ合った。
と言っても、ディナダンさんとシヴァさんは何度かパーティを組んでたことがあったみたい。
二人のスキルの話はさらっと流される程度で終わってしまった。
問題なのは、私だ。
「おいおい、マジか……」
「何かあるだろうとは思っていたけど、ユニークスキルとは思わなかったわ……」
二人とも頭を抱える様にして私を見つめている。
そ、そんなに見ないでよ。
照れてしまう。
「あの、そんなわけで、えっと」
「い、いや、驚いただけなんだ! 他意は無いよ!」
「うんうん! 何よりその予測線が見えるのなら、私達も動きやすいしね!」
しどろもどろになる私に、二人は慌てて言葉をかけてくれる。
良かった、変には思われて無さそう。
「けど、その情報はまだ秘密にしておいた方が良いかもしれないわね」
シヴァさんはそう言うと、色々な事を話してくれた。
一定のプレイヤーがユニークスキルに対して妬みや嫉みを生むかもしれない事。
興味本位で情報を聞きに来るプレイヤーが居るかもしれない事。
想像しただけでも、ゾッとする。
やっぱり隠してて良かった。
けどそれと同じくらい、二人に話して良かった。
「ま、チャンネルの方で何かあったら適当に俺が誤魔化しとくよ。こう見えて、名前だけは売れてるんで」
先ほどレオノーラさんを囃し立てていた時に、その片鱗を見た気がする。
ざわざわとしていたプレイヤー達の声が、ディナダンさんの言葉一つで歓声へと変わった。
人当たりの良いディナダンさんの事だから、きっと男女問わず色んな人に人気なのだろう。
シヴァさんといい、私は本当に周りの人に恵まれている。
ありがたやー、ありがたやー。




