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お昼まで黙々とポーションを作り、昼食を済ませ、午後のアルカナオンラインを開始します。
少しだけお昼寝をしてしまったのは内緒。
結局戦闘に慣れる意味合いを込めて西門から出た私は、とりあえず薬草の採集ポイントまで足を運んでいた。
使ってしまった薬草と湖の水の補充も終わり、辺りを探索していた所で、とあるものを見つけた。
それは、小さな洞窟の入り口。
中は薄暗くて見る事が出来ない。
けれど、これもダンジョンの一つなのだろう。
初心者向けのフィールドに在るんだから、きっと一人でも行けるやつ。
……だと、思う。
若干吹き出す臆病風。
前回はディナダンさんが居たけど、今回は一人きりだ。
怖いと言えば怖いけれど、誰かを誘って一緒に行くのは出来る気がしない。
それなら、一人で行くしかないだろう。
ポーション、良し。
細剣、良し。
シャルトスの瞳、良し。
いざ行かん、大冒険へ。
意気込みもそこそこに、洞窟の中へと足を踏み入れた。
ヒカリダケはこういう時にも役に立つ。
松明代わりにかざしながら徐々に進んでいくと、中は入り組んだ迷路のような造りをしていて、ゾンビの巣窟になっていた。
ノンアクティブなのは、一応人外種にも属するからだろうか。
逆にヒト族からは沢山絡まれそう。
ヒトって別の種族には厳しいイメージがあるし。
不気味な存在って怖いもんね。
仕方ない。
このまま洞窟の中を探索しても良いんだけど、今回の目的はレベル上げも兼ねている。
手を出さなければ襲われないのであれば、安全にレベルは上げられそう。
手始めに、一匹でウロウロしているゾンビに切りかかる。
片足を落として、少し離れて様子を見て、いけそうなら頭を落とす。
出ている青いマーカーも、狙える時は積極的に狙っていく。
悪鬼との戦闘をこなしているだけあって、動きの遅いゾンビであればある程度一方的に攻撃が出来そうだ。
グロテスクな表現も少なくて大助かり。
うん、狩場としては持ってこいかもしれない。
何より、気になるドロップ品が有った。
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毒液
クオリティ E
レアリティ ノーマル
毒を扱うモンスターから採れる素材アイテム。
毒物を作る事が出来る。
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色々なドロップ品の中で、私の気を引いたのはこれ。
薬師と言ったら治すほうの印象が強いけれど、毒薬も立派な薬になる。
毒薬や麻痺薬が有れば、きっと戦闘をもっと有利に進める事が出来る。
洞窟の探索をしながら、積極的にゾンビ狩りをしていった方が良さそうだ。
こういった地道な作業は嫌いじゃない。
どんどん狩るぞ、おーっ。
どれくらいゾンビを狩り続けただろうか。
レベルもそれなりに上がって、ゾンビを狩る作業に慣れ始めた。
このままなら、割とスムーズに進化まで行けるんじゃないか?
と、思っていた時期が私にもありました。
ある程度してくると、経験値の習得が緩やかになってきたのだ。
どうしようかと悩んでいたその時、出てくるモンスターに若干の変化が現れた。
名前はハイゾンビ。
さっきのゾンビが進化した姿。
とは言え、感じる違いは耐久力が上がっている位だろうか。
攻撃予測線が見える私にとって、ゾンビの攻撃は当たるようなものじゃないし。
経験値が増えたのはすごく嬉しい。
より効率的にレベルがあげられる。
ドロップ品も相変わらずだし、次はハイゾンビ狩りと行こう。
なーに、死なない死なない。
少しハイになったゾンビごときに後れを取る私じゃないのさ。
そこからまたしばらくハイゾンビを狩っていると、突然それは現れた。
額に向かって伸びる赤い線。
何かからの攻撃が来る。
辺りにはハイゾンビは居ないし、きっと別の敵だろう。
慌てて身体を横に反らすと、それは突然現れた。
長細く、鈍色に光る怪しい剣。
持ち主も居ないその剣は、浮かびながら私に向かって飛んできた。
"リビングソード"。
生きた剣。
言うまでも無く、動きはゾンビよりもずっと早い。
厄介な敵に見つかったようだ。
……あれ、調子に乗り過ぎただろうか。
奥まで進みすぎ……?
冷や汗をかきながら及び腰になる私を、リビングソードは待ってくれない。
鋭い剣筋で攻め立ててくる。
引けた腰では避けられるものも避けられない。
徐々に削られるHP。
これは、好ましくない。
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