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私と同じ顔をして現れた何者か。
表情すら私の真似をしているつもりなのだろうか、ほんの少し焦っているような雰囲気を出している。
事前情報が無ければ、私はきっと驚いていただろう。
いや今も十分驚いてるけども。
でも、立ちんぼになって動けなくなるような事は無かった。
「ぷ、プレイヤーの方ですか?」
「へ?」
あぁ、プレイヤーの人だ。
エネミーモンスターなら、此処まで流暢に喋らない。
ホッと胸を撫で下ろし、剣を鞘にしまう。
「え、え、驚かないの?ほら、キミと同じ姿だよー?」
ヒラヒラと両手を動かしながら聞いてくるシャドウさん。
まるで悪戯に失敗した子供の様だった。
確かに、普通はもっと驚くのかもしれない。
少し酷い事をしてしまったかも。
「……わ、わー、おどろいたー」
「いや、下手くそか」
ケラケラと笑いながら、シャドウさんは近づいてくる。
徐々にその姿が変わっていき、私の目の前に来る頃にはまるで黒子の様な、真黒な影だけの姿になっていた。
シルエットからして、きっと女性なのだろう。
ほんの少しだけ安心する。
「くそー、悪戯失敗じゃんー。珍しくヒト族が居たから、からかおうと思ったのにー」
「ご、ごめなさい・・・・」
「バカタレこの!誰が許すか!」
楽しそうに笑いながら、シャドウさんは小突いてくる。
お化けみたいに触れられないのかなと思ったけれど、そんな事も無いらしい。
……よし、今までの私とは違うって所を見せてやる。
「あ、あの私、ユンって言います。お、お名前、聞いてもいいですか」
「お?ふふふー、ダメー!」
「え、えぇぇ!?」
「なんでそっちの方が驚いてるのさ!くそー、悔しいなー!」
心が折れる音がした。
意を決して聞いたのに……!
この人は意地悪である……!
まぁ、ファーストコンタクトで悪戯を仕掛けてくるくらいだもんね。
仕方ないね。
「あ、名前はセエレね!」
言うんかーい。
「せ、セエレさんはどうしてここに?」
「あ、そうそう、それなんだよ!ユンちゃんだっけ?街の方向って分かる?」
さらに、迷子かーい。
私は地図を取り出して、リローに見せる様に広げる。
現在地と方角を確認して、北東の方を指さした。
「えっと、向こうですね」
「よっしゃ、ありがと!地図持たずに出てくるのはいかんなー。街に着いたら私も買っておこ!」
「あの、良かったら―――」
「それじゃまた会ったら、その時はよろしくねー!バイバーイ!」
言い終わる前に、セエレさんは街へと向かって走り出してしまった。
地図を渡せば迷わず帰れると思ったのに。
渡そうと思ったのに。
……くそう。
でも、自分から話しかける事は出来た。
偉いぞ、私。
立派だぞ、私。
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