少女8中
モンハンにハマってます。
伊吹 萃香は、幻想郷に帰って来た鬼だ。
かなり大酒を飲むので四六時中酔い、本人は素面だったのは何百年も昔の話だと述べている。
彼女の「伊吹」という名字からは御伽草子に書かれた伊吹山の鬼のドン『酒呑童子』を連想させる。
幻想郷への帰還前は地底の旧都に住んでいたが、それ以前は妖怪の山に住んでいて、そこでは鬼の中でも「山の四天王」の一人とされ恐れられていた。
薄茶色の長い髪を先端近くで一つに束ねてある。
また、真紅の瞳の持ち主で、その頭の左右からは身長に見合わない長さのねじれた角が二本生えている。
「リボンがお好きなのですか?」
「へっ? わ、悪いかよ」
衣玖に装飾品を指摘され、萃香は照れ臭そうに頭髪を撫でた。
萃香の服装は白のノースリーブに紫のロングスカートで、いつも頭には赤い大きなリボンをつけ、左の角には青いリボンを巻く。
呑んべぇなだけにいつも伊吹瓢という紫の瓢箪を持ち、三角錐、球、立方体の分銅を腰などから鎖で吊るしている。
☆
「萃香さん、もう人やら妖怪やらを萃めるのは、よしてくださいよ?」
「わ~かってるっての。うるさい天狗だなあ」
萃香は文に反目したようでいて、実際には鴉天狗の底力には一目くらいは置いている。
ちなみに文が言っているのは、萃香が異変を起こした張本人として、かつて霊夢らと戦ったことがあるという話だ。
魂魄 妖夢や西行寺 幽々子が春を集めたために桜の季節が梅雨前の少しの季節だけになり、幻想郷では宴会が減ってしまった。
そのことを不満に思い、萃香は能力で人を萃め霊夢たちに三日おきに宴会を行わせ、その賑わいで他の鬼たちを幻想郷に戻そうとしたのだ。
「密と疎を操る程度の能力。その気になれば人ならざる者の意識まで密にするとか。流石は四天王ね」
雷鼓の申し訳程度の知識を聞いているかは分からず、萃香は伊吹瓢にずいと口を付けた。
☆
密と疎を操る程度の能力は密度を操る程度の能力とも呼ばれ、あらゆるものの密度を自在に操る能力。
物質は密度を高めれば熱くなり、逆に密度を下げれば物質は霧みたいになる。
この特性を使い彼女は霧になることが出来る。しかも、この時でも体当たりなど物理的な干渉は可能だ。
能力を生かし、姿こそ現さなかったが、宴会騒動を起こす前から幻想郷にはいたらしい。
そして幻想郷を覆うほど薄くなって幻想郷中の出来事を眺め、更に人々の意識といった形を持たない物を集めることで、幻想郷の住人に三日ごとに宴会を開かせたのである。
「ところでその瓢箪……先ほどから酒が出続けていやしませんか?」
屠自古がにじり寄りながら、萃香にそう尋ねたが、彼女はそれにも応じないでまた一口にぐびりと大酒で喉を鳴らした。
☆
萃香がいつも手に持っている瓢箪である伊吹瓢。
この瓢箪は酒虫という少しの水をたくさんの酒に変化させる生物の体液が塗られているから、酒がどれだけでも湧き出るようになっている。
ただし、転んだとき用にストッパーが付いており、一度に出る酒は瓢箪の大きさと同じ。 出るのは鬼好みの相当キツい酒なので、人間などが飲むと大変な事になるらしい。
酒を出すだけでなく武器としても使用するという、いかにも鬼らしい携行品だ。
「おい、雛。何をしてる、鬼なんてさっさと追い返せ」
「ふふ、いつもの冗談ね。かけらの厄も見えないもの」
にとりと雛。二人はいつの頃からか、文と同様に萃香とはなんだかんだ仲良く暮らしている。
☆
屠自古たちが今いる「妖怪の山」の創造主にして支配階級。
未だ山を権力下に敷く種族の一つ、鬼。
大昔に幻想郷で生活していた頃は、鬼は妖怪の山に住みながら、天狗や河童を下っぱとして縦社会にしていた。
そのため現在でも文やにとりを始めとした妖怪は、上司だった大抵の鬼に対して頭が上がらない面も少なくはない。
鬼は総じて酒飲みで、性格は豪快。そして情に厚い。
「最近は人間の知恵がますます強まっちまって、面白くはあるけど人さらいはもう出来ないんだよなあ」
「まあ、良いじゃないですか。仲間の鬼たちもむざむざ殺される下手を打たないと学習出来たのですから」
萃香の愚痴に文が合いの手を入れる。
萃香は鬼だけれども、文と彼女の関係性は少なくとも外から見れば対等のようだ。
仲間を裏切る事は決して無いが、敵に対しては獰猛で容赦がない鬼。
また勝負事好きでもあり、鬼は古くから「人攫い」を行い人間に勝負を挑んでいた。
☆
その内容は弾幕ごっこのルールに似ているが、どうにも人間には不利だったようだ。
そこで人間達は知恵を使い、協力の上で鬼達を欺いて、罠にかけ次々と命を奪った。
その結果、人攫いを「人間との真剣勝負」と楽しんでいた星熊 勇儀を始めとした鬼たちは、次第に地獄の旧都に移住していった。
そして博麗大結界が創造され幻想郷が外の世と隔離された辺りで、鬼は地上から完全に姿を消した。
妖怪の山の住人を除けば、博霊結界成立前から幻想郷の地に住んでいた者でない限り、次第に鬼の存在を忘れた。
萃香が幻想郷に帰ってきた当時は八雲 紫や西行寺 幽々子の二人に面識があるくらいで、その他はパチュリー・ノーレッジが書物を通じて知っていたのみ。
退治方法すら知られず、鬼はただの御伽噺となっていたのだ。
☆
「霊夢さんも呼びましょうか?」
文は文なりに気を配った。
というのは、近頃の萃香は博麗神社を仮住まいとしていて、少なからず霊夢の世話になっているのだ。
「あら、私を呼んだかしら」
噂をすれば影。
バーベキューどころか宴会のようになってきたその場所に、博麗 霊夢は姿を見せた。
「全く、いないと思ったら案の定ね。萃香」
「がはは、最近はそうでもないぞ。地底の旧都に帰ってもいるし、天界にも居場所を作ってあるからな!」
心にもないという口調で「不羈奔放の鬼、大活躍ね」とだけ告げた霊夢の本意は、誰にも分からない。
☆
それは萃香が、実はどこにいるか誰にも目処が立たないことがあるのと同じかもしれない。
妖怪の山が主な活動場所としてみたり、山に来て「懐かしい」と発言してみたりの萃香は単に一ヶ所に収まるのを良しとしない気分屋なのだろう。
天界を訪れ、比那名居 天子に天界の一部を自分に寄越せと求めて天子と戦い、勝つ。現在は天界にもいるというわけだ。
そこでふと、萃香は鬼符「ミッシングパワー」のスペルカードを取り出した。
「霊夢。久々にやるか、回数無限の弾幕ごっこ」
鬼符「ミッシングパワー」。
それは密と疎を操る程度の能力を利用してその場で両手を天に突き出し巨大化するスペルだ。
近寄った相手に大打撃を加える技だが、場合によっては彼女自身が思いっきり相手に突撃する。
その様子は、まさに鬼である。
☆
「鬼神のスペルで来なさいよ。本当に久しぶりの、本気の弾幕ごっこ、受けて立とうじゃない」
萃香には鬼神「ミッシングパープルパワー」なる強力版のスペルもあるのだ。
巨大化した萃香が至るところを動き回り、殴る蹴るの暴れを繰り返すスペルだ。
腕をブンブン振り回してくるため、恐怖する者は少なくない。
「おいおい、それじゃあ何のために山に来たのか分かりゃしないぜ?」
「魔理沙。それは余計なお世話ってものよ」
霧雨 魔理沙。
普段は人間だけでなく妖怪すらも近寄らない「魔法の森」で何でも屋「霧雨魔法店」を経営する傍ら、日々魔法の研究にいそしんでいる。しかし彼女は魔法使いではあるが人間だ。
何でも屋は報酬全額前払いということはなく、報酬は成功したら貰うという事で意外と良心的である。
しかしそんな魔理沙が来たからと言って、安心など出来はしない。
普通の魔法使いと呼ばしめる割には、霧雨 魔理沙ある所では彼女の普通でない迷惑行為が始まるのだ。