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旅立ちの朝

【17】

 「ふわぁ〜」


 俺は大きなあくびを一つする。

 静かな朝だった。


 ──俺は今日この街を旅立つのか‥‥‥


 あの学校の屋上での出来事から約十日、だがもうかなり前のように感じられる。

 最初は本当にわけがわからなかった。目を開けば全く知らない場所に一人でいる。そしてドラゴンに襲われる。街を見つけてもお金がない。稼ぎに出れば盗賊に襲われる。

 本当に何度も命の危険を感じた。だが‥‥‥


「んん〜」


 隣のベッドには銀髪の美少女が寝ている。

 セフィア‥‥‥俺よりも二つも年下の少女。こいつがいなかったらおそらく俺はこの世界で生きていけなかっただろう。

 まだ若いのにいろいろな知識を持っていて、そして伝説の白竜族の生き残りである。

 彼女が何度も俺を助けてくれた。

 彼女は俺が彼女を助けて、その恩返しをしたいだけらしいが、俺に言わせれば自分が使ったのかもわからない魔法で助けたこの子が俺にこんなにも尽くしてくれていることには本当に感謝しなければならない。

 正直、元の世界が恋しくなることもあった。だが彼女がいたおかげでなんとか気持ちの整理もつけられた。


 そして‥‥‥


 この世界に一緒に来たと思われる三ツ木彩奈と榊結衣。おそらくこの世界に俺たちを連れて来たのは結衣だ。屋上での不可解な行動、そしてあの光。結衣のなんらかの力によって俺はこの世界に連れてこられた。

 もう一つ衝撃を受けたのが、この国の王の名がアヤナということだった。

 もちろん別人の可能性もある。だがセフィアの話によると三年前に十四歳で登極した威厳のある綺麗な女性だという。三年前に十四歳ということは俺と同い歳。普段の彩奈に威厳という言葉はしっくりこない。だが俺は彩奈のもう一つの顔を知っている。あの彩奈の『別人格』がこちらのアヤナと何か関係があるのだとしたら──


 ──やはり本人に会って確認するしかない。


 しかしこの国は隣国の侵攻により陥落寸前らしい。国が負けた時、その国の王に命があるとは思えない。いろいろ調べたいこともあるが時間がない。

 だからこそ俺たちは今日、この街を出て国の中心である北を目指す。


 ──待っていろ彩奈。お前が大変な状況なら必ず助け出す。 



「っん‥‥‥おはようございます‥‥‥」


 ふと隣を見るとセフィアが眠そうな目をこすりながらベッドに座り込んでいた。

俺たちは最初は別々の部屋で泊まっていたが、途中からセフィアが俺のことを信頼してくれたのか、同じ部屋で寝たいと言い出し、今は同じ部屋で寝泊まりしている。


「おはよう、セフ‥‥‥」


 言いかけた状態で俺は固まる。

 セフィアは白い綺麗なワンピース型のパジャマを着ている。そのワンピースの右の肩紐が腕付近まで落ちており、胸の艶やかな隆起とそれによって生まれる深い谷間がはっきりと見えている。そして今にも布と肌の境目が隆起の頂上を超えてしまいそうになっている。


「セフィア! 服! 見えちゃう!」


 そう言って俺は目をそらす。


「きゃ!」


 セフィアも一瞬で顔を真っ赤にし、ものすごい速度で後ろを向く。


「ご、ごめん」


 二人の間に微妙な空気が流れる。


「いえ、こちらこそ朝から見たくないもの見せてしまってすみません」


「いや‥‥‥見なくないわけではないんだが‥‥‥なんというか‥‥‥」


「え?」


「いや! なんでもない!」


「そ、爽真さんはこういうの興味あるんですか?‥‥‥」


「い、いきなりなんの話をし出すんだ⁈」


セフィアは少し後ろを向いて何かをボソッと言った。


「‥‥‥別に爽真さんになら‥‥‥」


「え? なんだって?」


「なんでもありません! さっさと支度しますよ!」


 セフィアはさらに顔を赤らめて、すごいスピードの枕を投げてきた。



 支度を済ませた俺たちは街の門の前にいた。


「ここから10キロほど行くと、ここよりももっと大きな街があります。そこからなら鉄道が出ているらしく、国の中心部にもいけるはずです」


「へぇ〜、この世界にも鉄道があるのか。んじゃとりあえず今日の目標はその街まで行くことだな」


「はい!」


「おう! にいちゃんたち!」


 威勢のいい声に振り返るとそこにはガタイのいい男が立っていた。


「ボーデン! 見送りに来てくれたのか?」


「ああ! 今日出るらしいって弟に聞いたからな! これ持ってけ」


 そう言うとボーデンは俺に三つの小瓶を渡した。


「なんだこれ?」


「回復薬だ。 道中モンスターも出るだろうし、使ってくれ」


「ありがとう、助かるよ」


「なぁに。俺もお前らに助けてもらったんだ。おあいこさまよ。

 嬢ちゃん、またこいつが危なくなったら助けてやってくれよな!」


「はい! 任せてください」


「本当にいい子だなぁ、おめぇ変なことすんなよ?」


「しね〜よ!」


「ガハハハ、まぁなんでもいい! 生きてまた会いに来いよ!」


 俺とボーデンは拳を突き合わせる。


「ああ、行ってくる」


 その言葉を残し、俺たちは街の門をくぐった。

少し投稿が空くと思います。

すみません<(_ _)>

ここまでの感想などいただけると嬉しいです。

次回も宜しくお願いします。

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