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セフィアの過去(2)、そして──

【15】

「その後一人残された私は、私が白竜族と人間のハーフであることを知る数少ない父の友人、サムおじさんという方に引き取られました。

 三歳になる前だった私は竜への擬態化を意識的にすることができず、勝手に竜の姿になってしまったり、人間の姿になったりしていました。

 そんな出歩けばかなりの話題となってしまう私を迂闊に外に出すわけにもいかず、サムおじさんは家で私のことを大切に育ててくれました。

 五歳頃になる頃には私も自分の意思で竜への擬態化もできるようになり、普通に外にも出られるようになりました。

 私は学校というもののは通いませんでしたがサムおじさんは昔先生をしていたらしく、学校で習うようなことは大体教えていただきました。

 また、サムおじさんはこの世界のことや向こうの世界、さらに魔法についても知識があり、いろいろなことを私は教わりました。


 けれど‥‥‥」


 セフィアが暗い顔になり俯く。


「サムおじさんは半年前に亡くなってしまいました──」


「まさかまた疫病に?」


「いえ、あの疫病は三年ほど前に特効薬が見つかり、今ではほとんどの人が助かります。

 サムおじさんはもうかなりの高齢でしたので──

 一年ほど前からはベットに寝たきりの状態でした。

 

 そしてサムおじさんは最後に

『この世界にはお前も私も知らないことがまだまだたくさんあるはずだ。それをお前自身の目で見ておいで』

 そう言っておじさんが所有していた全財産とこの服とローブを私に授けてくれたんです」


 そう話すセフィアの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「そしておじさんが亡くなった後、私は旅に出ることを決心しました。

 この世界を旅して、たくさんの知らないことを知って、今度は私がおじさんの知らないことをおじさんにいっぱい教えてあげるんだ、そう心に決めました。


 しかし旅は簡単なものではありませんでした。

 私はおじさんにいろいろな知識をいただいたとはいえ、住んでいた小さな町から出たことがありませんでした。

 そのため他の町は私にとって外国のような感じで、たくさんの苦労をしました。


 それともう一つ──

 どうやら茶色いドラゴンは私のドラゴンの匂いがわかるようなんです。

 旅をしている途中、何度も茶色いドラゴンに襲われました。けれど自分で言うのもなんですが、白竜族と茶色いドラゴンでは白竜族の方が数倍強いです。

 ですが、茶色いドラゴンは集団で私を襲ってきました。

 そしてこの地方に住み着いている茶色いドラゴン五体のうち四体を倒したところで、私は力を使い果たしてしまったんです。

 残りの一体に攻め続けられ私はもうボロボロでした。正直もうだめだと思っていました。

 そして死をも覚悟したその時、私は一人の人間に助けられたんです」


 そう言うとセフィアがこちらを向いた。


「それが爽真さん、あなたです」


「‥‥‥え」


「覚えていますか?私が茶色いドラゴンに襲われている時のことを。

 あの時、私はもう死を覚悟していました。おじさんには本当に申し訳なかったです。しかし世界は私が考えているほど甘くなかったのだと痛感させられました。

 そんなことを思ってあのドラゴンと戦っている最中、爽真さんが現れたんです。

 私は私自身の命はいいからとにかく何も関係のないこの人を巻き込むわけにはいかないと思い、その場から離れようとしました。


 しかし‥‥‥

 巻き込むどころか爽真さんは私を助けてくれました」


 ──助けたって、あの青白いバリアのことか?


「ちょっと待て、あのバリアを発動したのは俺じゃないぞ」


「いえ、あれを発動したのは間違いなく爽真さんです。魔力の発信源は間違いなく爽真さんでした」


 ──確かにあの時は身を守ることに夢中だったが、まさか無意識に魔法を発動したと言うのか?


「しかし私は‥‥‥私は気が動転していて、命の恩人である爽真さんから逃げてしまったんです。

 その後この街に着いてもう一度冷静に考えました。そして私の行動の未熟さが腹立たしくなったのと同時に、いつかお会いできたら絶対にお礼を言おうと思ったんです。

 けれど‥‥‥

 この街で子供から嫌がらせを受けていた時にまた優しい男の人が助けてくれました。それがまさかまた爽真さんだったことには驚いて‥‥‥驚いて‥‥‥

 再開が早すぎることに驚いてまた私は逃げてしまったんです!もっとしっかりとお礼がしたかったのに!

 あの、本当にすみませんでした!」


「い、いや。俺まだあの時セフィアがドラゴンだって知らなかったし」


「だからこそ、宿屋で困っている爽真さんを見つけた時は本当にラッキーだと思いました。

 しかもその後に、一緒に行動してくれないか、と言われた時、私‥‥‥本当に嬉しかったんです。

 命の恩人である方が私を頼ってくれている、そう思うと本当に嬉しくて‥‥‥」


 セフィアはまた目元に涙を浮かべながら、少し言葉を詰まらせる。


「だから! 今私が生きて入られているのは爽真さんのおかげなんです。そして今までお話をしてきて、爽真さんになら私の命を預けてもいいと思いました。

 なので私はこれから爽真さんのために尽くしたいと思います」


 ──俺のために尽くす、か‥‥‥


「だめだ」


「え」


「だいたいセフィアまだ十五、六だろ? 俺も別にそんな長生きしてるわけじゃないから偉そうなことは言えないが、そんな子供のうちから命を預ける相手とか決めるもんじゃない」


「そんな‥‥‥」


「けど、俺はこの世界に来たばっかりでこの世界についてほとんど何にも知らなかった。もしかしたら昨日の夜、お金がなくてどうしようもなくなっていたかもしれない。盗賊にあのまま殺されてしまっていたかもしれない。だから、俺こそ今こうして普通にいられるのはセフィア、お前がいてくれたからなんだ。

 本当にありがとう」


 俺はセフィアに向かって深々と頭をさげる。


「そしてここからは俺の身勝手なお願いだ。

 俺は今この世界で一人では生きていけない。それはここまで過ごしたこの世界での生活で痛感させられた。

 だが俺はおそらくこの世界にいるであろう俺の幼馴染を助けたい。そのためにはこの世界で俺と一緒に行動してくれる人が必要なんだ」


 この言葉は間違いなく俺の本心から出た言葉だ。そして俺は一世一代の大勝負に出る。


「セフィア‥‥‥」


「‥‥‥はい」


「この世界で俺のパートナーとして一緒に冒険をしてくれないか?」


 それは俺にとって、この世界に来て初めて心を開いた相手に本心を打ち明けたものだった。

 そしてゆっくりとセフィアの顔を見る。


「‥‥‥私なんかで‥‥‥いいんですか?」


「セフィアがいいんだ」


 セフィアは少し俯く。その肩は小刻みに揺れていた。そして彼女は顔を上げる。目には今までにないほどの大粒の涙が溢れながらも、それは本当に天使のような笑顔だった。そして絞り出すような声で言った。


「‥‥‥はい‥‥‥よろしくおねがいします‥‥‥」



 その時こそが、俺がこの世界でスタートラインに立った瞬間だった。


 そしてここから俺たちは本格的にリデアル国の王、アヤナを求め、戦火の真っ只中に突っ込んでいくことになる──────

 15話まで読んでいただきありがとうございます。

この作品は私の初めての作品で、少しでも見ていただけたことが本当に嬉しいです。

また駆け出しであるがゆえに、みなさんがこの作品をどう思っていらっしゃるのかがわかりません。評価やコメントをいただけるととても参考になります。

思ったことや感じたこと、本当になんでもいいので言っていただけるとありがたいです。


まだまだ駆け出しの分際ですが、これから少しでも面白いものをかけるよう努力していきたいと思っています。

これからもよろしくお願いします。     鬼天竺鼠おにてんじくねずみ

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