小さな騒動の終わり
【13】
俺は目の前で俺に抱きついている少女を見る。そしてたった今少女が発した言葉の意味をもう一度脳の中で繰り返した。
──白いドラゴンが‥‥‥セフィアだった?
いったい何を言っているのかとも考えた。だが目の前ではドラゴンが消えたのとともにセフィアが現れた。とにもかくにも頭のキャパシティーが追いついていかない。
「いったいどういうことだ?」
俺はとりあえずセフィアに尋ねた。
「‥‥‥言葉どうりの意味です。あの白いドラゴンは私が姿を変えた形なんです‥‥‥」
「ほ、本当なのか?」
「はい‥‥‥」
「詳しく教えてくれないか?」
「‥‥‥ここでは他の人もいます。今日の夜ゆっくりとお話しさせていただけませんか?」
セフィアは押し殺すような声で言った。
──まぁ確かに俺も聞きたいことがありすぎて少し整理する時間が欲しい。
「わかった。とりあえず助けに来てくれてありがとうな」
そう言ってセフィアの頭に手を乗せる。
彼女はとても嬉しそうな顔をした。
だが次の俺の一言で彼女は頬をリンゴのように真っ赤にすることになった。
「とりあえず服を着ようか」
そう、今現在、彼女は服を着ていない裸の状態なのだ。ぴったりと俺に抱きついている状態であるため前の大事な部分が周りに露出していることはないが、それでもセフィアの透き通った白い肌としなやかなボディラインは後ろからは丸見えの状態である。
ついでに俺はセフィアの豊満な胸部の感触がかなりダイレクトに感じており、それはそれでかなり気まずい状態だ。
だがその言葉をかけるとセフィアはさらに俺に密着して来た。
「‥‥‥どうしましょう‥‥‥」
「え?」
「急いで飛び出して着たので、あの‥‥‥服を街に置いてきてしまいました‥‥‥」
セフィアがさらに顔を赤らめる。
「ドラゴンの姿なら、裸でも恥ずかしくないのですが、人の姿で裸のまま街まで帰るのは‥‥‥」
「ったく、とりあえずこれ羽織っておけ」
そう言って俺は着ていたブレザーを渡した。
「ありがとうございます」
「あ、あと。もしかしてお前が白いドラゴンってことは周りには知られていないのか?」
「そうですね‥‥‥今この世界で爽真さんと、そこの二人の方にしか知らないと思います」
そう言ってセフィアはガタイのいい男と博識の男の方を見た。
「そうか」
それを聞いて俺は二人の方に寄っていく。
「すまない。ここで見たことは他には言わないでおいてくれないか?」
二人も目の前で何が起きたのかが把握しきれていないようだ。
「あ、ああ。それはかまわねーが」
「いろいろ興味深いことはありますが‥‥‥わかりました。今回は助けてもらった身ですし、他言しないことを約束します」
二人とも半ば呆然としたままではあるが、了承してくれた。
そして俺はもう一度セフィアの方に寄っていく。
「またお前に助けられちまったな。ありがとう。
さぁ、お前も疲れてるだろ。街に帰って休もう」
「はい!」
セフィアはまた今までの優しい微笑みを俺に返してくれた。