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長い夢

「はぁっ、はぁ。」


依頼達成の証拠であるロックリザードの堅皮10匹分を愛用している大きめのバッグに入れ、重く感じる体と共にギルドに戻る。


バタン


大きな木製の扉を開き、新人の頃に比べずっとしっかりとしてきた受付嬢・リリカへ近づく。


「あっ!ウォードさん!依頼終了ですか?」


バッグを台の上に置き、一つため息を吐き出し。


「依頼終了だ、だが数が5匹多かったぞ。」


「あー、上に報告しておきます、後追加料金も依頼主に請求しておきますね。」


「そうしてくれ、ギリギリだった。」


ウォードが受けた依頼、本来は5匹だったから受けたにも関わらず10匹、隠れていたのか、依頼主が故意に隠したか、恐らく後者だと金が無いと言う割には身なりの良い町長を思い出しつつ依頼処理をしていく。


「数の確認はよし、物の状態が良いのは3、ほどほどが5、ギリギリが2ですか。」


「売る気だから、状態確認するのは構わないが、文句なら5匹と言った依頼主に言ってくれ。」


「納品依頼ではありませんので、構いませんよ。ではカードを更新しますね。」


ウォードは懐から名前とDと書かれた銅色のカード、ギルドカードを出す。


ギルドに所属する時に貰うカードで、身分証明としても使える。


月に500ギラ、もしくは依頼を5件以上行う事で維持可能。


ランクはAランクからGランクまであり、Gは1-10レベルで白、Fは11-25で青、Eランクは26-40で赤、Dランクは41-49で銅、Cランクは50-75で銀、Bランクは76-99で金、Aランクは100以上で黒となる。




ウォードが処理中に一息入れていると、背中に強い衝撃が来た。


「オッホッ!」


「よう!戻ったかウォード!」


無駄に力強い挨拶をしてくる顔馴染みの脳筋を思い浮かべ後ろを向くと。案の定、褐色肌のスキンヘッドに赤い目のウォードの背より10㎝以上大きな背丈とそれに合った体格と赤い鎧を身に纏った男。


「たった今戻って来た所だよ、赤ハゲのログさんよ。」


「赤金だっ!口が減らねーなお前は。」


赤金のログ、ウォードと同じ時期にギルドに登録した男で、職業

レアな魔剣士でBランクの上位、『緋色の天』という、クランのサブリーダーだ。


「で?今回の依頼はどうだった?」


「相変わらず、格上相手にチマチマやってるよ。」


ロックリザードはレベル30、レベル49のウォードなら受けない依頼だが、職業が農民であるウォードはどうしても、レベルは下だけど格上の相手をする事が多い。


「まあでも、49になって5年、そろそろじゃないか?」


「どっちがだ?」


「どっちもだ。」


無言になるウォード、分かっているのだ。

5年もレベル49でいれば、そろそろレベル50になってもおかしくないが、同時に限界も見え、退き時なのではないか?という思いがある。

同期であるログはウォードと同じくらい冒険者として活動し、別れなどを見て来た。冒険者である以上覚悟はしているが、少なくなった同期の別れの知らせなど聞きたくないのだ。


「分かってる。でも、諦められないんだよ。」


「…そうかよ。」


「悪いな。」


「今さらだ。」


少し過去に消えた同期や去った村を思い出しながら待っていると。


「ウォードさーん!」


今では珍しく、慌てたリリカの声。


「なんだ?」


「異常個体でも混ざってたか?」


「いや、そんなことはないと思うが。」


売った堅皮を思い出していると。


「おめでとうございます、ウォードさん!」


「ん?何がだ?」


「とうとう、レベル50です!おめでとうございます!」


「…はっ?」

冒険者歴はギルドに入ってからの期間を言います。

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