9話 塩作り
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塩作りを本格的に始めるにあたって、村人全員に声をかける必要がある。まずは村長さんの家のミリアからだ。
村長さんの家の近くにくると丁度ミリアが出掛けるとこだったのか扉から出てきた。
「あ、お兄ちゃん。」
ニコニコと手を振りとても元気だ。
「今からどこにいくのかな?」
「女の子達みんなで桜の木の下で遊ぶのー」
(お、丁度いいな。一度に教えられそうだ。)
「僕もついて行っていいかな?」
「うん。きてきてー」
嬉しそうに秋穂の手を引きミリアは走り出した。それほど距離はないのであっという間についてしまう。
「お兄ちゃんもきたよー」
「「「いらっしゃい〜」」」
今日は女の子4人のようだ。
「あれ、今日は1人足りないね。1番小さい子かな?」
「あーサクラは熱で今日は寝てるんだ。」
まだ小さいのでよく熱が出るそうだ。
「今日は何して遊ぼうか?お兄ちゃんいるし家族ゴッコかな〜」
「だったら私がお母さんやるー!」
「「ファリアずるーい。」」
女の子達は会話をするだけでも楽しそうだ。ファリアと言うのはソウワさんの娘だ。上にフェリオと言う兄がいる。
「そうだ、今日はお兄さんの話を少し聞いてもらいたいんだけど、聞いてもらえるかな?」
話もまとまらないようなので切り出して見る。何だろうと女の子達の視線が集まってきた。
実際にまずは海の水から塩を取り出して見せ、次に水に塩を混ぜてまた取り出して見せる。
「わかったかな?この水には塩が混ざっているんだよ。」
「おもしろーい。」
「どうやるの?」
みんな興味を持ったようだ。目を輝かせてこちらを見ている。魔力と言ってもわからないだろうから、水に触れて塩になれと思ってみて、と説明しでみた。
「うーんうーん。」
「しおーしおー」
「……うぅ。」
「えーーい。」
おもいおもいに塩をイメージしているようだ。水を眺めていると4人ともみんな水量が減ってきだした。
(お…?)
どうやらミリアが塩を完成させそうだ。他の女の子達もできそうではある。それから数分後。
「で、できたーー。」
少し時間はかかたがやはりミリアが完成させた。器の中を覗き込み鑑定してみる。
《塩:塩化ナトリウム50%、他50%で構成》
(他50%か。まあ海からとれたものだし害は無いと思うけど…そういえば僕が作ったのはどうなっているだろうか?)
《塩:塩化ナトリウム75%、他25%で構成》
比べてみると少し違うようだ。
ぐいっと服の裾を引っ張られる。ミリアだ。鑑定をしていて放置だったから不安げに見上げていた。
「お兄ちゃん?ミリアの塩できてるかなー?」
「うん、ちゃんと出来てるよ。鑑定して確認してみたから大丈夫。」
ミリアの頭をぽんぽんと撫でると嬉しそうな笑顔が返ってきた。今にもえへへーと聞こえてきそうだ。他の女の子達を見てみると、うらやましそうな顔をむけていた。
「みんなはどうかなー?」
それぞれの器を覗き込んでみると白くドロッとしたものが入っていた。一応鑑定してみる。
《塩水:塩90%水10%で構成》
「すごいじゃないか。あと少しで出来そうだよ。」
「うーんでももう疲れちゃった。」
「私も~」
「です。」
どうやらなれないこともあるのだろう。あとは魔力切れとかも考えられる。
「ミリア。これ残り完成できるかな?」
「ん~やってみるよ。」
再び手で軽く触れでみる。今度は静かに手元を見てやっているようだ。
「…できたよー」
「なるほど。人がやった続きからでも大丈夫なんだね。」
《塩:塩化ナトリウム48%、他52%で構成。》
鑑定してみると少しだけミリアが一人で作ったより低かった。
「どうかなミリア。疲れたりはしてない?」
「まだ大丈夫かな?」
──────────
女の子達にはお礼をいって塩はそのまま持たせ、今度は北に男の子達もまとまっていそうだから向かって見ることにした。案の定3人の男の子がいる。どうやら魚を取ろうとしているようだ。男の子達にも同じように説明しやってみてもらった……が、2人はまったくできなかった。一番小さいエイチカさんの次男のヤマトだけ塩を作り上げた。3歳なのにすごい。
確認が終わったので次はソウワさんの奥さんに会いに行く。家を訪ねるとちょうど畑仕事をしていた。初めて会うがいやな顔せず付き合ってくれた。結果はまあ出来なかったわけだが。
その途中井戸掘りをしている場所を通過するのでついでに様子を見てみる。ルトナリアは穴の中にいた。
「進みはどう?」
「んー?そうねー後もう少しで水のあるとこに届きそうだけど?」
「はやいねー」
「当たり前じゃない。私を誰だとおも…」
(まあ次に行こうか)
「ちょっとー最後までききなさいよー」と聞こえているがまあ放置でいいだろう。
続けて今度はヴァージルさんの奥さんに会った。ちょうど畑仕事のため外に出てきたようだ。ヴァージルさんからちゃんと話しを聞いていたらしく快く試させてくれた。出来なかったのが残念だ。
次は熱が出たサクラがいる家だ。トネィールさんの奥さんは子供の傍にいるだろう。説明が終わり試してもらうがやはりだめなようだ。ところがその隣にいたサクラが手を伸ばすと一瞬で塩になった。
「…え?」
「これでいいの?」
ぼんやりとしているが塩の完成度はかなり高い。
《塩:塩化ナトリウム80%、他20%で構成》
「サクラすごいね、僕より上手にできてるよ…」
「えへへ…」
首を傾け嬉しそうに微笑んだ。母親は塩が出来たことに喜んでいた。
お礼をいい次の家に向かう。流石にここまでで気がついたのだが子供や女性のほうが錬金術に向いているようだ。男性も出来ないわけではない。現にヤナさんが集まった中で出来た1人だ。後確認してない家は3軒だ。エイチカさんの奥さんは出来なかった。次のキリリナさんは塩が作れた人だ。旦那さんはどうだろうか?旦那さんは外で畑仕事をしていた。説明して試してもらう。まあ確立は低かったわけで、もちろん出来なかった。
最後はサーロさんの家だが…老夫婦が2人畑仕事に出ている。サーロさんの姿は見えない。
「こんにちは。」
「はい、こんにちは。」
「あら、旅の人ですか?」
(……ん?)
「あの、サーロさんから聞いてないですか?森の傍に住み始めたものです。」
老夫婦は首を傾げている。
「あー家が突然できたなーとは思っていたのですがそうなんですね。」
それから少し会話をしてみたがどうやらサーロさんから何も聞かされていなかったようだ。とりあえず同じように試してもらったがやはり出来なかった。
(サーロさんに一度聞いてみないといけないな…)
扉をノックし。声をかける。サーロさんが出てきた。ちらりをこちらをみると、
「…こっちは用ないんだけど?」
たった一言いい扉を閉められてしまった。
後味悪い感じになったが確認は一応終了?した。サーロさんのとこをのぞいてちょうど1件に1人塩を作れる人がいて少し安心した。双子ちゃんのとこは2人だ。