4話 家作り
目を覚ますとなぜか外で寝ていた。野宿をしたことを思い出す。
(そう言えばここは異世界だったよな…)
まさか寝袋があるとはいえ地面で寝ることになるとはおもってもいなかった。硬いとこで寝たため少し体がいたいがいつまでも寝ているわけもいかないので起きることにする。
(昨日は大変だった…ビルから落とされるわ、異世界くるわ、挙句倒れた人の介抱と……あ。)
村長さんの体調はどうなのだろうと気になり訪ねてみようと立ち上がった。ルトナリアの寝ているテントに目をやる。まだ寝ていそうだ。ひとまず1人で村長さんのとこへ向かった。
家の前に立ちノックをしてみる。最初きたときと同じようにそっと扉がひらいた。ミリアだ。
「あ、昨日のお兄ちゃん。」
「おはようミリア。」
ミリアは嬉しそうに駆け寄ってきた。
「その様子だとお爺さんは大丈夫そうだね。」
「はい、昨日はありがとうございました。」
丁寧にお辞儀をしたミリアは秋穂の手を引いて家の中へ案内した。
「おじいちゃん。昨日助けてくれた人だよっ」
家の中に入ると村長さんが布団に座っていた。僕に気づき顔をこちらに向けた。
「すみません迷惑をかけてしまったようで…えーと名前を聞いても?」
「あ、名乗って無かったです。秋穂といいます。」
頭を下げながら名前を名乗る。
「秋穂さん。今回はたすかりました。」
「いえいえ。お仕事大変かもですが無理しないようにしてくださいね。ミリアが心配しますよ。」
「はい。気をつけます。ですが…」
そこで村長さんは少し言いにくそうにしていた。後に続く言葉を待つ。
グゥ〜
秋穂のお腹がなった。昨日異世界に来てから何も食べてなかったのだ。お腹に手を当て笑ってごまかす。
「そういえばご飯とかすっかり忘れていました。」
「あははっお兄ちゃんうっかりさんだねー」
村長さんが昨日のお礼に食事をふるまってくれることになり、作る手伝いをするためミリアに案内され水を汲みに向かった。
「ここの水なの?」
「うん。村はこの川からしか水が手に入れられないの。」
川は村の北に位置している。村長の家は北のほうにあるため比較的ましだが、他の住人もここまで汲みに来るそうだ。
「畑もここの水運ぶんだよね?」
ミリアは頷いている。どう考えても重労働だ。水を汲み村長の元へ戻る。村長さんにはもう少し横になってもらっておいてミリアと2人で作ることにした。
「作っていただいてすみません。」
「気にしないでください。」
3人で器をもち食事を始めた。色々野菜が入ったスープだ。魚も少量だか入っていた。きっと川で取れるのだろう。味付けは塩のみである。
ガラガラガラッ
突然扉が開いた。そこにはルトナリアが立っている。
「村長話があるんだけ…どぉ?」
ルトナリアと目が合ってしまう。驚いた顔をしていたがそれはすぐ変化した。怒っているのだろう。目は鋭くなり気持ち震えている。
「いないと思ったらなんであんたここにいるのよ!」
(あー何も言わずに来たんだっけ…)
つい目をそらしてしまう。
「あ、おねーちゃん。」
「ん?ミリアだったかしら?」
「はい。昨日はお薬ありがとう。」
ミリアは笑顔でお礼を言った。
「おや、薬をくださった方ですか。昨日は大変助かりました。よかったら一緒に食事でもどうですか?」
「……いただくわ。」
「はい、どうぞ。」
ミリアから器を受け取るとルトナリアも食べだした。一瞬顔をしかめたが、そのまま黙って食べている。
「あまり美味しくはないでしょう?栄養を摂ることだけな食事ですからな〜。」
「食べないと死んでしまうから…」
2人とも悲しそうな顔をした。
「森へ行けばたまに肉とかも手に入るんですが、年にはかないませんで。」
「あっ森で思いだしたんだけど、えーとこの村の村長であっていますか?」
「はい、そうですが。」
「魔法学院から連絡来てるはずですが、この村で卒業試験するルトナリアです。」
昨日話損ねたものがやっと話せてルトナリアは少し安心した。
「あぁ、あなたが。」
「はい。一年間よろしくお願いします。」
ルトナリアは丁寧に頭を下げた。普段からこうならいいのにと秋穂は思ったが口には出さなかった。
「それでですね村の北、森の入り口に家を建てたいのですが、許可もらえますか?」
「森の近くに建てるのですか…こちらは構いませんが危なくないですかね?」
「大丈夫です、私魔法使いですから。」
胸を張り自身満々にこたえる。
「わかりました好きな場所に建ててください。」
「やったーっこれで雨をしのげるわー」
しばらくここで暮らすうえで家の有る無しは大きい。ひと安心といったところだ。
「早速取り掛かろうっ」
ルトナリアはすぐにでも行動に移る気だ。
「待って。それも大事だけど、今後の開拓についつ少しでも話しておかないと…」
驚いた顔をしてルトナリアは僕を見た。
「本来の目的忘れてたわ。あんた凄いわね…これはもう私の助手にするしかないわ。」
「もう、なんでもいいです。」
ルトナリアにあれこれ文句言っても無駄そうなので早々に諦めた。
「それでですね定期的に各家から1人来ていただいて話し合いをしたらいいんじゃないかと思うんですが、村長さんどうでしょう。」
「そうですな。みなに言っておこう。それでまずはいつにしようかの?」
少しだけ考え意見を口にする。
「みなさんが集まる場所が欲しいので、ルトナリア。家はどのくらい出来るの?」
「そうね。森の木を少しいただいていいなら今日中ね。」
「だそうです。」
僕には魔法の常識がないのでよくわからないが村長とミリアが驚いているところを見るとよほど早いのだろう。
「早いですね…一軒作るくらいなら問題ないですよ。あまり大きな建物は控えてください。」
――――――――――
村長に許可をもらい森にやってきた。森というだけあって木々が沢山生えていた。
「なんでついてきたの?全部魔法でやるから手伝いなんていらないわよ?」
「いや、まだちゃんと魔法をみてなかったなーと思って。」
たしかに空を飛んでたのは見たが、ちゃんと使うところはまだ見たことがなかったのだ。
「面白いものなのかしら?」
首を傾げながらもルトナリアは木を選んでいた。1本づつ触って見ている。
「触るだけでわかるの?」
触っているだけにしか見えないのでたずねてみる。
「ん、えらんでるわよ?魔法で鑑定してるの。あまり若い木じゃないほうがいいかなーと。まあ、建築の知識なんてないけどね。」
「なるほど〜」
納得しながら同じく木に手を触れてみる。
(鑑定……なんちゃって)
《桧葉:湿気や水に強い。建築用に使える。独特な匂いがある。樹齢10年。》
「なんか見えた…樹齢10年?」
「ん?鑑定できたのっ?魔法使えるってことかしら……」
ルトナリアは作業の手を止め近くにやってきた。僕が触っていた木を確認する。
「うん、10年ね。驚いた…魔法がない世界から連れてきたのに使えるんだもの。しかも男だわ。」
「男だとおかしいの?」
「おかしくはないけど、珍しいわね。ふむ……魔法を知らなかっただけなのねきっと。」
つまりは僕がいた世界は魔法を必要としていない世界だったということだが、稀に見る仕掛けのわからない手品が魔法だった可能性もあるわけだ。
「鑑定出来るなら手伝ってもらおうかなっ」
「どんな木を探しているの?」
「そうね。樹齢50年以上の檜か杉がいいわ。」
僕は頷くと鑑定をしてまわった。檜5本と杉10本を手に入れた。もちろんルトナリアが全部魔法で伐採している。
「まずはこんなもんでいいか。」
「いや、小さな家なら足りそうなきがするけど…」
(どんな大きな家が作りたいんだろう…)
ルトナリアの考えは相変わらずわからないなーと思うのであった。