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2話 移住

 朝になってしまった。まともな食事はきっとこれが最後になるだろうとしっかり味わって食べる。身支度を整えると、テーブルとベッドを鞄にしまった。

 最後に部屋を魔法で綺麗にし、外に出た。


「これからのこと考えると憂鬱だ〜」


 鞄を斜めに肩に掛け、杖に座る。

 ここから目的地まで杖で飛んでいっても、半日はかかるだろうか。そんなことを考えながらのろのろと杖を走らせ始めた。


(もっと近くならマシだったのに……)


 移動時間が長いのでたまに休憩をしなが色々考えてみることにする。

 小さな村なから自給自足の生活であろう。つまりは狩りをしないと食べていけない。その上住居がまだない。さらに村を発展させる。


(どう考えても一人じゃ手が足りないよ⁉︎)


 村人の情報を見直してみるが大人の男9人とある。このうち動ける者はどのくらいいるのだろうか…


(これは作業はほとんど魔法かなー)


 今の生活に慣れてしまって開拓するにしてもなにをすればいいのかが1番の課題になりそうだ。


(魔法でできることと出来ないことを比べてみよう。)


 火、水、土、風、雷、光、闇などの属性を使って属性を出したり、属性で作ったり出来る。それに対して魔法を使えない人は属性は出ないし、物を作るのも手作業だ。あとは毒…は基本使うことはない。空間操作は魔法でしか使えない。


(…ん?空間操作‼︎)


 魔法でしか使えない空間、新しいことを考えられない人たち……


(新しい考えを他から持って来ればいいのでは?)


 ルトナリアはひとまず目的地である南の村へ急いだ。しばらく進むと家が数軒建っているのが見えてきた。数えてみる。8軒だ。村は中心に広場があり、それを囲むように周囲に家が建っていた。その外側に畑があるようだ。

 村の北側に降り立つ。北には村の上側に川が流れそのさらに北には森が広がっている。


(よし、空間操作で異世界にお邪魔してこよう。)


 普段から異世界へ気軽に行っているわけではない。目的があるわけじゃないので、へんなとこに出てしまうのだ。

 でも今回は目的もはっきりしてるしうまくいくはずだ。

 手を前にだし空間を開く。そして行きたい場所を思い浮かべる。


(魔法のない、ここより遥かに発展していつつ、でも小さな国がいいわ。)


 空間が白く輝き出した。


「開いたっ」


 ルトナリアは開いた空間へ体を滑りこませた。目が慣れてくると周りが見えてくる。硬い地面?の上に立っていた。

 周りを見渡すために杖に乗り上に向かって飛んだ。


(凄い…なにこれ……?)


 眼前に広がっているのは大小様々な角ばった建物が所狭しと並んでいる光景だ。その隙間にいろんな乗り物がやはりこちらも沢山あるのが見えた。人も数えられないくらい歩いている。

 ここが魔法がないのはわかっていたので、自分に地上から気がつかれないように認識阻害をかけた。空を移動しながら町並みをながめる。


(見てるだけじゃ全然わからないわ。あの乗り物は馬や牛、魔法もなしでどう動いているの?)


 建物も外からのぞいて見る。ここは食べ物を扱っている店のようだ。


(同じ食べ物が袋に入って沢山並んでる…どうやって数を?)


 しばらく見て回った後長い円柱の柱のようなもののてっぺんに座る。


(だめね…見るだけじゃわからないわ。今座ってるこれだってそこらに沢山あって用途が不明だし。やはり誰かに聞かないと……)


 そこから再び飛び立つと出来るだけ1人でいる人を探すことにした。でもどこ見てもほとんど数人で固まっている。確かに1人でいる人もいるが、周りに人が多すぎる。こんな状況では声も掛けようもない。


(凄い人…これで小さな国なのね……)


 しばらく辺りを飛び回る。すると建物の上に1人いるのに気がついた。その人は今にも飛び降りてしまいそうだ。


(魔法使えないんだし落ちたら死ぬわよね?それとも死にたいのかしら?)


 その様子を眺めていたらいいことを思いついた。きっとこれならいろんなことがうまくいくに違いない。


(そうよ、もしこの異世界に未練がないのなら連れて行ってここでの生活知識を私のとこで使えば…!)


ルトナリアは魔法を解いて目の前に飛び出した。


「死ぬの?手伝おうか?」



――――――――――



 開いた口が塞がらない。僕とルトナリアが出会ったのは偶然。僕が死にたい状況になったのも偶然。どう見ても無理やり連れて来られただけにしか見えない。


「ひとまず状況は理解できたよ…」

「なら問題ないわね。」


(問題はありすぎだと思う。)


「帰ることは出来ないの?」

「出来るわよ?」


 意外にあっさりと言ってきた。ふっとルトナリアは悲しげな顔をした。


「戻って…死ぬの?」

「⁉︎」


 そうか、戻ったらまたあの現実が待っているのか……


「ねえ。死ぬくらいならしばらくこっちで生活してみたらいいじゃない。向こうより楽しいかもしれないわよ?私も助かるし。何なら私の手伝いしてくれたらもとの時間に帰してあげるわ。」

「元の時間?」

「そう、あの落ちている途中ね。」


(途中……)


 途中ということは戻ったら落下の続きである。冗談ではない。頭を横に振り全力で断った。


「では、しばらくはここで私の手伝いしてもらうけど問題はないわね?」


僕は右手を差し出した。


「よろしくお願いします……っ」


 2人は握手をする。ルトナリアは笑顔をかえしてくれた。これからここから第二の人生が始まろうとしていた。




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