表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女王の憂鬱  作者: 紫月旅人
8/29

7

「シド、今すぐ私を連れてって。」

「かしこまりました。

参りました時以上の速さで、ご案内させていただきます。」

「おい、ダメだって言ってるだろっ。」

「良いじゃない。

行ってはいけないってキマリがあるわけじゃないし、実際はねぇ。」

「がぁぁ、それ以上言うなよ。

頼むから、そう言うことを軽々しく言わんでくれ。」

「あら、ごめんなさい。

でも連れて行ってくれるんだし、何より子供がいる以上、2人はしっかり話し合っておくべきだと思うわ。」

「水流さん、こういう時にだけ正論を言うんじゃねぇ。

それに、今夜なんだろ。

最後の別れができなくてもいいのかよっ。」

「そうねぇ。

だから、早く行って、早く帰って来てね。」

「こっちとそっちの時間の流れって違うの?」

「変わらないと思います。

あくまで体感でございますが。」

「なら、早く行こう。

勿論、夜までには送ってくれるよね。」

「ひっ、熱いです。

身体の内がジクジクします。」

「内蔵に少しずつ熱を加えてみた・・・加熱?」

「送ります。

何が起ころうと、必ずお送りします。

誓います。

だから、やめて、やめてくださいっっっ。」

「悪夢だ。」

「じゃじゃ、行きましょうっ。

母様は僕の背中に乗ってくださいね。」

「背中・・・は、無理かな。」

ロキの小さな背中を向けられても、どうしようもない。

そこにおぶされと?

いやいや、そんな期待に満ちた目で見ないで。

どうするべきかと悩んでいると、突然、ロキのお腹が膨れだした。

服が破れ、身体全体がどんどん大きくなっていく。

肌もあんなに真っ白かったのに、今や緑・・・苔色みたいだし、鱗も見えだした。

なんかゴツゴツしてそう。

顔は・・・げほん、げほん。

最後フィニッシュとばかりに、ちょっとお尻を突き出して出てきたのは、まぁ、立派なしっぽ。

うん、はい、これはどう見ても・・・

ドラゴン・・・かな。」

「はい、我々、地界魔は皆、ドラゴンという、もう1つの形態になれるのでございます。」

シドを見ると、なるほど立派なドラゴンだ。

ロキより、ふたまわりほど大きい。

お店の天井が、かなり高くて助かった。

横は・・・かなりギリギリだけど。

ってか私、ドラゴンを産んだのか。

いや、産んだ覚えは無いけど、無くて良かったのかも。

「余談ではございますが、産まれる時は大抵、人型で産まれ、成長過程で2つ目の形態をとれるようになります。」

「大抵・・・じゃあ、ドラゴンで産まれる子も・・・。」

「少ないですが、おります。」

本当マジか、どっちだ?

どっちで産んだんだ、私っっっ。

「まぁ、ドラゴンの赤ちゃんも見てみたかったわぁ。」

セーフ、セーフ。

どうやら、その一線は、越えなかったらしい。

「とにかくっっっ、行くよ。」

ロキの肌に触ると、見た目通り、硬かったが、スベスベしてるし、ひんやりしてて気持ちがいい。

なんとか首と肩の間らしき窪みに座ると、後ろで盛大にしっぽを動かす音がする。

嬉しいのかな?

でも、シドに当たってるけど。

あっ、一発、城崎に当たった。

「って、城崎も行くの?」

「仕方ねぇじゃねぇか。

お嬢が行くなら、俺はお守り役だ。

行ったきり、帰ってこないじゃ、シャレになんねぇからな。」

シドによじ登った城崎の顔には“面倒”の2文字がありありと浮かんでいる。

「では、参ります。」

シドが何か気を発した先の景色が歪む。

来たときと同じ、円形の入り口が現れた。

その先は、暗い。

光を通さない闇が広がっている。

「神流様、城崎さん、我等から、絶対に離れないでください。

この常の闇では、離れると別々の場所に出てしまうこともございますので。」

「お嬢ぉぉぉぉ、やっぱり、やめようぜぇぇぇぇぇ。」

「おばあちゃん、ちゃんと帰ってくるから、待ってて。」

「気をつけて行ってらっしゃい。

ちゃんと自分の気持ちをぶつけてくるのよ。」

「俺は、無視かよぉぉぉぉぉぉぉ。」

奴に会いに行く。

聞きたいことも言いたいこともある。

でも、まずは・・・。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ