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女王の憂鬱  作者: 紫月旅人
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5

「話し合うと言っても、神流が私の後継者って事は変わらないのだけど。」

「だがな、事態は、そう簡単じゃねぇ。

いいか、人界には5人の結界能力者がいる。

能力者ができることは1つだけ、結界を創ることだ。

けどな、それは人界の5分の1を覆う結界を24時間、365日張り続けているということだ。」

「時々、綻んじゃうんだけどね。

そんな時は城崎が前もって知らせてくれるから。」

「俺ら、人界代表者にも共通の能力が有るんだよ。

というより、その能力を持つ者だけが人界代表者たることができる。

んで、能力っつぅのが何て言うか。」

「城崎は勘がとっても良いの。」

「そこまで落とすかっ。

勘じゃねぇよ。

人界でイレギュラーなことが起こる前に、はっきり分かるんだよ。

結界の綻びに予め気づくことで侵入者を防いだりしてんの。

とにかく、結界能力者ってのは結界を創るだけだ。

だがお嬢はそうじゃねぇ。

ただでさえお嬢の結界能力は未知数なのに、加えて奴と同等の火炎能力。

この事が他の層や人界代表者らにバレたらまずい。

何を仕掛けてくるか分かったもんじゃねぇ。

それにお嬢だ。

はっきり言うがね、両親を亡くして事故に遭い、眠ってる間に身に覚えの無い妊娠と出産、火炎能力が身に付いていた。

17歳の女の子に耐えれるもんじゃねぇだろ?

だからな、水流さんにお願いしたんだよ。

“お嬢の記憶から地界マスターが絡むものを全て消してくてってな。”

正直、これは賭けだった。

記憶を消したからってお嬢の火炎能力が消えるとは限らない。

けど、奴と出会ったことで結ばれた縁なら奴を無しにすることで、どうにかならんかと思ったんだ。

まぁ、一応上手くいった・・・か?

まさか、関わった人の記憶全てを忘れてしまうとは思わなかったが。

おまけにお嬢は少しずつ記憶を取り戻してくるし、奴の力も戻ってきていやがるみたいだし。」

「人の記憶に結界を結ぶなんて初めての事だったから、私も驚いたわ。」

「色々言いたいことはあるけど、私の記憶が無いのは二人のせい?」

「あら、私は城崎に頼まれて仕方なくよ。

言ったのよ、神流は世界征服なんてしないわよって。

でも信じてくれなかったの。」

z,zz,zzzzzz

「そんな事、言ってねぇ。

思ってもいねぇって。

あぁ、わぁー、ごめんなさい。

すいませんでした。

許してください。

何度でも謝るからよぅ。

地面揺らさんでくれ。」

そんなこと私にも分からない。

私の感情に合わせて揺れてるみたいだ。

「私の記憶を返して。

私を地界に連れて行って。」

「1つ増えてんじゃねぇか。

大体、何で地界に行くんだよ。」

「聞きたいことがあるから。

城崎ならできるでしょ。

だって侵入者が結界の綻びを利用して来るって事は、逆にこっちからも行けるって事じゃないの?」

「そう簡単な事でもねぇよ。

そもそも綻びだって、頻繁に出来るもんじゃねぇんだぞ。」

「何とかして。」

「なんとかって・・・」

「アレクサさんに頼めばいいんじゃない。」

「どうやって頼むんだよっ。

連絡先を知ってるわけじゃあるまいし。」

「そうねぇ。」

「そう言えば水流さん、奴と何か話してたよな。

奴が大人しく帰ったのも水流さんと話してからだ。

何を話してたんだっ?」

「そうねぇ。

2、3冊本を貸して、アドバイスをしただけよ。」

「アドバイスって、あんた何、言いやがったっっっっ。」

「秘密。」

「のあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」

「私の記憶。」

「あぁ、あぁ、分かったよっ。

もう水流さん、やっちまってくれ。」

「いくわよ。」

頭の中に鈴の音が1度、聞こえた気がした。

空白だった私の記憶が一気に埋まる。

お父さん、お母さん、幼稚園や学校の同級生や先生、事故の時に乗ったタクシーの運転手、そして奴がいた。


壁にぶつかる瞬間、窓ガラス越しに見た男、あいつがアレクサに違いない。

最初に思い出したのは目だ。

左目が灰色で右目がアカかった。

次は髪。

黒くて長い髪を1つに束ねていた。

それから透き通るくらい白い肌に赤い唇。

なよっとした男だけど、整ってるっていやぁ整ってるんだろう。

あいつは微笑ワラってた。

何がおかしいのか、壁にぶつかる直前の私を見て、それは楽しそうに微笑ったのだ。

私は、あいつの顔が歪むくらい殴りたくて殴りたくて、もうすぐ死ぬかもしれないっていうのに、夢中で拳を握って、あいつをずっと睨んでた・・・気がする。

何故かは分からないけど。

そして感じる。

私の内にある炎。

ずっと昔から、ここにあったかのように馴染んでいる。

全てを燃やし尽くしたくて、私の内で燻っている。

「・・・流、神流、大丈夫?

記憶は無事に戻ったみたいね。」

「おかげさまで。

それじゃ、行きますか。」

「待てって。

話、聞いてたか?

行けないって言ってんだろ。」

「使えない。」

「ひっで。

お嬢、さらっと毒を吐く所が似てきたな。」

「あら、誰にかしら。」

「逆で行けば良いじゃない。」

「逆?」

「こっちから行けないんなら、あっちから来た奴を捕まえて連れて行ってもらえばいいでしょ。」

「お嬢、そりゃ無茶だ。

そもそも結界ってのは、そう滅多に綻ぶものじゃねぇんだ。

仮に綻びを見つけたとして、わざわざ不法侵入してくるような不穏な奴に頼むんか?

そちらに行きたいので連れて行ってくれって。」

「ダメ?」

「ダメに決まってんだろ。

諦めな。

いくら考えても、どうしようも・・・あぁ?

まさか、いや、嘘だろう。」

「あら、もしかして来たの?」

「来る。

何っで、このタイミング?

次から次へと揉め事が・・・あぁ、何で俺、ここの担当なんだよ。

面倒くせぇ、面倒くせぇ。

いっそ、ブッチしてやるか。

でも、なぁ、後が怖いしなぁ。

あぁ、誰か代わってくれねぇかな。」

「本音が見事にだだ漏れしてるわよ。

でも、本当にナイスタイミングね。

どこに来るの?」

「ここだよっ。

桐生骨董店にナイスタイミングで開くんだよ。」

「良かったわね。

神流の望み通りじゃない。」

「望み通り過ぎて、逆に怖いわ。

なんで都合よく、今、この場所に綻びが出来て、あちらからやって来るんだよっ。」

「それは、神流様の強烈な気に誘われて、我らが導かれたからでございます。」











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