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女王の憂鬱  作者: 紫月旅人
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4

「お嬢の事故現場に向かった俺と水流さんが、最初に見たのは、壁に衝突している車からお嬢を抱き上げている奴の姿だったよ。

“彼女を一目見て、心奪われた。これは血命だ。地界に戻り、我が妻とする。では失礼”って、そのまま地界に戻ろうとした馬鹿を何とか押し留めてよく事情を聞いたら、何でも地界魔ってのは恋愛に関しては淡白で、人間みたいに結婚みたいなことは滅多にしないし、子供が出来ても一緒には育てないし、期間も短い。

だが極々稀に、いや奇跡に近い確率で“血命の縁”で結ばれた者達がいて、そいつらは、一生を共にして一緒に死へと旅立つらしい。

まぁ、こっちで言うところの“運命の相手”ってやつだ。

だが、こっちのそれと決定的に違うところがあってな、“血命の縁”は間違えない。

出会った瞬間に分かるんだと。

しかも、これが大問題なんだが“血命の縁”が出会った時、2人の血が混じり合い一体となる。

つまり、お互いの能力を共有し、高め合うことができるらしい。

んで、その時、女は・・・子を成す。

この話を聞いた時は頭をかかえたよ。

地界で伝説と成り果ててたものが地界マスターと結界能力者の間に起こるなんてな。

この事がバレたらこれまでの3層の力バランスが崩れるに決まってるじゃねぇか。

最早、悲劇を通り越して笑うしかねぇ。

よりによって、何で俺の担当なんだっ。

俺が何かしたかよっっっ。

ちっくしょうぅがぁぁぁぁ。」

「あらあら、あの時は随分冷静だったように見えたのに。」

「想定外過ぎて、逃避してたんだよっ。

まぁ、それでも何かの間違いだと悪あがきをしたがよ。

お嬢を連れて行こうとしやがる奴に外交問題にするぞとか、証拠がねぇとか言ったりしてな。

でも、そのうちお嬢の身体に異変が起き始めて認めるしかなくなっちまった。」

「異変・・・」

「腹がな、膨らみ始めた。

まるで妊婦みたいに。

いや、あれは凄かった。

膨らんだ腹から聞こえるんだよ。

何て言うんだっけか、そう、胎動ってやつが。

こうなったら、どうしようもねぇ。

酷だが言うぜ。

お嬢の腹には奴の子がいたんだ。」

zz,zzz,zzzzzzzzzzz

「気持ちは分かる、いや本当はよく分かんね。

けど話はまだ終わってねぇんだ。

お嬢の様子を見て、俄然強気になった奴が、お嬢を連れていこうとしやがったができなかった。

奴が手を伸ばそうとした瞬間、お嬢が自分の周りに結界を張ったから。

それは、ものすげぇ結界だったぜ。

なんせ、地界マスターである奴が傷一つつけられなかった結界だ。

こんなことは、ありえねぇ。

なぜなら、結界能力者の力は受け継がれていくものだからだ。

水流さんがいるのに、お嬢が結界を創れるわけがねぇ。

なのにお嬢は結界を創った。

可能性と言えるか分からんが“血命の縁”が関係しているとしか思えなかった。

奴と縁を結ぶことでお嬢の結界能力者としての力が上がったのかもしれん。

それでも、奴は諦めなかった。

力づくで結界を壊そうとした瞬間、最悪なことが起こった。

誰もが驚いたし、俺は正直、心臓が縮む思いだった。

結界に触れようとした奴の右腕が一瞬で炎に包まれ燃え尽きたんだ。

明らかにこれは、地界魔の持つ発火能力だ。

“血命の縁はお互いの能力を共有する”

この伝説が真実ホントウだったと目の前で証明されちまった。

と同時に奴も結界能力者の能力を手に入れたかとビビったがそうはならなかった。

何故かは知らんが奴いわく“血命の縁による共有とは、お互いが対等となるよう調整されると聞いたことがある。が、神流の我への想いが強いために、このようなことが起こったというのが本当のところだろう。何ともいじましいではなか。”と言うことらしい。

後半はどうでもいいが、前半はあながち間違ってもいない気がする。

よう分からんがね。

何とも言えない沈黙が辺りを満たしたが、奴だけはにやけたツラで今にもお嬢に飛び付きそうな勢いで見つめていたな。

流石に近づきはしなかったが。

俺としては燃えカスになってもかまわなかった、いやむしろ、口封じっつぅ事でお嬢に頑張って欲しかった。

そうこうしているうちもお嬢の腹は膨らみ続け、事故から12時間ほど経った頃、突然、結界が解かれてお嬢が苦しみだした。

あれは、トラウマだ。

今でも思い出すと・・・おぇっ。

お嬢はカッと目を見開いて身体を起こして丸めて、息ができないのか苦しそうだった。

水流さんが背中をさすって、息継ぎのアドバイスをしてたな。

俺たちは部屋の端で、お嬢の叫び声や怒声を聞くたびに固まってた。

次の瞬間、絶叫と共にお嬢がベッドに倒れた。

“力んで”という水流さんの掛け声と共に、お嬢に駆け寄った奴を見たときは、悔しいが思わず勇者だと思ってしまったよ。

まぁ、近寄った途端にお嬢が奴の喉元を掴んで叫んだときは、かなり胸がスッとしたがな。

そんでお嬢が気を失ったのと同時に赤ん坊は産まれた。

と言っても当然、人間の出産とは全然、違う。

赤ん坊はお嬢の腹をすり抜けるように現れて消えた。

奴いわく、地界で信用できる数少ない1人に世話を頼んだとか。

その事は正直、助かった。

見た感じ、普通の赤ん坊だったが、奴の子だ、人界コッチで育てるわけにはいかんよ。

それからお嬢は、10日間眠り続け、俺と水流さんは、これからの事を話し合わなければならなかった。」



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